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社会・経済アーカイブ

0001-01-01

tetu_bn_161.gif 書評・読書カテゴリーには私が Amazon や BK1 に投稿した書評や,本について書いた文章をあつめています. 以前はすべての書評をひとつのページにいれていましたが,書評の数がおおくなり,書評・読書カテゴリーのページがながくなりすぎたので,書評・読書カテゴリーを分割しました. 書評以外のカテゴリーにあわせて, DIY (日曜大工) とものづくりWeb とインターネットインタフェース,アメニティとデザインセキュリティ・安全・安心と秘密・プライバシー保護メディア・アート・イベント・エンターテイメント仕事と起業心理思想・哲学・宗教情報学・計算・プログラミング政治・法律・憲法教養・教育と学習歴史環境・エネルギー生活知的生産とリテラシー社会・経済言語・コミュニケーションとネットワーキング というように書評を細分するようにして,書評カテゴリーのページにはそれらに分類しづらいものをあつめました. なお,このページは各カテゴリーのページの先頭に表示されるように,意図的に投稿日時を 0001-01-01 00:00:00 としてあります (実際の投稿日時は 2007-11-03 10:39 です).

2006-05-14

この本は,ゴルバチョフからエリツィンに主役が交代する時期に,ロシアがかかえる,ひとことではいえないさまざまな問題をあつかっている. とくに,のちにプーチンをも苦しめることになる生産・流通の問題点などを分析している. とくに印象にのこったのは 「資本主義との対決に一喜一憂する中で,我々は何世紀にもわたって人類が創り上げてきた多くのものの意義を明らかに過小評価したのである」 というゴルバチョフのことば (p. 74) である. このことばは,「資本主義」 や 「人類」 を日本をとりまく局所的な文脈でよみかえることによって (たとえば 「人類」 を 「日本人」 とよみかえることで) 破壊的なマルクス主義の影響からぬけだしていない現在の日本にも警鐘となるであろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: ロシアの悲劇@Amazon.co.jp. (品切れになっているので,古書があるときだけ買えます.)

つづく…

2006-05-15

3 つの章のうち 2 つはソビエト崩壊の予測に関係している. しかし,3 章では突然,日本の非武装中立論を批判している. 1990 年前後の小室直樹の本は饒舌で脱線が多いが,それにしても…

評価: ★★★☆☆

関連リンク: ソビエト帝国の崩壊@Amazon.co.jp. (品切れになっているので,古書があるときだけ買えます.)

つづく…

最初の何章かは従軍慰安婦問題,東京裁判の問題など,すでにほかの論者によってさんざん書かれている内容である. そのなかには 「選挙コンプレックスがニクソンの生命取りになった」 (p. 113) というような,おもしろい話がちりばめてあったりはするものの,あまり新鮮さは感じられなかった. 3 章からは日本資本主義の分析など,小室らしい話題が登場するが,私にとってもっともインパクトがあったのは第 4 章 「なぜ,天皇は 「神」 となったのか」 である. 最近は教育勅語が現在でも有効な常識的な内容だとする意見が多くなっているが,小室によれば教育勅語はキリストのような現人神である天皇が儒教にはないまったく新しい規範を説いたものであるという. これぞ小室天皇教の真髄であり,逆にいえば教育勅語の “復活” に注意が必要だということでもある.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 日本国民に告ぐ@ [bk1]日本国民に告ぐ@Amazon.co.jp

つづく…

2006-06-03

宮台真司の本には粗雑なものが多い. この本に関しても他のレビューで誤字脱字の多さや注釈がないことが指摘されている (注釈がある本でも場違いなことが多い). たくさんのひきだしのなかみをチラチラとひけらかしてくれて,つまりカタログ的にいろいろなことが書いてあるので,それをヒントにかんがえたり,ほかの本を読んだりすることはできるが,この本だけ読んでも宮台のように知識がない私には,それらの断片を理解することができない. もっと,だれでもわかるように,ていねいに書いてほしいものである.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 亜細亜主義の顛末に学べ@ [bk1]亜細亜主義の顛末に学べ@Amazon.co.jp

つづく…

10 数年まえだったら,問題の本質にせまらずにただ表面をうわすべりするだけの,このようなものいいに対して,もっと共感をおぼえただろう. しかし,もはやサヨク的な信念をもてなくなったいまでは,もっと本質をえぐってもらわないかぎりは共感することができなくなってしまった. 本質にせまれない理由としてはこの本に収録されている文章のおおくが字数のかぎられた新聞やジャーナルの記事だからということもあるだろう. しかし,80 ページをついやしている 「禁煙ファシズム」 に関しても単なる事実とそれに対する意見の列挙以上に深い議論にはなっていない.

評価: ★☆☆☆☆

関連リンク: 国家に隷従せず@ [bk1]国家に隷従せず@Amazon.co.jp

つづく…

2007-08-31

シャドーワークということばをつくったイヴァン・イリイチによるその定義は 「無報酬とされている仕事だが,何らかの経済行動の基盤を維持したり,支援したりするために不可欠な仕事」 だという. 本書の著者はシャドーワークをはっきり定義していないが,「上司の指示を待ったり,事前に相談したり,または許可を受けるようなことをせずに,自発的な非正規の行動を起こすこと」 がシャドーワークだと書いている. これはイリイチの定義とはあきらかにちがっていて,しかも,とくに 「非正規の行動」 というところがあいまいである. 本書でとりあげられている例をみると,著者がいう 「シャドーワーク」 には無報酬のものもあり報酬があたえられているものもある. また,仕事じたいも経済的に支援されているばあいとそうでないばあいとがある. 無報酬だったり支援されなかったりするときは,その 「仕事」 と会社との関係はよわくなるとかんがえられるが,本書では会社との関係がつよいケースばかりがとりあげられている. 私にはとりあげられている例の大半は本来のシャドーワークにあたらないようにおもえる. はっきり定義されていないことからもわかるように,著者にとっては実はシャドーワークという概念はたいした意味をもっていない,むしろ仕事における自発性に興味があるのだとかんがえられる. シャドーワークそのものに興味があった私は失望させられた.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: シャドーワーク 知識創造を促す組織戦略@ [bk1]シャドーワーク 知識創造を促す組織戦略@Amazon.co.jp

つづく…

2007-09-16

日本の歴史とくに大東亜戦争をみなおそうといううごきが,「新しい歴史教科書をつくる会」 をはじめとして,さかんになっています. みなおしを主張するひとたちが問題にする点のひとつは,「南京大虐殺」 をうつしたとされる写真のおおくが虚偽にみちたものだという点です. この戦争に関するおおくの本のなかでその真偽が議論されています. しかし私は,戦争とは直接の関係がない本のなかでこの問題に関連する記述があることを発見し,重要な論点を提供していると感じました. それは,今野 勉 の 「テレビの嘘を見破る」 という本です.

つづく…

2007-10-13

冒頭に 2020 年におけるケータイのつかわれかたをえがく 「小説」 が書かれているが,それを読んでいきなり,がっかりさせられた. そこに書いてあることは,研究レベルではいますでにほとんど実現されていることである. まったく夢が感じられない. しかし,著者はつぎのように書いている. 「人間の基本的なライフスタイルや考え方は,半世紀単位でも思ったほど変わっていないように思える. [中略] 今現在の生活者である我々がピンと来ないものは,10 年 ~ 20 年経ったとしても使われることはないのではないだろうか.」 冒頭の小説はこのかんがえにもとづいて書かれたということだろう. 通信インフラとして出発し i モードによって IT インフラとなったケータイだが,現在すでに,おさいふケータイがだいぶ普及し,つぎのステップはそれを 「生活インフラ」 にすることだという. 日本ではまだクレジット・カードが普及していないというところに目をつけて,それをケータイのうえで実現しようという戦略はしたたかなものである.

本書でおもしろいところは,第 3 章におけるテレコム業界批判である. 顧客ではなく 「業界のため」 を第 1 にかんがえる体質やをするどく批判し,それにたちむかったことで i モードを成功させたと自負している. また,WAP (ケータイ Web 標準) に関して,標準化会議における日本人の影の薄さを指摘している. また,技術の優位性こそすべてという 「技術単独信奉」 を批判し,FOMA においてそれが成果をあげたことをのべている. ほかにもおもしろい内容がふくまれているが,ここまでにしておこう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: ケータイの未来@ [bk1]ケータイの未来@Amazon.co.jp

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2007-11-10

タイトルからして 「日はまた昇る」 の続編のようなつもりで買ったのだが,内容は日本だけでなくアメリカ,ヨーロッパ,中東にまで言及している. 日本を中心として世界全体をながめるのにちょうどよい本かもしれない. 日本ではジャーナリズムも近視眼的で,中東などのできごとが歴史的な考察までくわえながら論じられることはまれである. このうすい本からまなべることはかぎられているが,こういうインターナショナルな視点をまなぶべきだろう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: これから10年、新黄金時代の日本@ [bk1]これから10年、新黄金時代の日本@Amazon.co.jp

つづく…

2007-11-17

みじかい本ではあるが,著者の日本経済・社会についての理解から示唆される点がおおい. 1990~2005 年の分析としては,たとえば 「基本的な景気対策,たとえば公共投資によって一部の圧力団体と政治家の懐がさらに豊かになり,改革への抵抗がますます強くなった」 こと,「不満や疎外感は存在するが,多くのヨーロッパ諸国やアメリカなら起こったはずの秩序崩壊や暴力沙汰は見られなかった」 ことなどが指摘されている. また,A 級戦犯の合祀が 「欧州の人間にとっては,これはアドルフ・ヒトラーや他のナチ高官を祀り上げるのに等しく」 ということばは,そこに誤解があるかどうかはともかくとして,日本人が理解すべき点だとおもわれる. また,靖国神社のありかたについても読むべき内容がある.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 日はまた昇る@ [bk1]日はまた昇る@Amazon.co.jp

つづく…

2008-02-29

日本人は 50 年以上まえから 「ワーカホリック」 などといわれてきたが,いまや働きすぎは世界にひろがり,フランスでさえも労働時間をふやそうとしている. 日本では過労死さえ頻発している. そういう時代のながれをこの本では数値的にとらえている. しかし,それではどうしたらよいのか? この本では終章が対策の検討にあてられているが,そこでのべられている大半のことは,ずっと以前からいわれつづけてきたことである. たしかに基本は重要だが,もっと現在の状況にあわせた対策をかんがえなければ,問題の解決はおぼつかないだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 働きすぎの時代@ [bk1]働きすぎの時代@Amazon.co.jp

つづく…

2008-03-11

アップル (Apple) はどういう会社か,またスティーブ・ジョブスはどういうひとか,それを新書というみじかい本のなかにうまく書いている. とくに,ジョブスがどうやってアップルという会社をとりもどしたのか,その後どのような戦略をとっているかなど,もしまだ知らなければ読む価値があるだろう. しかし,すでにある程度こうした知識を知っている私にとっては,おさらいにはなったが,いまひとつ,あたらしい発見はなかったようにおもう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: アップルの法則@ [bk1]アップルの法則@Amazon.co.jp

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2008-03-19

“食の安全” にかかわる新書はほかにもあるが,これはもっともあたらしい 1 冊である. 最近は中国ばかりに目がいっているが,この本は日本こそ問題だということを指摘している. そのひとつは工場監査の際に不正の兆候がみのがされていることの指摘である: 「監査者が自分の頭の中で監査する範囲を決めてしまっていた [...] ミートホープの冷凍庫,冷蔵庫の中に豚の心臓があっても,自分の仕入れ商品と違うので問題視しなかったのです」. 大前研一がある著書のなかでコンサルタントはどんな些細な兆候もみのがさないことが大事だということを指摘しているが,食品工場の監査もおなじだといってよいのだろう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: “食の安全”はどこまで信用できるのか@ [bk1]“食の安全”はどこまで信用できるのか@Amazon.co.jp

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2008-04-03

文化大革命でおおくの中国人がひどい目にあわされたが,この本を信じるならば,その後もべつの意味でひどい目にあわされつづけていることになる. 拝金主義,腐敗をはじめとするモラル・ハザードの極致,その種をまいたのが鄧小平だという. しかし,中国に対する敵意をむきだしにした本がおおいなかで,この本の著者は中国への愛をもって告発している. 中国だけでなく日本のためにも,はやく中国がこういう状態からぬけだしてほしいとおもう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: トンデモ国家@ [bk1]トンデモ国家@Amazon.co.jp

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2008-04-12

BK1 の内容説明によると 「日本の IT 産業が崩壊の危機に瀕している. 牙を剝くグローバル競争の脅威.富士通,NEC,日立はどう立ち向かうのか.産業構造の変革期にあることを改めて訴え,次の IT 産業を創出するための 「カギ」 を提示する.」 ということだが,実はまったく解決への方向を提示できていない. Amazon.co.jp の書評をみても,意見はまったくバラバラであり,問題の根深さを痛感する. しかし,それはすくなくともこの本が問題点の指摘においては成功していることを意味している.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: IT 産業崩壊の危機@ [bk1]IT 産業崩壊の危機@Amazon.co.jp

つづく…

2008-04-24

著者は農地地価などのデータを入手して,それをみずからコンピュータで分析し,十勝地方に 「特異的に,農業が産業として成立」 していることをみいだした. そして,その謎をとくために現地にでかけて取材している. こうした努力の末に書かれたのがこの本である. この本の最後では国政における自民党と民主党,有権者の行動なども分析されている.

とはいっても,この本がおもにあつかっているのは半導体材料におけるイノベーションである. みずからもかつてつとめていた大企業でイノベーションのたねが死蔵されている状態からぬけだすカギをもとめて,有名なクリステンセンの理論に異をとなえている. とはいえ,物理屋でも半導体屋でもないソフトウェア屋の私には,ここからイノベーションをおこすカギをみつけるのはむずかしい.

評価: ★★★★☆

関連リンク: イノベーション 破壊と共鳴@ [bk1]イノベーション 破壊と共鳴@Amazon.co.jp

つづく…

2008-04-28

マイクログリッドの厳密な定義はこの本にゆずるが,それは従来の電力ネットワークに接続される分散した電力供給者と消費者とで構成される. 家庭の太陽光発電システムもマイクログリッドの一部になりうるが,この本がおもな対象としているのはもうすこし大規模な,企業などの発電システムであり,発電機器としてもマイクロ・ガスタービン,マイクロ・ガスエンジンなどがとりあげられている.

世間では太陽光発電に関しても CO2 が削減されるといった利点ばかりが強調されているという印象をうける. しかし,カリフォルニアやニューヨークでかつて発生した停電は,電力の安定供給がそんなにかんたんなものでないことをしめしている. 分散型の発電がひろまれば,電力系が不安定になるのではないかという私の疑問に,この本はこたえてくれた. ひとことでいえば,これから解決するべき課題が山積しているということである. 理系の私にもわかりにくい技術的な内容をふくんでいるが,おおまかな把握のためにはやくにたつとおもう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: マイクログリッド@ [bk1]マイクログリッド@Amazon.co.jp

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2008-05-05

Amazon.co.jp や他の書籍サイトで 「電子マネー」 を検索すると,40 冊ちかい本がみつかります. しかし,その大半は 1990 年代に出版されたものです. それらの本と最近に出版された比較的かぎられた数の本の内容をくらべると,わずかしか,かさなりがないことがわかります. この事実が,第 1 世代と第 2 世代のあいだに断絶がある電子マネーの歴史をものがたっています.

つづく…

この本にはその出版後にひろくつかわれるようになった Suica や Edy, おサイフケータイなどに関する記述はない. これらが第 2 世代の電子マネーであるとすれば,この本は第 1 世代の電子マネーに関するものである. 第 2 世代とは非常にことなる,暗号技術に特徴がある第 1 世代の電子マネーが存在したことは知る価値がある. この本ではその問題点もくわしく分析されていて,実際にその一部が第 1 世代の電子マネーの失敗の原因になったとかんがえられる. それを知ることは,今後の技術開発やビジネスにもやくだつかもしれない.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 手にとるように電子マネーがわかる本@ [bk1]手にとるように電子マネーがわかる本@Amazon.co.jp

つづく…

おなじ日経文庫の 「電子マネーがわかる」 が Suica,Edy, おサイフケータイなど,第 2 世代の電子マネーを中心としているのに対して,この本は DigiCash,Mondex など,第 1 世代の電子マネーとそれをささえる技術に関する解説である. ふるびてしまった部分があることは否定できないが,両方あわせて読むことによって,電子マネーをよりよく理解できるとおもう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 電子マネー入門@ [bk1]電子マネー入門@Amazon.co.jp

つづく…

新書のかぎられたページ数のなかで,現在,日本でつかわれているさまざまな電子マネーだけでなく,世界でつかわれている ISO14443 タイプ A,タイプ B にもとづく香港,中国,ヨーロッパなどのさまざまな電子マネーや標準化動向,これらの第 2 世代の電子マネーとは一線を画する第 1 世代のモンデックスやゲルトカルテなどについてもひととおり説明している. 電子マネーの概要を把握するには最適な本だということができるだろう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 電子マネーがわかる@ [bk1]電子マネーがわかる@Amazon.co.jp

つづく…

2008-05-06

この本では退職後にゆたかな生活をおくるために 40 代,50 代にどのようなそなえをすればよいかが書かれている. 単にカネのことだけでなく,40 代から資格取得をめざすとよいということにまで言及している. しかし,この本を読むと,私に関しては気持ちが暗くなってしまう. 「40 代の転職は退職金で決める」 など,カネのために行動がしばられる話が書かれているせいかもしれない. やりたい仕事があるならこの本の内容は無視してやればよいわけなのだが,「それでは生活がなりたたなくなるよ」 といわれている気がする.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 年金をあてにしない蓄財術@ [bk1]年金をあてにしない蓄財術@Amazon.co.jp

つづく…

読んだことはないが,「1人ビジネス」 に関する本はすでに何冊か出版されている. また,雑誌にはいろいろ紹介されている. この本はいろいろなケースがとりあげられていて,よくまとまっているとおもう. しかし,すでにいろいろ同様の情報があるなかで,なぜいまこの本を出版したのか,よくわからなかった. もっとオリジナリティをはっきりだしてほしかったとおもう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: ひとりビジネス@ [bk1]ひとりビジネス@Amazon.co.jp

つづく…

著者は日本の会社に導入された 「実力主義」,「成果主義」,「360 度評価」,「フラット型組織」,「ボトムアップ主義」 をつぎつぎと斬っていく. これらは手本となった国の企業ではうまく作用していたのだろうが,それを国情や社風などのちがいに十分配慮せずに導入したために失敗した例が多々あるのは事実だろう. しかし,この本の論旨には飛躍しているところが多々あるようにおもう. たとえば実力主義は野心家に悪用されるからよくないということが書かれているが,それがどういう条件のもとでおこるかは分析されていない. 全体を通じて感じるのは,きちんと分析しないまま,わるい面ばかりが強調されていて,うまく導入すれば機能する上記の主義たちが不当にけなされているということである.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 御社のトップがダメな理由@ [bk1]御社のトップがダメな理由@Amazon.co.jp

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2008-05-07

社会学ではフィールドワークが欠かせないが,社会学や社会調査などの本は調査の技術にかたよりがちである. 著者がこの本でつたえたいのは技術でなく,フィールドワークのこころがまえやかんがえかたである. 社会学者でなくてもフィールドワークやアンケートなどの調査が必要になる機会があるだろう. そういうとき,この本が参考になるのではないだろうか. また,これは 「おもてなし」 のこころにも通じているようにおもう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 「あたりまえ」を疑う社会学@ [bk1]「あたりまえ」を疑う社会学@Amazon.co.jp

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2008-05-09

著者があげている 「5 つの定理」 すなわち 「アントレプレナーシップ」,「チーム力」,「技術者の眼」,「グーグリネス」,「大人の流儀」 はたしかにこれから Web などでなにごとかをしようとするひとが知っておくべきことだろう. しかし,これらは未来よりは過去につながっている. 「未来を切り開く!」 ためには,これだけでは十分とはいえないだろう. これらをヒントにするのはよいが,とらわれないほうがよいようにおもえる. それから,技術者である私の眼には,著者がいう 「技術者の眼」 はちょっとずれているようにおもえる. このあたりは,やはり技術者が書いているものをみたほうがよい.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: ウェブ時代 5つの定理@ [bk1]ウェブ時代 5つの定理@Amazon.co.jp

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2008-05-12

Web 2.0 の技術をどのように企業活動にいかすことができるか. 本書はその概論をのべ,ブログ,SNS,Wiki など,さまざまな Web 2.0 の手段について個別に検討してもいる. そこから,いろいろなヒントをよみとることができるだろう. しかし,本書においては現代の企業にとって最重要課題のひとつであるセキュリティに関する検討がまったくおこなわれていない. セキュリティに関する指針がないままでは,企業がこれらの手段をとりいれることはできないだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: エンタープライズ 2.0@ [bk1]エンタープライズ 2.0@Amazon.co.jp

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2008-05-14

シリコンバレーに滞在する著者は,わかい日本人が海外旅行や海外での仕事などに関して消極的になったことを 「パラダイス鎖国」 と呼んでいる. 「鎖国」 はわかるが,非正規雇用問題,セーフティ・ネットの危機など,さまざまな問題をかかえている日本が 「パラダイス」 だとはとてもおもえない. しかし,著者はいろいろな数字をあげて,日本がさまざまな問題をかかえながらも,まだ大国であり,アメリカよりくらしやすいと書いている.

この本は 「鎖国」 に悲観しているわけではなく,そこからぬけだす道をしめしている. すなわち,シリコンバレーにいるような 「霧の中で見えないものに向かって敢然と進むこと,あるいは,ほかの人には見えないけれど自分だけに見えるものを探すこと」 を積極的にするひとをそだてる必要があるという. しかし,シリコンバレーにはそういうひとたちをつなぐしかけがあることが重要だろう. そこまでふみこまなければ,そういうひとたちがうまれても,すぐにきえてしまうだけではないだろうか.

評価: ★★★★☆

関連リンク: パラダイス鎖国@ [bk1]パラダイス鎖国@Amazon.co.jp

つづく…

2008-05-18

著者は 2005 年に 「しのびよるネオ階級社会」 という本を書いて,おおきな反響をえた. そのなかには批判もおおかった. 本書はその最初から名指しでそういう批判に反論している. 5 章までは比較的ていねいに反論をこころみていて,議論がかたよっていることが気にはなるものの,いろいろ示唆をあたえている. しかし,本書のタイトルとおなじタイトルをもつ 6 章になると,おおくのひとの名前をつぎつぎにあげて,揚げ足取りな議論をはじめる. これ以降の章はもはや読む価値がない. 後半の章が前半をだいなしにしていて,興ざめである.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: ネオ階級社会を待望する人々@ [bk1]ネオ階級社会を待望する人々@Amazon.co.jp

つづく…

2008-05-20

新版がでるまえに買って,その存在を知らないままに読んだ. 現在でもこれが社会学のエッセンスであるということに異論はないが,第 1 刷が 1996 年ということで,とりあげられている事件や社会現象などは大半が 1980 年代のものであり,さすがにふるい. 新版を読むべきだろう.

第 10 章 「コミュニケーションの自己準拠」 では 「カオスの淵」 のことを書いているようだが,このことばをつかっていないので,かえってわかりにくいようにおもう. 第 11 章 「社会のなかの権力」 では日米開戦時の御前会議で昭和天皇がリーダーシップを発揮して戦争を回避できなかったのは 「稟議制」 のためだといっているが,これは戦前の政治体制に対する誤解にもとづいているとおもう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 社会学のエッセンス@ [bk1]社会学のエッセンス@Amazon.co.jp

つづく…

2008-05-22

この本からえられるものはおおいが,論理に飛躍がおおいため,消化不良のままでおわってしまう. 本のタイトルの 「不可能性の時代」 については 「虚構の時代の後に,現実を秩序づける準拠点となっているのは,この認識と実践から逃れゆく 「不可能なもの」 である. [中略] われわれが今,その入り口にいる時代は,「不可能性の時代」 と呼ぶのが適切だ」 と書いているが,これで 「不可能」 が適切な呼び名であるとは到底,納得できない.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 不可能性の時代@ [bk1]不可能性の時代@Amazon.co.jp

つづく…

2008-05-23

地域活性化のために (Web にかぎらない) インターネットなどを利用した例を 6 件ほど紹介している. 実践例を紹介するだけでなく,それにさきだって大店法や 「まちづくり三法」 の失敗など,政治や社会を分析し,それをのりこえて地域情報化をはかるための理論をしめしている. さきに理論だけが紹介されているため理論だおれなのではないかとおもったが,例の紹介のなかできちんとそれがフォローされている.

とはいえ,こうしたとりくみはまだはじまったばかりであり,この理論がただしいにせよ,まちがっているにせよ,この本がさらにいろいろなこころみがおこなわれていくきっかけになればよいのだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: ウェブが創る新しい郷土@ [bk1]ウェブが創る新しい郷土@Amazon.co.jp

つづく…

2008-05-31

著者はさまざまな 「まちづくり」 の活動を調査して,それらのなまのすがたをつたえるとともに,そこから今後のまちづくりへの展望をみちびこうとしている. 終章では 「上からの改革」 がもはや機能しないことやボランティアの重要性についてのべていて,それはそのとおりだとおもうが,この結論はまったく不満足なものである. この程度のことなら,たとえば NHK の 「ご近所の底力」 などでも,いつも話題にされていることである [もっとも,本書の出版の時点ではこの番組ははじまっていなかったのだろうが].

本書で紹介された 「まちづくり」 の例のなかにはもっと,くみとるべきものがあるようにおもう. たとえば十勝の 「北の屋台」 については 「改行準備として 2000 年 2 月に 「北の起業広場協同組合」 を設立し,ホームページを開設. 市内の各所で世界の屋台の写真パネルの展示会を開催し,新聞社をはじめとして各種のメディアの協力も得て広報活動を行った.…」 といった記述があるが,ここからくみとれるものはすくなくないとおもう. それをくみとる作業をすべて読者にまかせてしまうのでは,著者,研究者としての仕事を放棄してしまっているといわざるをえないのではないだろうか.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 〈地域人〉とまちづくり@ [bk1]〈地域人〉とまちづくり@Amazon.co.jp

つづく…

2008-06-12

経済が低迷する 1990 年代に楽天で大成功をおさめた著者は,きっと,成功するための策をいろいろかんがえぬいたにちがいない. 読むまえには,「成功のコンセプト」 というタイトルの本であれば,そういうことがぎっしり書いてあるにちがいないとおもっていた. しかし,ここにつづられているのは,「僕にとってこの [ハーバード大学のビジネススクールへの] 留学のいちばんの収穫は,MBA を取得したことより起業精神に触れたことだ」 (p. 79) ということばに象徴されるように,むしろ非常にナイーブな印象をうける. 三木谷本人が書いた本であるがゆえに,よりつよくそういう印象をうけるのだろう. そこが,小手先の策を弄しつづけたホリエモンとの一番のちがいなのだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 成功のコンセプト@ [bk1]成功のコンセプト@Amazon.co.jp

つづく…

この本のタイトルからは,いかがわしい雰囲気がつよく感じられる. しかし,内容は三木谷のおいたちから興銀就職,MBA 取得,孫正義との出会い,楽天のたちあげ,楽天球団誕生,フジテレビ問題などをまじめに論じていく. なぜこのようなタイトルをつけたのか,不明である. 三木谷と孫,ホリエモンなどとの関係やちがいの記述をはじめ,おもしろいエピソードはいろいろ書かれているが,280 ページほどのなかであまりにおおくのことを書いているので,食い足りないのはやむをえないだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: “教祖” 降臨@ [bk1]“教祖” 降臨@Amazon.co.jp

つづく…

2008-06-20

まちやそのなかの店をその構造やひとのながれ,時間帯など,さまざまな角度から分析・分類している. とくに,それらの分類のしかたや概念につけられた 「わざわざ店」,「エキサイティングショップ」 などのなまえに,学術的な分析とはちがう博報堂らしさがある. 内容はもうだいぶふるくなってしまっているが,ここでしめされている 「ものの見方」 にはまなぶべき点がおおい.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: タウン・ウォッチング@Amazon.co.jpタウン・ウォッチング@Amazon.co.jp

つづく…

2008-06-25

アメリカでは全労働者の 30% がクリエイティブな仕事についているが,これはこれまでアメリカが世界のクリエイティブなひとびとをひきよせていたからだという. ところが,最近はそういうひとびとがむしろアメリカ以外の国にひきよせられている. 本書はそういう危機感にいろどられている.

すこし意外だったのは,日本もこの本で使用された統計がとられた 2000 年ころにはいくつかの項目でアメリカよりクリエイティブだとみなされたことである. しかし,たぶん現在ではそうでなくなっているのだろう.

この本は日本では 「クリエイティブ資本論」 よりさきに出版されているが,「クリエイティブ・クラス」 そのものについて書かれているのは 「クリエイティブ資本論」 であり,それをまず読むべきだとおもう. この本はアメリカ人向きであり,日本人が読む必要はないのではないかとおもう.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: クリエイティブ・クラスの世紀@ [bk1]クリエイティブ・クラスの世紀@Amazon.co.jp

つづく…

2008-06-30

テレワークに関してはその正の面ばかりを書いた本がおおいが,本書はその負の面を冷静に分析している. 正の面について書いた本とあわせて読むことによって,テレワークをよりよく理解することができるだろう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: テレワーク@ [bk1]テレワーク@Amazon.co.jp

つづく…

2008-07-04

現在の経済・社会がもとめているのはクリエイティビティであり,都市が成長するのに必要な 「3 つの T」 は技術 (technology),才能 (talent),寛容性 (tolerance,ゲイを許容する) だと著者はいう. これらをもつ都市,たとえばオースティン,サンフランシスコ,シアトル,ボストンなどにクリエイティブ・クラス (新たな経済階級) のひとびとがあつまって活性化する. シリコン・バレーはこれらの都市のモデルにはなりえないし,著者の大学があるピッツバーグもおくれをとっている.

いろいろと刺激的な内容をふくむ本である. アメリカの都市を中心に論じていて,おなじ基準では日本の都市はひくい評価をうけることになるだろうが,たとえば東京は著者のいうクリエイティビティがゆたかな都市であるようにおもえる. 訳も基本的にはよみやすいが,重要なキーワードである social capital (ソーシャル・キャピタル) を 「社会資本」 と訳しているのは誤訳だろう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: クリエイティブ資本論@ [bk1]クリエイティブ資本論@Amazon.co.jp

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2008-07-07

「郊外化」 を都市計画や建築の問題としてとらえる 松原 隆一郎 のような論者と,それを人間や社会の問題としてとらえる 宮台 真司 のような論者がいるなかで,両者をつなぐ議論を展開し,郊外化を単に都市周辺の問題でなく日本全体の問題 (「総郊外化」) としてとらえているのが本書の著者である.

「街をつくらない」 ジャスコや他の大型店の地方進出によって享楽的・退廃的な消費社会がつくられたと主張する,その危機感には迫力がある. 一方で吉祥寺,下北沢,高円寺などの東京の都市には 「新たな原理」 をみている. 主張の根拠は十分ではないが,それは読者に課せられた課題とかんがえることができる.

評価: ★★★★☆

関連リンク: ファスト風土化する日本@ [bk1]ファスト風土化する日本@Amazon.co.jp

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地方の 「総郊外化」,退廃化に危機感をもつ三浦らの著者たちは,それぞれの立場から解決への努力をはらっている. 三浦は解決のヒントを東京にもとめているが,「商店主自身が街に住み,街に愛着を持って店を開いていれば,自然と人口も増える」 というのはあまりに楽観的なかんがえだろう. 渡もニューアーバニズムに解決策をもとめ,「もう一度東京のよさを学ぶ」 ことをすすめている. 馬場は日本橋を拠点として,まちの再生をめざしている.

さまざまな分野の著者たちは 「ファスト風土化」 に危機感をもち,そこからぬけだすヒントが東京にあるという点で共通するかんがえかたをもっているようにみえる. しかし,それがなぜなのかが,はっきりとはみえてこない.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 脱ファスト風土宣言@ [bk1]脱ファスト風土宣言@Amazon.co.jp

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2008-07-11

本書は有名な KT 法の原典である.系統的な問題解決の方法を記述している. この方法は,状態把握,問題分析,決定分析,潜在的問題分析という 4 つの 「ラショナル・プロセス」 からなっている. 本書を読めば,これらのプロセスをどのように適用すればよいか,そのおおすじがわかる.

本書のもっとおもしろいところは,これらのプロセスの適用例として,おおくの実例がとりあげられていることである. これらの実例を理解することによって,KT 法をどう適用すればよいか,そのヒントをえることができる. 本書が書かれた時代のためだろうが,これらの例のおおくは生産現場や顧客への出荷にともなって発生した問題をとりあげている.

しかし,これらの実例をみると,それらにおいては KT 法によって必然的に問題が解決できたわけではなく,おおくのばあいにひらめきや常識にとらわれない判断などがきっかけとなって問題が解決されていることがわかる. 系統的に問題を詰めたことがこれらのひらめきや判断につながったのだろうが,KT 法以外のやりかたをとったときにくらべてよかったのか,わるかったのかは,これだけでは判断できない.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 新・管理者の判断力@ [bk1]新・管理者の判断力@Amazon.co.jp

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2008-07-20

おなじ編著者による 「ファスト風土化する日本」,「脱ファスト風土化宣言」 などの続編とみなせる本である. 「ファスト風土化」 とは日本中が画一化された 「郊外」 になることを意味しているが,アメリカでもこうした現象がおこり,その元凶がウォルマートだとされている. 日本ではそれにちかいのがイオンである.

本書ではアメリカでも日本でも 「ファスト風土化」 と格差社会とが関係していることが指摘されている. また,ヨーロッパにおける 「ファスト風土化」 に対する規制について記述されている. もっとこまかいが注意をひく点として,これまでの日本が生産者中心だったのが消費者中心にするべきだといわれてきたのに対して,三浦は疑問を呈している (p. 16) こと,「ファスト風土化」 を 「再魔術化」 という概念とむすびつけていることなどがある.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 下流同盟@ [bk1]下流同盟@Amazon.co.jp

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2008-07-23

著者が設立したカルチャースタディーズ研究所が企画した 3 つの統計調査の結果を再利用して 「階層格差」 を追究している. 団塊ジュニアが 「下流化」 しているとし,所得がひくいだけでなく意欲や能力がひくいのが 「下流」 だとしている. サンプル数がすくないことを著者も気にしているが,この結果がみちびかれたのはそのためではなくて,著者が統計数値に大胆な解釈をくわえているからだろう. 話としてはおもしろいし,あたっているところもあるだろうが,ダマされないようにする必要もあるだろう.

本書には統計数値の表やグラフが多数のせられているが,そのためによみにくくなっているのは否定できない. どうせ大胆な解釈をくわえるのであれば,表やグラフを多数のせて客観的なフリをする必要もなかったのではないだろうか. 写真についてもそれとキャプションがあっているかどうかは疑問である.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 下流社会@ [bk1]下流社会@Amazon.co.jp

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2008-07-29

逮捕歴 4 回の札付きのワルだった著者は改心したが,脅迫事件によってふたたび逮捕され,裁判で最高裁まで争い,さらに再審まで請求するが主張がみとめられていない. 裁判員制度に希望をつないでいるから 「裁判員に選ばれるあなたへ」 というタイトルをつけたのだろうが,この本の内容は裁判員制度とは無関係であり,だまされて買ってしまった. 意図がよくわからないまま長い文章をよまされるのは,いささか苦痛である. 残念ながら裁判員制度は著者をすくうのにはやくにたたないだろう.

評価: ★☆☆☆☆

関連リンク: 裁判員に選ばれるあなたへ@ [bk1]裁判員に選ばれるあなたへ@Amazon.co.jp

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2008-08-09

小林 多喜二 の 「蟹工船」 を 「愛蔵版 ザ・多喜二」 で読んだ. この小説の存在は中学生ころから知っていたが,読んだことはなかった. 最近この小説が非正規雇用者を中心としてよく読まれていて,非正規雇用問題と関連づけてさんざん議論されているが,論じられていない点も多々あるようにおもえる.

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2008-08-11

タイトルには 「ウェブ」 がついているが,むしろケータイの話題,とくにこどもによるケータイ使用に関する話題がおおい. しかし,全体として散漫な印象であり,なにがいいたいのかよくわからない. その理由はこの本が新聞などからとった多数の文章を PHP の編集者が中心にまとめたものだからだろう. また,サル学が専門の著者がサルのはなしを書いていないことも,文章のおもしろさを減じているのかもしれない.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: ウェブ人間退化論@ [bk1]ウェブ人間退化論@Amazon.co.jp

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2008-08-18

著者は読売新聞記者出身ではあるが,1960 年代から大規模小売店業者を指導する立場になった. 本書はその立場から書かれたものである. 本書においてはアメリカの合理主義的なやりかたを紹介し,それが日本に根付かないことをいろいろな点から指摘・批判している.

たとえば,「有機栽培だから」,「自然農法だから」 よいといいつつ,その科学的根拠があいまいにされている点 (p. 71),マクドナルドのマニュアルが科学的実験をつきつめてできあがっていること (p. 202),台湾での買い付けにおいてアメリカのバイヤーが品質確保のためにきちんと指示をだしているのに日本のバイヤーはそれをしていないために品質が確保できていないこと (p. 241),日本のアイロン台は丈夫すぎて高価になっていること (p. 203) などが指摘されている.

しかし,アメリカと日本とのちがいやアメリカでウォルマートがきらわれていることなども考慮するべきだとおもえるが,こうしたことについてはほとんど書かれていない. アメリカの業界は日本より消費者を指向しているが,この本においては消費者の立場をどうかんがえているのかもあきらかでない. というわけで疑問の点もいろいろあるが,まだ,くみとれる点もおおいとかんがえられる.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 流通革命の真実@ [bk1]流通革命の真実@Amazon.co.jp

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2008-08-22

著者はプレカリアートあるいはワーキングプアがうみだされる背景を分析し,プレカリアートを搾取する日雇い派遣などのビジネスを糾弾している. そして,立ち上がるプレカリアート (とともにたたかう著者) がいる一方で,そういう行動に批判的なプレカリアートがいることも具体的な取材にもとづいて書いている. 座談会を企画しているが,そのなかに努力しない若者をなげく 61 歳の女性もまじえているのがよい. また,石原都知事と著者との対談ものせているが,火花をちらしそうな雰囲気もあるなかで,都知事からある程度有意義な発言をみいだしているようだ.

冒頭にプレカリアートということばがイタリアでつくられたことが紹介されているが,そういう世界規模の問題であるだけに容易に解決できるものではない. しかし,解決をめざしていろいろくふうしている著者を応援したい.

評価: ★★★★☆

関連リンク: プレカリアート@ [bk1]プレカリアート@Amazon.co.jp

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2008-08-23

この本は今年 7 月に出版されたばかりだが,その論点のほとんどは 10 年以上まえから指摘されていることである. IT がジェネラルパーパス (汎用) コンピュータにささえられた技術であることは,この本でもふれている 1960 年代に登場した IBM のシステム 360 以来である. 日本の情報システムのおおくがレガシーである,つまりふるびたシステムをだましだましつかっていることも 20 年以上まえからである. 日本の電子政府が 「おもちゃ」 だという指摘はもっとあたらしいが,ちょっとつかってみればわかる程度の指摘でしかない. そして,これらの問題点に対する解決策はあたえられていない. それでいて 「日本の停滞を打破する究極手段」 などという副題をつけているのはあまりにひどい.

つまり,この本のもとになっている知識はだれでもすぐにしらべられる程度のものであり,結論 (になっていないむすび) もそうである. 著者自身がもうレガシーになってしまったということだろうか?

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: ジェネラルパーパス・テクノロジー@ [bk1]ジェネラルパーパス・テクノロジー@Amazon.co.jp

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2008-09-03

おおくのインタビューと豊富な統計によって,ミクロとマクロの両面からワーキングプアのすがたをとらえようとしている. 従来からよくある統計だけでなく,欠員率と完全失業率の統計から独自のグラフを書いて若年層ほど雇用のミスマッチつまり欠員はあるのに失業もおおいことをあきらかにしている. つまり,ワーキングプアの問題が 「失われた 10 年」 だけでない進行中の深刻な問題だということである.

評価: ★★★★☆

関連リンク: ワーキングプア@ [bk1]ワーキングプア@Amazon.co.jp

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2008-09-27

この本でもとりあげられている話題だが,「生活保護がうけられずに餓死した」 というような話が断片的に報道されると,餓死に追いこんだ自治体や担当者はひどいという反応をひきおこす. しかし,生活保護を悪用するひともおおく,判断がむずかしいようだ. ほかにもさまざまな問題がある. この本を読めば,生活保護という制度がかかえる問題の全体を把握することができる.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 生活保護が危ない@ [bk1]生活保護が危ない@Amazon.co.jp

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2008-09-29

緒言によれば本書は 「「グローバリゼーションの広がりとともに,ローカルなもの,自分らしさへの確固たる根拠を求める動きが強くなる」 という現象を,どのように理解すべきか,という関心の下に執筆されている」 という.

ギデンズの議論を軸として,さまざまな話題が関係づけられている. そのなかには民間企業による (民営化された) 軍事活動やセキュリティ・ソフト (ウィルス対策ソフト) の開発,「第 3 の道」 から 「新進歩主義」 への移行のなかでの 「民営化」 から 「公共化」 へのシフト,安全より安心をもとめる 「子供の安全」,福祉活動が私的な活動になって労働と余暇の境界が融解していること,フィンランド人が直面しているプロテスタント倫理にかわるべきハッカー倫理などなど,さまざまな問題がちりばめられている. それらは上記のテーマに関連づけられているが,その文脈からうきあがってみえる.

よみおわってのこるものは,これらのさまざまな問題のうずであって,なにも整理された感じがしない. しかし,これらのグローバリゼーションにかかわる問題のカタログとして,重宝するであろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 〈反転〉するグローバリゼーション@ [bk1]〈反転〉するグローバリゼーション@Amazon.co.jp

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2008-10-01

フランス人の手によるグローバリゼーションの本ということだ. 日本で出版されたのが 2004 年ということで,あまり最近の本でないこともあるが,アメリカ人などの手による他の本とくらべると,グローバリゼーションへの理解が浅いようにおもえる. フランス人でも 18 歳 ~ 24 歳の半分以上がグローバリゼーションはチャンスだとかんがえているというような記述はちょっと興味をひかれるが,そうしたフランス人とグローバリゼーションとの関係をべつにすれば,それほど,めあたらしいことはない.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: グローバリゼーションの基礎知識@ [bk1]グローバリゼーションの基礎知識@Amazon.co.jp

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2008-10-02

著者は 2002 年以来,「世界を不幸にしたグローバリズムの正体」,「人間が幸福になる経済とは何か」 そしてこの本という,一連のグローバリズム批判の本を書いている. これらはそのときどきのできごとをとりあげつつ,一貫してアメリカと IMF による 「グローバリズム」 のおしつけを批判している.

この本のなかでは,アルゼンチンが IMF の要求をはねのけて独自の経済再建を成功させた例がとりあげられている.それに対して IMF にしたがった国々は経済の低迷になやまされてきたという.

アメリカは浪費し赤字をたれながすことで世界経済の弱体化をふせぎ,「世界に奉仕」 してきた. しかし,アメリカはいつまでもそれをつづけられない (実際,サブプライム問題をきっかけにくずれた). 著者はそれにかわる体制を示唆している.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す@ [bk1]世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す@Amazon.co.jp

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サブプライム問題をメロンがつまったバスケットにたとえることのおもしろさに出版社が注目したことがこの本の出版につながったということだ. わかりにくいサブプライム問題をたとえ話でわかりやすくするのはけっこうだが,私にはかえって,よみにくかった. 昨年末の時点でのひととおりの話は書いてあるが,もともと本を書くためにあつめた情報ではないためか,つっこみがよわいようにおもう. 2008 年にはいってからの展開は書いてない.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: サブプライム逆流する世界マネー@ [bk1]サブプライム逆流する世界マネー@Amazon.co.jp

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2008-10-05

2007 年 10 月くらいの時点で,サブプライム問題とはなにか,これからどうなるのか,などについて書いている. 金融技術を 「悪用」 しサブプライム・ローンを証券化して売ることがモラル・ハザードにつながったこと,そこに 「レバレッジ」 という手法で元手の 10 倍の資金を運用するファンドがかかわって損失を 10 倍に拡大させたことなどである. わかりにくい専門的な議論をさけているのでよみやすいが,そのために本質がつかめなくなっている部分もあるようにおもう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: サブプライム問題とは何か@ [bk1]サブプライム問題とは何か@Amazon.co.jp

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サブプライム問題が発生したあとにおこった,金融商品の格付けに疑問がもたれたこと,レバレッジをつかって資金をふやす方法に疑問がもたれて資金があつめにくくなったこと,欧米での資金調達ができなくなったためにアジアや中東に有利な条件をしめして資金調達せざるをえなくなったことなどが書かれている. 前著 「サブプライム問題とは何か」 では解説されていなかった,証券化でつかわれた 「優先劣後構造」 という金融技術なども丁寧に解説されている. 今後,アメリカのやくわりが中国によってとってかわられるのか,日本はどうなるのか,などについても論じられている. 前著との重複はよくおさえられているので,あわせて読むとよいだろう.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: サブプライム後に何が起きているのか@ [bk1]サブプライム後に何が起きているのか@Amazon.co.jp

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日本語で書かれた一般向けのサブプライム問題に関する本のなかでは,もっとも専門性がたかい本だとかんがえられる. この問題はサブプライム・ローンの証券化を通じておこっているが,証券化というしくみじたいがわるいのではないということを強調している. その一方で,本の末尾では金融工学の弱点を分析してもいる. また,「レバレッジ」 や 「優先劣後構造」 など,証券化にかかわる概念も解説している. さらに,日本の住宅金融システムや証券化市場について解説し,サブプライム問題の日本への影響をさまざまな統計などをつかって分析してもいる. じっくり読めばサブプライム問題への理解がふかまるだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: サブプライム問題の正しい考え方@ [bk1]サブプライム問題の正しい考え方@Amazon.co.jp

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2008-10-08

この本は日本に独自の検索エンジンがないという話からはじまり,最後もそのはなしでおわる. そのあいだにいろいろな話がはいっている. しかし,読み終わってから本を見かえしてみても,なにが書いてあったのかおもいだせない. 書いてあることが中途半端だからではないだろうか. キーワードをひろってみても,「過去の亡霊」 とか 「IT への嫌悪」 とか,ピンとこないものがおおい. 終章では 「「まじめさ」 こそが,日本再生の手だて」 とあって,納得できる部分もあるが,なぜそれが手だてになるのかもよくわからない.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 日本消滅@ [bk1]日本消滅@Amazon.co.jp

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戦争ビジネスに関する本としては,戦争請負企業を中心としたものから個人の体験を書いたものまであるが,この本は両方をカバーしようとしている. 日本人がこの問題に興味をもつようになったきっかけはイラクで戦死した斉藤さんのニュースだったが,そこからはじめて,部隊の劣悪な環境,古代からはじまる歴史,アフリカやアジアの紛争地でのできごとなど,戦争ビジネスを概観するには適当な本だろう. 太平洋戦争やベトナム戦争に関しても,あまり知られていないエピソードがふくまれていて,興味ぶかい.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 戦争民営化@ [bk1]戦争民営化@Amazon.co.jp

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11 の章からなる本だが,各章は独立の論文であり,タイトルの 「民営化される戦争」 に関する章はおおくはない. 議論はあまりていねいとはいえず,裏付けが書かれていない記述もおおい. MPRI という戦争請負企業に関しては,クロアチアでセルビア人を 10 万人も殺害してしまったという噂も書かれている. 「噂」 と書いてあるからよいようなものだが,論旨が噂に影響されるのはどうかとおもう.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 民営化される戦争@ [bk1]民営化される戦争@Amazon.co.jp

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これが 「社会学」 であるのかどうか私にはわからないが,郊外に関するさまざまなエピソードを 5 つの章にまとめている. 新書なので印刷はあまりよいとはいえないが,団地などの写真が効果的に配置されている. 区別のつかない建物や部屋がならぶ団地に関するエピソードとして安部公房の 「燃えつきた地図」 や 「ウルトラセブン」 の 「あなたはだぁれ?」 という話がとりあげられているのが印象にのこった.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 郊外の社会学@ [bk1]郊外の社会学@Amazon.co.jp

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2008-10-14

2007 年 7 月に出版された本であり,この本が書かれたあとに急激に食糧価格が高騰した. この本は食糧価格の上昇を予測し,日本も対策をとるべきだと主張している. すなわち,国内の農地を利用しつくすこと,リサイクルを徹底すること,海外との連携を徹底することが必要だといっている. いまやさらにこれらの主張はおもみを増しているといってよいだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 食糧争奪@ [bk1]食糧争奪@Amazon.co.jp

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2008-10-15

レアメタル (希少金属) を中心に,世界で争奪戦をくりひろげる国や企業をとりあげている. 中心はレアメタルの主要な産出国でありながらアフリカなどから輸入している中国であり,低賃金,わるい労働条件,危険など,その悪評が執拗にかたられる. 日本では住友金属鉱山が積極的だというが,他国に負けるさまがえがかれている.

末尾では 「日本人が [中略] 話し合いを責任を持って行えば,少ない予算で短期間に成果を出せるだろう」 と書いている. この主張は理解できなくはないが,欧米や中国との対比はちょっと極端なのではないだろうか.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: メタル・ウォーズ@ [bk1]メタル・ウォーズ@Amazon.co.jp

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2008-10-16

この本のなかでは投資銀行と商業銀行がずっと対比されている. 証券化商品とレバレッジの技法によっておおきな収益をあげる投資銀行をうらやみ,そこにちかづこうとしながらも投資銀行にはなれない商業銀行. しかし,バブルが崩壊して投資銀行はつぎつぎにきえていった (この本が書かれた時点ではまだ一部をのぞいては存在していたが). 専門家である著者はプット・オプションなどの専門用語の解説もいれながら,こうしたことを組曲としてかなでていく. やはり金融のことは金融の専門家にかなでてもらうのがいい.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 投資銀行バブルの終焉@ [bk1]投資銀行バブルの終焉@Amazon.co.jp

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2008-10-17

紛争のタネにもなっている水にかかわる国家間の問題や日本における水の問題などについて書いている. 著者も日本人は水資源の問題には無関心になりやすいと指摘しているが,アジアの水問題に関しては日本が指導的なやくわりをはたすべきだと主張している. しかし,「湯水のように」 水をつかう日本人にそのやくわりがはたせるのだろうか?

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 地球の水が危ない@ [bk1]地球の水が危ない@Amazon.co.jp

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2008-10-21

世界の食料事情が逼迫するなかで,日本政府は未来を予測せず,過去の分析をもとに 「農政を転換する根拠はない」 といっている. 著者は,いまこそ政策を転換して,減反政策をやめて食料を大増産し,積極的な農家を優遇する政策をとるべきだと主張している. 私もこの本が国民の意識をかえ,食料自給率をたかめる方向に作用することを希望する.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 飢餓国家ニッポン@ [bk1]飢餓国家ニッポン@Amazon.co.jp

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2008-10-23

資産運用理論やデリバティブについて,最小限の平易な数式だけをつかって説明している. また,こうした理論には半分だけページをさき,のこりの半分で金融工学の歴史や著者ならではの経験をはじめとするさまざまな話題をとりあげている. サブプライム危機で問題になった住宅ローンの証券化についても平易に説明されている. たとえ数式をとばしても,えられるものはすくなくない.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 金融工学の挑戦@ [bk1]金融工学の挑戦@Amazon.co.jp

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2008-10-24

この本のタイトルには 「資源」 がふくまれている. たしかに石油のことは書いてあるが,他の資源についてはほとんど言及していないし,レアメタルの宝庫である中国に 「資源がない」 と書いているのは疑問がある.

いずれにしてもこれは経済の本ではなくて国際政治の本である. 日本が今後,パートナーとしてアメリカをとるか,中国をとるか,独立独歩でいくか,その選択の指針をあたえているといえるだろう.

しかし,著者はアメリカ生活がながく,日本人の感覚とはずれがあるようにおもう. 自民党が 3 つに分裂しているという日本の政治のとらえかたもアメリカ的であり,参考にはなるが,疑問である.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 資源世界大戦が始まった@ [bk1]資源世界大戦が始まった@Amazon.co.jp

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2008-11-03

現在のアメリカ経済の状況は 1929 年ごろの状況に似ているといわれる. 1929 年にニューヨークで株価が暴落し,大恐慌につながったということはよく知られているが,それがどのようにおこったのかはあまり知られていない. この本はそれを時間にそって追い,なにがまちがっていたためにどうなったのかを検証しようとしている.

不動産の問題が最初におこった点では現在の不況と似ているが,このときはそれは 1928 年までには収束し,その後,レバレッジをきかせた投資信託の過熱がおこっている. 現在の不況とはさまざまなちがいがあるので,この本を読んだからといって現在の不況にどう対処すればよいかがわかるとはいえないだろう. とくに,どうすれば恐慌をふせぐことができるかが最大の関心事だが,この本には 「大恐慌の原因は,いまだにはっきりしていない」 とある. しかし,それでも状況を比較してみる価値はあるだろう.

ひとつ興味をひいたちがいは,当時はコンピュータがなかったので,取引量がふえると処理がまにあわず,速報が何時間もおくれて人々の不安をかりたてる,また取引じたいもまちがいがふえるということだ. 現在ではコンピュータのおかげで状況がすぐにわかるので,すくなくとも株価に関してはまちがいやデマにふりまわされなくなったのは,おおきなちがいだろう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 大暴落1929@ [bk1]大暴落1929@Amazon.co.jp

つづく…

著者ソロスはサブプライム危機が単なる住宅バブルではなく,1980 年台から成長してきた 「超バブル」 崩壊のスイッチをいれ,1930 年代の大恐慌に匹敵する不況をもたらすことを警告している. 投資家は目先にとらわれがちだが,ソロスは経済だけにとらわれず,するどい目で世界をみているといえるだろう. ここには,まなぶべきものが多々ある.

しかし,この本の主要なテーマは 「再帰性」 であり,前半はその解説にあてられている. 「再帰性」 とは,現実が思考に影響し,思考が現実に影響するという双方向のつながりがあることを意味している. それが理解されていないことがさまざまな問題をひきおこしているという. そして,「再帰性」 が 「自己言及のパラドックス」 や量子力学の不確定性原理と関係があることをただしく指摘しつつも,それらにない点があることを主張している. しかし,実のところ,あたらしいことはないし,この本の後半を理解するうえで 「再帰性」 の概念は不要である. したがって,この本の前半は価値がなく,評価は下げざるをえない.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: ソロスは警告する@ [bk1]ソロスは警告する@Amazon.co.jp

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2008-11-07

タイトルからすると農協をどのように改革するべきかが中心テーマのようにみえるが,実際は大半のページが (2002 年) 現在の農協の問題点の指摘にあてられている. 巨大化してさまざまな事業をおこなうことの是非に関する議論 (是の部分もある),自民党との癒着,マスコミからのバッシングなどの問題がとりあげられている. 最後の章は 「「農協」 の時代」 と題されて,食料危機がちかづき安全性が問題にされるなかでの農協のやくわりがおおきいと主張している. バランスのとれた内容ではあるが,改革の方向に関してはキレがない.

評価: ★★★☆☆

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2008-11-10

1970~80 年代の全盛時代に大胆なデザインのラブホテルをつくりつづけてきた著者の原点は幼稚園のおまるだったという. 新風営法以降,大胆なデザインは規制されてラブホテルは衰退したが,それでも著者は ED になやむ夫婦や萌えキャラにしか興奮しない若者にラブホテルをすすめて感謝されているという. ここにも規制緩和が必要なのかもしれない.

評価: ★★★☆☆

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タイトルにだまされて買ってしまったが,検索の話はほとんど書いてない. 「クウキを読む」 ことへの批判が大半のページを占めている. 著者によれば,ひとがいうことに疑問をはさんだり批判したりすることが 「空気がよめない」 とみなされて対話が封じこめられる. それに対して,かつての日本では季節のことばのあいさつから一見無駄にみえる会話がかさねられてきた.

私には 「クウキを読む」 ことが現代日本固有の問題なのではなくて,会話の技術がおとろえた,ないし個人主義がひろまるなかでもっと欧米的な話術への変化の途上にあるだけであるようにおもえるのだが,この本はそういうことをかんがえるきっかけとしてはよいだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 検索バカ@ [bk1]検索バカ@Amazon.co.jp

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2008-11-18

原油価格が一時は 140 ドルをこえた第 3 次オイルショックをさまざまな統計や予測によって分析し,第 1 次,第 2 次のオイルショックと比較している. 数値的に把握することは重要だし,過去のオイルショックと比較することで,現在およびちかい将来どう対処するべきか,ある程度の指針をえることもできるだろう.

しかし,現在の経済状況においては,原油だけでなく金属資源や農産物の価格高騰や,サブプライム問題からはじまった巨大なバブル崩壊とそこからもたらされる世界不況など,さまざまな要因がからみあっている. それに対してこの本はほとんど原油とその周辺に話題をかぎり,統計や予測の数値に説明をくわえる程度の分析にとどまっている. 他の要因をかんがえない予測にどれだけの意味があるのだろうか?

私自身もそうだが,一部のエピソードをべつにすれば,この内容が一般の読者の興味をひくものだとはおもえない.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 第3次オイルショック@ [bk1]第3次オイルショック@Amazon.co.jp

つづく…

2008-11-27

さまざまな国や時代の物価や金利などがグラフによってしめされ,インフレーションの本質があばかれている. すなわち,過去のインフレーションが,まちがった金融政策によってひきおこされたことが論証されている. ハイパーインフレといえばワイマール時代のドイツが有名だが,第 2 次大戦後のハンガリーや 1970 年代以降のメキシコ,アルゼンチン,チリのインフレも論じられている.

しかし,これらはいずれも統計数値だけで論じられていて,なまの感覚に欠けている. インフレが金融政策によってふせげるものであるのなら,なぜこのようにはげしいインフレがくりかえされてきたのか,その理由が知りたくなる. しかし,この本はそれにはこたえてくれない.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 物価迷走@ [bk1]物価迷走@Amazon.co.jp

つづく…

2008-11-28

タイトルからは,目からウロコの話がつぎつぎにくりだされることを期待してしまう. しかし,実のところ,私にとってはすでにくずされている常識を確認する,また,ピンとこない話がならべられている,退屈な本でしかなかった. まだ 20 年前の常識にとらわれているひとには新鮮な本なのかもしれない.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: この国の経済常識はウソばかり@ [bk1]この国の経済常識はウソばかり@Amazon.co.jp

つづく…

2008-12-01

日本の政策は高齢者や団塊世代に有利であり高齢者対策は手厚かったが,若者対策は貧弱だった. この本はこうした世代間の配分の不公平をするどく指摘している. 「世代間戦争」 がはじまっていると著者はいう. 若者批判の本がおおいなかで,こういう視点から書かれた本は貴重だといえるだろう.

しかし,こういう現実を打破するためのさまざまな政策のアイデアがしめされているが,その実現性や効果は疑問である. また,若者問題以外の問題はとるにたらないという書きぶりだ (「平和か戦争か,右か左か,靖国参拝か謝罪かといった問題は,合理的に検討を加えれば容易に方向が定まる問題なのだ」 と書いている). このように視野狭窄していては,若者問題の解決の方向もみいだせないだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 若者を喰い物にし続ける社会@ [bk1]若者を喰い物にし続ける社会@Amazon.co.jp

つづく…

2008-12-05

ケインズの 「一般理論」 は難解だが,この本はそれをできるだけ平易に解説しようとしている. 単に解説するのでなく,その 「あやまり」 をただして,著者独自の 「不況動学」 をきずこうとしている. 小島寛之は Wired Vision の 「環境と経済と幸福の関係」 のなかでこの本をベタぼめしているし,Amazon の書評などでも評価はたかい.

しかし,ケインズにあやまりがあったとしたら,それは動学的な経済理論のむずかしさゆえであり,おなじような道具でそれにたちむかっている著者がケインズにくらべてとくに有利なところがあるとはおもえない. というわけで,この本にも疑問な点は多々ある.そもそも出発点となっている,ケインズが流動性の罠から投資の限界だけがきまるとしているのに対して 「不況動学」 ではそれが (投資の限界とは独立に (?)) 消費の限界もきめるとしていることからして理解できない. また,現在の不況との関係を把握したいが,さっぱりわからない.

この理論が 「動学」 だと主張するためには単に経済の均衡点をしめすだけでなくそこにいたる軌跡まできめられなければならないはずだが,それにはまったくふれていない. 金融工学のような精密な論理がなければ,ひとを納得させることはできないのではないだろうか.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 不況のメカニズム@ [bk1]不況のメカニズム@Amazon.co.jp

つづく…

2008-12-18

酒鬼薔薇聖斗事件以降,若者バッシングがさかんになったという. この本は若者バッシングの 「エセ科学」 性をあばき,徹底的に反論している. しかし,ここで批判されている本のおおくは,そもそも 「科学」 ではない. それを 「エセ科学」 といって批判するのは,いささか奇異な感じがする.

とはいえ,「教育再生会議」 などにおいて根拠のない議論にもとづいて政策の方向がきめられていくのは問題である. また,根拠も明確でないまま本を書き散らす日本の論壇は批判されてしかるべきだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 「若者論」を疑え!@ [bk1]「若者論」を疑え!@Amazon.co.jp

つづく…

2009-01-09

本書は厚生労働省が無理に医師をへらし,製薬会社や医療機器の会社には手厚く医師や病院にはきびしい政策を撮っていることを批判している. すこし意外だったのは,「医療を軽視する日本政府のあり方は,明治維新で決定的に」 なり,現在,崩壊の危機のなかにある国民皆保険制度の導入時から医療崩壊がはじまっているという指摘である. それでは日本にどういう制度をきずけばよいのか? この本のなかには解をみいだすことはできない.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 誰が日本の医療を殺すのか@ [bk1]誰が日本の医療を殺すのか@Amazon.co.jp

つづく…

2009-01-13

マンション屋から電話がかかってくることがおおい. 「マンションなどのセールスの手口とそれに対する感想」 という項目でそれを分析したが,最近は元気のないセールスマンがおおいようにおもう. なにが売りたいのか,なかなかわからない電話もおおい. そういうなかで,先日,大阪のセンチュリー 21 (Century 21) からかかってきた電話はみごとだった.

つづく…

2009-01-17

1 人の著者が書いたことになっているが,実際は 20 人くらいのひとが書いた (or 語った) 内容をまとめている. この本を読んでもフェアトレードとはなんなのかがかならずしもわからないが,ひとによってちがうさまざまなフェアトレードに対するかんがえかたを知ることができる. 私自身は 「消費者が満足してこその生産があるべきで [中略] 「かわいそうだから」 という気持ちで買っても,使わないでタンスにしまわれているのは果たしてフェアなのだろうかと考えてしまうのです」 という 山口 絵理子 のかんがえに共感する.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: フェアトレードの時代@ [bk1]フェアトレードの時代@Amazon.co.jp

つづく…

2009-01-20

現代の大学生や大卒で就職した若者たちと,そういう若者たちをおしえる大学教授や会社員,若者たちの親にきいた結果をまとめた本である. タイトルも内容も 「下流大学がわるい」 というトーンだが,すなおに読めば大学以前の教育や親の問題のほうがおおきいように読める. バカにされている若者が読めば気分がわるいだろうが,調査にもとづいた問題提起として価値がある. 「…さ」,「…ね」 などの表現をつかった文体は新書としてはいささか異様だが,これもタイトルとともに事態の深刻さをすこしやわらげる意図か?

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 下流大学が日本を滅ぼす!@ [bk1]下流大学が日本を滅ぼす!@Amazon.co.jp

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著者は産業医として若者の声をすなおにきくうちに,彼らをつかう側つまり会社側も彼らを理解せず,あつかいをあやまっていることを指摘している. これまでのやりかたをおしつけるのでなく,彼らにあわせたやりかたが必要だということを示唆している. しかし,具体的なやりかたをかんがえるべきなのは産業医ではなくて職場の上司たちである.

著者は 「したいこと」 にこだわる若者がおおいというが,彼らに対してはその姿勢を一端捨てよといっている. そうすることで将来はのぞみがかなう可能性もあるということだが,やはり元気がでない話ではある.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 勝手に絶望する若者たち@ [bk1]勝手に絶望する若者たち@Amazon.co.jp

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2009-01-22

「構造改革」 について論じるとき,戦後日本の経済成長とその鈍化や現在の人口減少などの社会変化について考察することは必須だろう. ところが,この本では小泉改革やその反転に関する政府機関のうごきなど,表層的なところしかみていない. 非正規雇用者や貧困の問題がいくら深刻だからといって,表面にあらわれたことだけをみて政策をみれば,判断をあやまるだろう.

評価: ★☆☆☆☆

関連リンク: 労働再規制@ [bk1]労働再規制@Amazon.co.jp

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年収が 「崩壊」 するなかで,どうやってくらしていけばよいか,著者は,はたらきかた,くらしかた,節約,資産運用など,さまざまな面から提案している. しかし,その内容には疑問がおおい.

たとえば,「ワークライフバランス」 についても論じているが,ワークライフバランスの意味すら説明していないし,「ワークライフバランス」 は,その [パートと正社員の] 中間のライフスタイルが実現できないと難しいという意味不明の記述ですませてしまっている.

ほかの部分も舌足らずでよくわからないことがおおい. カードでポイントをうまくためることをすすめているが,それでどのくらいの効果があるというのだろうか. 経済学者が書いた本としてはあまりにセコいのではないだろうか.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 年収防衛@ [bk1]年収防衛@Amazon.co.jp

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2009-01-26

著者は 「空気を読」 んでそれにしばられることが,さまざまな面でマイナスにはたらいていると主張する. それはそうだろう. しかし,テレビにでて空気にさからう発言をすると,抗議の電話が殺到して番組をおろされるという. それでも空気を読むべきでないといえるのだろうか.

しかし,そもそもこの本の論点のおおくは空気とは関係がない. インドや中国はもちろん,ベトナムでさえも日本よりはるかに給料の格差がおおきいという. 高額の給料をもらえるひとは 「空気読み」 ではないといいたいのだろうが,空気との関係はすこしもあきらかになっていない. むしろこれは著者の人生観や仕事観についての本である. それが役にたつばあいもあるだろうが,あまりに,おしつけがましすぎる.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 一流の人は空気を読まない@ [bk1]一流の人は空気を読まない@Amazon.co.jp

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2009-01-28

グローバル化がすすむなかで,日本人も日本固有の不適切なやりかたをつづけることはできない. この本は世界のなかでよりよいやりかたをみつけて,それをとりいれることをすすめている. それを 「世界標準 (グローバル・スタンダード)」 と呼んでいて,実際,ひきあいにだされているのはアメリカやイギリスであることがおおい.

アメリカやイギリスに範をとるということは 「新自由主義」 をすすめるようにもうけとれるが,この本の論点はかららずしもそういうことではない. 「新自由主義」 がダメになったとしても,アメリカやイギリスからまなぶべきことはおおい. それを率直にうけとるべきだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 世界標準で生きられますか@ [bk1] (単行本), 世界標準で生きられますか@ [bk1] (文庫), 世界標準で生きられますか@Amazon.co.jp (単行本), 世界標準で生きられますか@Amazon.co.jp (文庫).

つづく…

第 1 章では,現在の経済状況は主流の経済学では想定していなかったこと,バブルの際には通常の市場のメカニズムがはたらかないが,これまでそれを経済学があつかってこなかったことを指摘している. そして,「バブルの経済学」 を構想している. また第 2 章では,竹中平蔵らによる構造改革をことばをきわめて批判し,そうではなく教育投資や環境エネルギー革命などによって成長をめざすべきだと主張している. 第 3 章では格差とインセンティブの問題をあつかっている.

著者は主流の経済学を批判し,それにもとづく政策を批判している. 著者自身,「異端」 であることを認識している. 批判するのはけっこうだが,主流に対抗できるだけのものがあるのだろうか. この本では格差や医療や諮問機関など,現在の政治経済の問題点をつぎつぎにあげて批判しているが,それらがみな経済学者のせいだというのだろうか? 竹中のように政策をになえないもののひがみにしか,きこえない.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 閉塞経済@ [bk1]閉塞経済@Amazon.co.jp

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「思いやり格差」 ってなんだろうというのが気になって買ってしまった. 学生にきいたところでは,思いやりをもつひとともたないひとに 2 極分化しているとこたえたひとが 5 割,それが 「思いやり格差」 なんだという. しかし,それ以外には 「格差」 が拡大しているという証拠はあげられていない.

問題なのは格差ではなくて,「思いやり」 をはぐくむのがだいじだということだ. そのために本書ではいろいろな提案をしているが,そのなかでも重視しているのがボランティアだ. それ以外では宗教的な要素がつよくて違和感を感じるが,思いやりをはぐくむことに関しては異論はない.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 思いやり格差が日本をダメにする@ [bk1]思いやり格差が日本をダメにする@Amazon.co.jp

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2009-01-29

2008 年 12 月時点での世界経済の状況を,アメリカ,ヨーロッパ,新興国,日本にわけて,さまざまな統計をもとにして論じている. 日本の章には,米国がデノミネーションを実施して,日本などが保有する米国債の価値が 1/10 になるかもしれないという,おそろしい話まで書いてある.

時間がたっても記録としての価値はのこるだろうが,基本的には時事的な内容であり,出版するまでに 1 月ぐらい要する新書というメディアにあっているのかどうか,いささか疑問がある.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 恐慌第2波@ [bk1]恐慌第2波@Amazon.co.jp

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著者は,かつては 「まじめな国民」 だった日本人が,働きすぎはカッコわるいとか,ガリ勉はよくないといったかんがえがひろがって,ふまじめになってしまったという. 「ふまじめ」 の例としてマンションの耐震強度偽装事件や食品偽装事件などがあげられている.

しかし,こういう事件や著者の印象をあげられても,日本人がふまじめになったのかどうか,容易にわからないだろう. 耐震強度偽装事件の容疑者はコストカットのきびしい要求にある意味で 「まじめに」 こたえようとした結果として事件をおこしたようにもおもえる. これらの変化は日本人の気質が変化したためにおこったのではなくて,「まじめ」 な日本人を追いつめる経済・社会の状況からうまれているのではないだろうか.

実際,著者も日本人にウソつきがふえたように感じるが,その原因はウソがばれやすくなったから (であって 「まじめの崩壊」 が主因ではない) だとみとめている. また,耐震強度偽装事件に関しても,インチキはむかしからおこなわれていたことをみとめている. 拝金主義や医療崩壊についてもふれているが,いずれも納得できる議論ではない. エピソードとしてはいろいろおもしろい内容をふくんではいるが,砂上の楼閣といってよいだろう.

評価: ★☆☆☆☆

関連リンク: まじめの崩壊@ [bk1]まじめの崩壊@Amazon.co.jp

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2009-02-06

新自由主義に席巻されたアメリカの経済学を信奉してきた著者が,そういう過去を自己批判する. 最近はつよく批判される小泉政権の政策については,郵政民営化で公共事業に自動的に資金がながれるしくみにくさびをうった点を評価しながらも,いなかの特定郵便局まで民営化して採算重視することへの疑問をのべている.

しかし,著者の議論はそれだけにとどまらない. 格差や貧困ををうみだし環境を破壊する近年のグローバル資本主義を批判するだけでなく,一神教であるキリスト教にささえられた米英の資本主義や土地の私有制などにもメスがいれられる. その一方でグローバル資本主義を拒否したブータンとキューバに羨望の目がむけられる. また,自然との共生を重視してきた日本人の思想をみなおし,「商人道」 から発した日本の商慣習を評価し,日本の自動車産業の成功の理由をそういうところにみている. また,日本 「再生」 のためにも,さまざまな提言をしている.

しかし,その一方で,批判した資本主義を 「歴史を逆行させることはおそらくできないだろう」 というように,かんたんにみとめてしまっている. 資本主義のルーツにまでさかのぼった議論をするのであれば,改良主義的な提言よりも,もっと根本的なみなおしの議論がほしかったようにおもう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 資本主義はなぜ自壊したのか@ [bk1]資本主義はなぜ自壊したのか@Amazon.co.jp

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2009-02-12

著者は,日本の環境政策のおくれた部分を批判し,非正規労働者と過酷な労働を増加させセイフティネットを崩壊させた政策を批判し,「名ばかりの」 男女平等を批判し,日の丸・君が代を押しつけて教育の多様性をみとめない政策を批判し,立法・行政の監視機能をうしなった司法を批判している. そして,こうした後進性をなくして真の先進国になるための提案をしている.

批判されている点にはもっともなところが多い. しかし,批判のために都合のよい材料だけをあつめている印象だ. さらに,議論は極端にはしり,「天皇制は,廃されるべき」 というような,多数の日本人にはうけいれられないであろうことを断定している. また,「数字の三桁打点に至っては,むしろ数字を読めなくする悪意だと言わざるをえない」 というのも,妥当性を欠く議論だろう (四桁打点の習慣があるわけではないのだから).

著者は急進的な議論をしている反面,「先進国」 であるかどうかを問題にしている. しかし,そもそも 「先進国」 という概念じたいが,みなおすべき時期にきているのではないだろうか. 本書の議論はそういう根本的な部分にきりこむものではない.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 「日本は先進国」のウソ@ [bk1]「日本は先進国」のウソ@Amazon.co.jp

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小泉政権下でずっと重要な位置をしめていた竹中平蔵が金融担当大臣だった時代をふりかえっている. 郵政民営化や道路財源に関する 「戦争」 に関してはおおくの文章があり,1 冊ならず読んでいたが,りそな,UFJ,ダイエーなどに関するいきさつは,よく知らなかった. 本書はそこで水面下でおこなわれていた熾烈なたたかいをあきらかにしてくれる.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 竹中平蔵の戦争@ [bk1]竹中平蔵の戦争@Amazon.co.jp

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2009-02-19

小泉政権下での竹中大臣のさまざまな挑戦を挑戦者自身がえがいている. 個々の問題をもっとくわしくあつかった本はほかにあるが,金融改革,郵政民営化,政策プロセスの改革など,全部をとおしてみるにはこの本を読むのがよいだろう. 竹中大臣がただしかったかどかはより客観的にみる必要があるだろうが,彼自身がなにをかんがえ,なにをやってきたかを知ることができる.

(実名はあまり書いてないが) 批判されているひとがおおいなかで,北朝鮮訪問もふくめて,小泉首相には最大限の賛辞が書かれている. また,自民党税調のドンといわれた」山中貞則に対して 「政界のドンと言われる人の志の大きさと人間の奥深さを,様々な形で学ばせてもらった」 というのも興味ぶかい.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 構造改革の真実@ [bk1]構造改革の真実@Amazon.co.jp

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2009-03-14

「思考停止」 をタイトルにふくむ本が 6 冊はあるが,その意味はさまざまである. この本では法令をはじめとするさまざまな規則をその本来の目的などかんがえずに盲目的に 「遵守」 しようとすることをさしている. 最初にとりあげられている食の 「偽装」,「隠蔽」 の問題においては,実質的には問題がないにもかかわらず規則を 「遵守」 していなかった食品企業をマスコミがバッシングし,そのために食品企業のほうもむだをだしても厳格に規則を 「遵守」 せざるをえなくなっている. 著者はさらに,同様の問題が他の業界についても,また司法や行政についても指摘している.

著者はこうした問題の解決策もしめそうとしているが,それは抽象的だったり,すぐに実現できないものだったりしている. 問題がおおきいだけに,容易に解決策がしめせるものではないということだろう. それは読者にあたえられた課題である.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 思考停止社会@ [bk1]思考停止社会@Amazon.co.jp

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2009-03-18

タイトルをみて,おもわず買ってしまった. しかし,この話題は最初の 20 ページくらいをしめているだけである. 著者は権力者にはありとあらゆる罵詈雑言をあびせるが同士にはやさしい. それは単に敵と味方をくべつして敵だけを攻撃しているようにしかみえない. 彼自身にはそこに論理があるのかもしれないが,それがこの浅薄な文章からは読者に十分にはつたわってこない.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 佐高信の政経外科XI@ [bk1]佐高信の政経外科XI@Amazon.co.jp

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2009-03-26

2 年ほど前にグアムに行った. 本書でも紹介されているモール内の博物館には行ったが,ガイドブックにも書いてないので,グアムの歴史につながる他の場所には行かなかった. それは,うすっぺらな旅行だったようにおもう. 本書はそういう 「かくされた場所」 をみせてくれる. レジャーをたのしむ日本人は知りたいとおもわないことかもしれない. しかし,現在のグアムの問題点までカバーしている本書は,グアムを観光するときにも 「厚み」 をあたえてくれるのではないだろうか.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: グアムと日本人@ [bk1]グアムと日本人@Amazon.co.jp

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よりおおくのアジア人を日本にうけいれる必要が生じてきた現在,アジア人やアジアの文化を理解する必要はたかまっているといえるだろう. 著者は韓国人と日本人とのあいだにもおおきなへだたりがあることを指摘し,アジア人だから容易にわかりあえるというかんがえを戒めている. また,「カルチャー・ショック」 の深刻さについても書いている. アジアだけでなく,ベルサイユ宮殿の 「トイレの謎」 など,欧米とのちがいに関しても興味ぶかいエピソードをとりあげている. 内容は系統的というよりはエピソード的だが,それゆえにおもしろい.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: アジア人との正しい付き合い方@ [bk1]アジア人との正しい付き合い方@Amazon.co.jp

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2009-03-29

著者は日本中に 「思考停止」 したひとがはびこっているのをうれいている. 藤原正彦の 「国家の品格」 を 「思考停止のススメ」 と評し,「ものを考えない」 小泉純一郎にだまされた国民も思考停止しているといい,食品偽装に関しては 「日本の食品には,真実性のかけらもない」 と評している. こうなった原因のひとつとして,思考をきたえない 「偏差値教育」 をあげ,「少年ジャンプ」 もヤリ玉にあげている. 中国,インドをはじめ日本以外の国では学生が必死に勉強しているなかで日本の学生だけが意欲をうしなっていることに危機感をもっている.

興味ぶかい点のひとつは,「いわゆる教養主義は 1970 年前後に消滅し」,「最近では世界のエグゼクティブと言われる人間でも,伝統的な教養をあまり知らない」,だから 「古典的教養」 を復活させるのでなく,ネット社会重視の 「21 世紀の教養」 を身につけるべきだといっていることである.

この本の内容にはうたがわしい点も多々ある. 「思考停止」 してそれを信じるのは著者がもっとものぞんでいないことだろう. 刺激的な著者の意見を自分のあたまでかんがえなおせば,えられるものはすくなくないだろう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 「知の衰退」からいかに脱出するか?@ [bk1]「知の衰退」からいかに脱出するか?@Amazon.co.jp

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2009-04-04

朱鎔基は中国に市場経済を根づかせ 「資本主義を不言実行」 した,もっとも注目するべき指導者である. にもかかわらず,日本ではあまり有名だとはいえないのは,著者によれば日本のマスコミが 「痴呆状態」 だったからだという. それでも 1998-2000 年ころには日本でも朱鎔基をとりあげた本が何冊か出版されていた. しかし,私自身,最近まで朱鎔基に注目していなかったので,これらの本も目にとまっていなかった.

江沢民が中国のナンバーワンだったことは,もちろんよく知られている. 江沢民がみいだされたのは天安門事件がおこったとき上海ではおおきな混乱をおこさずにすんだためだというが,それも朱鎔基がいたからだという. 市場経済化にあたっても地域ごとに具体的な指示をだし正確な数値の報告をもとめたという. また,自分がだした指示にあやまりがあればすみやかにそれをみとめて補足したという.

私はまだ朱鎔基に関する本をこれ 1 冊しか読んでいないので,これが彼を知るのに最適かどうかはわからない. しかし,この本を読めば朱鎔基がどういう人でありどういう経済政策を実行したのかをいろいろな角度から知ることができる.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 「朱鎔基」@ [bk1]「朱鎔基」@Amazon.co.jp

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2009-04-23

シリコンバレーのベンチャー・キャピタリストである著者は,ベンチャーを殺すアメリカ型資本主義をさまざまな点で批判し,あたらしい資本主義をつくるべきだと書いている. サブプライム問題が発生してからはアメリカ型資本主義を批判する声はたかまったが,それ以前に書かれた本書は著者の目のたしかさを示しているといえるだろう.

しかし,それではこれからはどんな技術や産業がさかえるのか? 著者はそれを自身が提言している PUC (パーベイシブ・ユビキタス・コンピューティング) という概念にもとめ,それをささえるものとして IFX 理論 (インデックス・ファブリック理論) をあげている. しかし,それらは現在でもあまり知られていないままであり,今後ひろがるようにもおもえない. むしろ,本書ではまったくふれていない 「知識」 や 「知能」 の問題 (Web 3.0) がキーになるのではないだろうか?

著者は現在の情報機器のあいだでデータ構造がことなり互換性がないことを問題点としてあげている. しかし,とくに銀行の合併などで問題になる大規模なシステムの 「非互換性」 をもたらしているのは概念や文化のちがいである. こういう人間的な問題をかんがえなければ,将来有望な技術や産業をいいあてることはできないのではないだろうか?

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 21世紀の国富論@ [bk1]21世紀の国富論@Amazon.co.jp

つづく…

2009-04-26

プランターで農業のまねごとをしているが,平日はほとんどめんどうをみることはできないし,知識もかぎられている. この雑誌をみるとプロにはとてもかなわないということがよくわかる. この雑誌をみることによって,また農業のまねごとをすることによって,ほんとうの農業がどういうものであるかをかいまみることができるだろう. そうやって眼力をやしなって農業人をみれば,ホンモノかニセモノかもただしくみぬけるようになるだろう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 現代農業 09/5@ [bk1]現代農業 09/5@Amazon.co.jp

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2009-04-28

なにごとも最後まであきらめない著者のすごさに圧倒される. あきらめないことは重要である. しかし,それによってほとんどの困難をのりきって成功させてきたのにはいろいろ理由があることが,この本を読めばわかってくる. そのひとつは人脈だ. 有名人をふくむ,ひとの信頼をえることが重要な要素であるようだ. 著者とおなじようにふるまうことはできないだろうが,「爪の垢を煎じてのむ」 に値する.

評価: ★★★★☆

関連リンク: コンサル成功物語@ [bk1]コンサル成功物語@Amazon.co.jp

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2009-04-29

論旨はおなじ著者による 「21 世紀の国富論」 にちかい. 崩壊した金融資本主義を批判し,ベンチャー的ものづくりの価値を主張している. 著者はあたらしい産業には 「コア技術」 が必要だと主張しているが,自身が提言している PUC (パーベイシブ・ユビキタス・コンピューティング) という概念や,それをささえるものとして IFX 理論 (インデックス・ファブリック理論) からうまれることを期待している. Web 2.0 に関しては 「Web での第 2 世代のサービス」 としていて,その無理解にはおどろかされる. そして,開発投資の対象をきめるのに各分野の専門家がえらんだ企業に優先的に投資するしくみを提案している. マイクロクレジットというような途上国における起業のしくみや日本の途上国援助にもふれている.

タイトルの 「新しい資本主義」 とは 「公益資本主義」 だという. それをささえる経済学も組織的に研究しているというが,経済学がつくれたからといってそれを実現させるのは困難なことだろう. かかげた理想には賛同するが,説得力がある議論だとはいえない.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 新しい資本主義@ [bk1]新しい資本主義@Amazon.co.jp

つづく…

2009-05-02

著者は (経営) コンサルタントであり,顧客である企業の身になって提案やプロジェクト管理をしてきた. そういう著者からみると現在の 「クラウド・コンピューティング」 のさわぎはシステムインテグレータなどが企業をふりまわしているようにみえる. 自社にとって真に必要なものはなにか,それをクラウド・コンピューティングによって実現できるのかをみきわめる必要がある.

そのため,著者はクラウド・コンピューティングとはなんなのか,1960 年代の TSS (タイム・シェアリング・システム) にまでさかのぼってみきわめようとする. また,クラウド・コンピューティングの技術を分析し,さまざまな仮想化との関係も論じている. しかし,一般の企業ユーザにはこうした技術を理解する必要はないということもいっている.

Google と Amazon についてはかなりのページをさいて分析しているが,ほかに SAP, Oracle, IBM, 日本の各キャリアなどの企業の動向も分析している. 「クラウド・コンピューティング」 が混乱した状況にある以上,かんたんな処方箋はない. こうしたさまざまな知識をえて総合的に判断することが経営者やコンサルタントなどには必要とされているのだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: クラウドコンピューティングの幻想@ [bk1]クラウドコンピューティングの幻想@Amazon.co.jp

つづく…

2009-05-12

たまにしか日本にかえらないというバクチ打ちの著者が,石原慎太郎を斬り,愛国心,教育,性,ドラッグ,死刑,人種差別など,さまざまな問題を論じていく. これで,日本のなかしか見ていない読者は開眼されるのかもしれない. しかし,私にはどうも迫力が感じられない. 退屈な文章だ. チンピラがわめいているようにしか,きこえない (失礼!). めったに日本にいないからズレているということだろうか.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 越境者的ニッポン@ [bk1]越境者的ニッポン@Amazon.co.jp

つづく…

2009-05-23

グリーンピースやシー・シェパードなどによる過激な環境運動・動物解放運動の背景として,アメリカの 「正義のためには暴力も辞さない」 思想があることを論じている. 「アメリカの内なるテロ」 がこの本の主題だが,ブッシュが外にむけた暴力も根はおなじなのではないだろうか.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: エコ・テロリズム@ [bk1]エコ・テロリズム@Amazon.co.jp

つづく…

2009-05-28

元気がなくなった日本を再生させるにはどうすればよいか? 著者は問題点を分析し,再生の道をさぐっている. ひとをそだてるところにひとつの重点があるが,もうひとつの重点は農業や工業 (モノづくり),IT 産業などに関する戦略をしめしている. そこにはいろいろなアイデアがもりこまれているが,実現性はよくわからない. 終章では,もはや GDP では競争できないところから,GCP (Gross Comfortable Product) という概念を提案しているが,GDP とはちがって数値的に定義されていないので,これはあまり意味がないだろう. 積極的ではあるが,いささか,からまわりしているという印象をぬぐえない.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 日本再生の戦略@ [bk1]日本再生の戦略@Amazon.co.jp

つづく…

2009-06-28

キレるのはふだんおとなしくて文句をいえないでいるためだとおもいがちだが,著者はそうではなくて,キレるひとはそもそもがまんしないひとなのだという. 「見て見ぬふりをしない人」,「泣き寝入りをしない人」,「いきなりトップにメールする人」 など,さまざまなタイプがとりあげられている. がまん 「しない」 のではなくて,いきなり怒りが爆発するからがまん 「できない」 のだろう.

著者はこの本のタイトルにあるように 「なぜ」 キレるのか,どうすればよいのかもかんがえてはいる. しかし,まだよくわからないというのがホンネであり,理由も対策もこれからだということだろう. しかし,すくなくともなにがおこっているかをよく知ることが第一であり,そこにこの本の価値があるというべきだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: キレる大人はなぜ増えた@ [bk1]キレる大人はなぜ増えた@Amazon.co.jp

つづく…

2009-07-30

日本では個人も組織もリスクをとろうとしない. しかし,著者は,もっと積極的にリスクをとったほうが停滞をぬけだして,よりよい方向にむかうことができると主張する. そのこと自体にはまったく賛成する.

しかし,タイトルからわかるように本書はおもに個人にリスクをとることをすすめる本である. 組織のことにページをさけばさくだけ,個人としてはどうしてよいのやら,わからなくなる. 十分な情報があたえられていないので,「本書をきっかけに,[中略] ちょっとだけリスクを意識し,リスクを分析し,リスクを取ってみてください」 といわれても,とまどってしまうだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 会社に人生を預けるな@ [bk1]会社に人生を預けるな@Amazon.co.jp

つづく…

2009-08-26

この種の本にはよくあるが,「バカ」 を 「理系バカ」 と 「文系バカ」 とに無理矢理わけようとしている. たとえば 「論理的な考え方ができない人」 は 「文系バカ」 だとしているが,それは 「文系バカ」 ではなくて,ただの 「バカ」 だろう.

しかし,「文系」,「理系」 のくべつはともかく,自分がこの本でとりあげられいる 「バカ」 のようなふるまいをしていないかどうか,反省材料になるのはたしかだ. それと,この本の効用はちかくにいる 「バカ」 に寛容になれるということにもあるのではないだろうか. つまり,この本を読めばどういう 「バカ」 におちいりやすいかがわかるからだ.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 理系バカと文系バカ@ [bk1]理系バカと文系バカ@Amazon.co.jp

つづく…

2009-08-29

日本の農業が世界経済のなかでうまくやっていけるにはどうすればよいかを論じている.企業参入の障壁をなくし,ビジネスモデルをくふうする必要があるというのはそのとおりだろう.日本のコメの価格をアメリカ以下にする必要があり,それは十分に可能だという.最近は飼料米の生産がふえているが,それもコスト的になりたつという.その根拠が十分には書かれていないのでまだ信じられないが,きくに値する意見である.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 日本の農業は成長産業に変えられる@ [bk1]日本の農業は成長産業に変えられる@Amazon.co.jp

つづく…

2009-09-11

小泉郵政改革に反対する立場の議論である. 郵政や道路公団の民営化だけでなく,国鉄,電電公社,専売公社の民営化も批判的に再検討している. これら三公社の民営化に関しては累積赤字のツケを国民にまわしたことを批判している. しかし,そうしないで公社のままだったら,さらに累積赤字がつみかさなって,もっとひどいことになっていたのではないだろうか? これらの民営化に関する論点を提供している点では価値があるが,読者もこの本を批判的によむべきだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 民営化で誰が得をするのか@ [bk1]民営化で誰が得をするのか@Amazon.co.jp

つづく…

2009-09-13

郵政民営化がはじまってまもない頃に書かれた本である.そのため,2/3 くらいは郵政公社と民営化による労働問題の告発などにあてられているが,大半は民営化以前の話題だ.その意味ではタイトルからはずれている.のこりの 1/3 は宅配便や公的機関による派遣業者への委託がひきおこしている労働問題などをあつかっている.つまりこの本は民営化をあつかっているのではなくてワーキングプア問題をあつかっていることになる.深刻な問題であることはまちがいないが,焦点がぼけてしまっているのが惜しい.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 民営化という名の労働破壊@ [bk1]民営化という名の労働破壊@Amazon.co.jp

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2009-09-30

7 つの講演を大幅に改訂してまとめたという.それぞれの講演にはひかる部分もあり,また編集によって本としての体裁をつけようとしてはいるが,やはり章ごとにバラバラだという印象がぬぐえない.1 冊の本としてのまとまりや深さという点では,書き下ろしの本にはかなわない.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 大激震@ [bk1]大激震@Amazon.co.jp

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2009-10-19

副題として 「世界一 IQ が高い町の 「壁なし」 思考習慣」 がカバーに書いてあるので,シリコンバレーの思考の特徴を分析しているのかとおもって,読んでみた. しかし,そこにはバラバラなエピソードがならんでいるだけであり,そこから思考習慣を抽出するには,読者にかなりの負担がかかる. ちょっと表紙にだまされた感じだ.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?@ [bk1]なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?@Amazon.co.jp

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2009-10-20

IMF の管理下におかれたとき以来,韓国は 「超格差社会」 になった. もともと日本とはちかいところもあるが,ちがいもいろいろあった. その差がさらに拡大した.そういう,日本とちがうところを,もともとのちがいも IMF 危機以来のちがいもふくめて,この本は解説している.

「超格差」 に対しては韓国のほうがより批判されてしかるべきだろうが,それ以外の点については,はたして韓国と日本のどちらがフツーなのか,かならずしもわからない. この本では問題点のほうがおおくとりあげられているが,それがはたして公平なのかどうかは私にはわからない.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 超格差社会・韓国@ [bk1]超格差社会・韓国@Amazon.co.jp

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2009-10-29

文化における 「ノイズ」 がテーマになっているが,「サブカルチャー」 ではなくて 「ノイズ」 ということばをもちだした意味はよくわからない. 「ノイズ」 ということばで,いままでにない概念を表現しているわけではないようだが,いわゆる 「サブカルチャー」 が死んだあとも生きのこっているものということか.

この本を読むと頭の体操にはなる. しかし,この講義じたいがノイズでしかないようにおもえる.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: ノイズ文化論@ [bk1]ノイズ文化論@Amazon.co.jp

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2009-11-10

著者は日本人は悲観的になりすぎている,ほんとうはそれほど悲観するべき状況ではないということを主張している. そして,日本ではエリートより大衆が未来をひらこうとしているという,常識と 「真っ向から対立する」 議論を展開している.

オリジナルなかんがえを主張するのはよいことだ. しかし,さまざまな論点をもちだし,このかんがえをうらづけるためにいろいろな統計をもちだしてはいるものの,論理は薄弱だ. きちんと論理が展開できないのは,やはり仮説に問題があるからだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 格差社会論はウソである@ [bk1]格差社会論はウソである@Amazon.co.jp

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2009-11-14

この本は生命保険の内容をあつかうのでなく,セールスマンがどうやって客を説得するのか,わるくいえばダマすのか,そのさまざまな手口を分析している. ダマされないためにはこの本をよんでおくとよいだろう. といっても,オレオレ詐欺と同様に,知っていてもダマされてしまうのをなかなか,ふせげないのだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 生命保険の「罠」@ [bk1]生命保険の「罠」@Amazon.co.jp

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ちかごろの大前研一の本はグチっぽい.グチをよまされても足しにはならないが,グチりたくなる状況からぬけだすヒントはいろいろとつめこまれている.藤原正彦の「国家の品格」を「思考停止のすすめ」と評しているが,たしかにこの本を読んでよろこんだひとは反省したほうがよいのではないかとおもう.この本を読んで共感した部分があれば,いまの状況からぬけだすように,自分の行動をすこしずつかえていくのがよいだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 「知の衰退」からいかに脱出するか?@ [bk1]「知の衰退」からいかに脱出するか?@Amazon.co.jp

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タイトルは極端にすぎるが,この本では日本をふくむ世界 9 カ国をとりあげてその 「国家モデル」 (経済モデル) を分析して,日本のモデルのすぐれた点を指摘している. ここでいう 「国家モデル」 だけで他国がダメで日本がよいと結論づけるのは乱暴だが,比較・分析の視点としてはおもしろい.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 繁栄する日本@ [bk1]繁栄する日本@Amazon.co.jp

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2009-11-28

タイトルにだまされた. これからどうすればチャンスがつかめるか,そのヒントがえられるのではないかと想像したが,なにがどうチャンスなのか,わからずじまいだ. たしかに著者たちは 100 年に一度の経済状況でもうまくやっていけるのかもしれない. しかし,この本の読者はかれらからまなぶというよりは,自分でかんがえなければならないことを知るだけだろう.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 100年に一度のチャンス@ [bk1]100年に一度のチャンス@Amazon.co.jp

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2009-11-30

タイトルは意味不明だが,内容はアキバのオタク文化をよくとらえている. 前半を読んでいるうちは最近のアキバの話だけでおわってしまうのかとおもっていたが,電気街の歴史や鉄道博物館,アキハバラデパートなどについても後半に書いてある. もっとふるくからの歴史のあるまちではあるが,新書としてはこの程度でよしとするべきなのだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: アキバが地球を飲み込む日@ [bk1]アキバが地球を飲み込む日@Amazon.co.jp

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2009-12-03

著者は世界をあるきまわって,日本発の 「カワイイ」 がどれだけ浸透しているか,使用所たちがなにをかんがえているかをこの本にまとめている. そのひろがりはおどろくほどであり,興味ぶかい.

しかし,この本でのべているのは現象だけであり,なにがそうさせているのか,なにが背景にあるのかといった疑問にはこたえてくれない. 本質を把握しないまま不況克服に利用しようとしても,かえってカネをもっていかれてしまうのではないだろうか.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 世界カワイイ革命@ [bk1]世界カワイイ革命@Amazon.co.jp

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2009-12-05

ハーバードの教授である著者が日本の高校などで丹念にききとり調査をおこなってまとめた日本人へのメッセージである. かつて日本の若者は 「場」 のなかで就職し昇進してきた. つまり,高校を卒業すると就職先が斡旋され,就職先でも年功序列にしたがっていればよかった. しかし,いまやそういう 「場」 は崩壊してしまった.

変化してしまった日本社会のなかで若者とその周囲のひとたちはどうすればよいのか? 著者は 4 つの提案をしている. そのなかには,周囲のひとがもはや 「場」 が存在したときの生き方ができないことを悟るべきだということもあり,アメリカ社会におけるようなウィークタイズを強化するべきだということもある. 4 つともアメリカ社会が解決のヒントになっているようだ.

アメリカなどからまなべばそれで問題が解決するのかどうかは疑問だ. しかし,すくなくとも日本人にはみえにくい部分もふくめて,するどい分析をしているところにこの本の価値がある.

評価: ★★★★★

関連リンク: 失われた場を探して@ [bk1]失われた場を探して@Amazon.co.jp

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2009-12-20

あとがきに 「筆者は [...] 本書の内容のかなりの部分を占める科学史や科学論,技術史については全くの素人であり,[...] 筆者のこれらの分野における知見は,自分の研究者としての問題意識から手の届く文献を興味本位に渉猟した結果にすぎない」 とある. これを読んで 「だまされた」 とおもってしまった. この表現は謙遜ともみられるが,この本を読んでいくうちに感じていた疑問がこれでとけたともいえる.

日本人が 「理論」,「システム」,「ソフトウェア」 によわい,それが日本の工業や工学の弱点になっているというのは,たしかにそうだろう. しかし,これら 3 つをまとめて論じるのがはたしてただしいのだろうかという疑問がある. 「システム」 だけをとっても,古典的な制御理論であつかってきたようなカッチリしたシステムと,いわゆるソフト・システムとではおおきなちがいがある. トヨタの成功はソフト・システム的な方法論で日本の企業が成功してきたことのあかしだろう. 「ソフトウェア」 に関しても,著者はその数学的な性質を重視しているが,おおくのソフトウェアの生産において数学はそれほどやくだってはいない. 数学や論理にもとづくソフトウェア生産がこころみられてはきたが,成功していない.

そうしてみると,この本の論点はおおくがまとはずれだとおもえる. そうなってしまったのは,やはり 「文献を興味本位に渉猟した」 結果であるようにおもえる.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: ものつくり敗戦@ [bk1]ものつくり敗戦@Amazon.co.jp

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2009-12-30

著者は技術経営の専門家だ. 技術経営の本というともっとアタマ・デッカチ (理論中心) の本を想像するが,この本では各章のタイトル (「法則」) はスローガン的になっているものの,内容は具体例に徹しているので一般向きだ. そして具体例を 「スローガン」 にうまくむすびつけている. しかし,具体例中心であるために読者が自分の仕事にこの本の内容をいかすのはむずかしくなっているともいえるだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 理系の企画力@ [bk1]理系の企画力@Amazon.co.jp

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2010-01-26

NHK で放送された,ネット・コミュニティを自由につかいこなす若者たちに関する番組からうまれた本である. 番組をさきにみたせいもあるが,番組とくらべると印象がうすい. こういう若者たちの存在をしらなかったひとが読めばインパクトがあるのだろうが,もっといきいきした文章が書けるとよかったようにおもう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: デジタルネイティブ@ [bk1]デジタルネイティブ@Amazon.co.jp

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2010-02-02

5 章で構成されるこの本の 4 章までを暗澹たるおもいで読んだ. 大学教員になって食っていけるようになるためには,師事するに値する教授にとりいってイエスマンになり,チャンスをつかむことが必要だ. 大学ならどの世界でもそうというわけではないが,そういう 「白い巨塔」 のような世界はいまもあるのだろう. そういうものにすがらなければ食えない時代になったということだろう. しかし,5 章にはどんでん返しが待っている. 4 章までに書かれた現時点での解にとってかわれる解にはなっていないが,もっと本質的な解にせまろうとしている. もしもこの章をよまずにこの本をほうりだしてしまうとしたら,著者のかんがえの半分以下しか見ずにおわることになるだろう.

評価: ★★★★★

関連リンク: アカデミア・サバイバル@ [bk1]アカデミア・サバイバル@Amazon.co.jp

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2010-02-03

博士号をとったものの就職できず,無給にちかいのに大学で必死に働き,論文を書くフリーターをえがいている. おなじ著者の 「アカデミア・サバイバル ― 「高学歴ワーキングプア」 から抜け出す」 をさきに読んだ. それとくらべるとこの本はまだ救いがあるが,それはこの本以降にさらにきびしい状況になっているということだろうか.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 高学歴ワーキングプア@ [bk1]高学歴ワーキングプア@Amazon.co.jp

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2010-05-04

日本語や日本のさまざまな規則の間違いというよりは,おもにあいまいさを突いている. 「あいまいさは間違いではない」 などといってみても,はじまらないのだろう. これは雑学であって,あまりまじめに反論してみてもしかたがない.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 日本のルールは間違いだらけ@ [bk1] 日本のルールは間違いだらけ@Amazon.co.jp

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2010-06-09

この本が分析対象としている 「若者」 の代表 2 人をふくむ 4 人の対談を本にしている. 若者たちが,空気を読んで自分のかんがえをおもてにはださない,非常に同調性がたかいことに著者もおどろいている.

オジサンのしらない若者のすがたをえがきだしていて興味ぶかいが,対談をそのまま本にしているので,いささかまとまりを欠いている.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 情報病@ [bk1] 情報病@Amazon.co.jp

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2010-06-20

著者は経営者の立場にあって,「知のグローバリゼーション」,Web 2.0 やクラウド・コンピューティングへのながれを経験してきた. 「21 世紀の産業革命」 もアメリカからおこるなかで,日本は IT ではなく 「クール・ジャパン」,ガラパゴス文化を世界に発信していくのがよいという.

世間でいわれているいろいろなことをつなぎあわせた内容であり,著者独自のかんがえは希薄である. しいていえば,大衆文化が次世代をひらくというかんがえに独自性があるようにみえる. 著者は Twitter を評価し,「大衆自身がコンテンツを作り,公開することでウェブ空間に 「巨大知」 が形成され」 と書いている. しかし,Twitter が 「巨大知」 を形成できるメディアだとはおもえない. こういうひとの意見にしたがっているだけでは,日本はますます没落していくだろう.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: クラウド時代と〈クール革命〉@ [bk1] クラウド時代と〈クール革命〉@Amazon.co.jp

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2010-07-02

家づくりの過程でのさまざまな罠について書いている. そのなかには施主がかかりやすい罠もあるが,おおくはハウスメーカーがかかった罠の話である. 施主も自分である程度それをチェックできるだろうが,おおくの点は専門家にチェックしてもらう必要がある. 著者はそういうチェックをすることを仕事にしている. そうは書いてないが,結局は家づくりに失敗したくなければ,こういう専門家にたのむ必要があるということになるのだろうか.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: なぜ 90%の人が家づくりに失敗するのか@ [bk1] なぜ 90%の人が家づくりに失敗するのか@Amazon.co.jp

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2010-07-03

著者は,若者の雇用に関して,まちがった議論が横行しているという. この本はそういう本に反論し,あやしいデータを検証している. その目的は若者をたすける必要がないと主張することではなくて,現状をより正確に理解することで,ただしい対策がうてるとかんがえているからだろう. しかし,第 4 章では問題の本質をとらえようとしているのに,ここにきて急に議論がよわよわしくなってしまう. 根拠となるデータをあげようとはしているが,断片的だ. 他人のウソを突くのは比較的やさしいが,それにかわる論をたてるのはむずかしいということだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 「若者はかわいそう」論のウソ@ [bk1] 「若者はかわいそう」論のウソ@Amazon.co.jp

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2010-07-12

著者は,日本は製造業依存から脱却するべきだという. これまでそういう意見をきくと 「製造業も重要なのではないか!」 と反発するきもちもあった. しかし,この本を読めば著者はけっして製造業を軽視しているのでないことがわかる. ただ,製造業よりサービス業などの比率がおおきくなっていることを直視して,その生産性向上により注力するべきだという,もっともなことを言っているだけだ. この本で著者が主張していることは,ほかのこともふくめて,きわめてまっとうな意見であり,傾聴に値する.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 変わる世界@ [bk1] 変わる世界@Amazon.co.jp

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2010-07-18

「日本の財政は債務超過になる! 危険だから借金をへらさなければならない」 というようなかんがえかたに対して,著者は債務超過になることはない,国債の金利もずっと,あがっていない,などとこたえていく. 豊富なデータをつかった議論には説得力がある.

しかし,所詮は 「これまでだいじょうぶだったやりかたを,今後もとればよい」 というだけのことだ. これからも長期金利があがらない,国内なら借金をかかえていてもだいじょうぶだ,などといえる保証はない. そういう議論にふれずに著者自身のかんがえだけをのべていくやりかたは歯切れはよいが,危険を感じてしまう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 民主党政権で日本経済が危ない!@ [bk1] 民主党政権で日本経済が危ない!@Amazon.co.jp

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2010-07-26

個々の日本人はすっかり個人主義的になってしまって,もはや従来の 「安心社会」 をとりもどすことはできない. そういうなかで,著者は日本に適したやりかたをめざしつつも,個人主義の歴史がふるい欧米的な社会の実現をめざしているようだ. 「囚人のジレンマ」 など,ゲーム理論を武器にしつつ,合理的なゲームではなく不合理な人間がゲームでどうふるまうかを実験し,そこから結論をみちびこうとしている.

しかし,著者も書いているようにこの本では論理性よりわかりやすさを重視しているためか,飛躍する論理をうめることができず,納得できる議論にはなっていない. だが,東 浩紀 らのようにもはや 「規律訓練」 の時代ではなく,監視カメラのように 「環境管理」 によって安全・安心をまもる必要があるというような議論とくらべると,もしかするとまだ 「規律訓練」 的なやりかたにものぞみをつなぐことができるのではないかとおもえてくる.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 日本の「安心」はなぜ、消えたのか@ [bk1] 日本の「安心」はなぜ、消えたのか@Amazon.co.jp

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2010-08-08

マッキンゼーに就職しハーバード・ビジネススクールを経たのちさまさまな会社の経営にたずさわってきた著者の回顧録だ. 著者はおおくのひとにはできない経験をしているが,この本の内容はむしろ常識的といってもよいだろう. しかし,そのなかにさまざまな,ひかる部分がある. マッキンゼーへの就職をかんがえたときに,マッキンゼーのことを悪くいうひとは 「イメージ」 がベースだったのにくらべて,評価していたひとは具体的な事実がベースだったことに気づいたこと,日本以外のアジアとアメリカとのあいだの人の流れは日本にいるとあまり実感がわかないが,ボディーブローのように効いてきているという指摘など. さらっと書かれているが,よみとばしてしまうには惜しい.

評価: ★★★★☆

関連リンク: グローバル・マインド@ [bk1] グローバル・マインド@Amazon.co.jp

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2010-08-14

著者はハリウッドで日本人の習慣などについてきかれ,それを実践しているアメリカ人もすくなくないということだ. 日本の文化や習慣が注目されていることはまちがいないだろうが,それではアメリカ人は日本以外の文化や習慣にどれだけ注目し,どれだけとりいれているのだろうか. この本にはそれについては,なにひとつ書いてない.

著者は日本人とアメリカ人のふるまいに共通点をみつけると,すぐにそれはアメリカ人が日本人をまねしたのでは…と書いている. そういうケースもあるだろうが,もともと共通の部分もあるだろうし,日本が西洋からまなんだものを逆輸入していることもあるだろう. 全部 「日本人のマネをしている」 といってしまうのは著者の無知ゆえだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: ハリウッドではみんな日本人のマネをしている@ [bk1] ハリウッドではみんな日本人のマネをしている@Amazon.co.jp

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2010-08-24

表紙には 「クール・ジャパン」 の文字があり,まえがきなどにも 「アニメ」,「マンガ」 などの文字がみえる. なので,過去の日本と現在の 「クール・ジャパン」 との関係などが論じられているのではないかと期待したが,どうも,ちがっていたようだ. アニメ,マンガ,オタクなどについての議論もあるが,それはそれとしてあり,他の大半の文章では過去の日本についての分析が大半だ. 両者をつないでほしかった.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: ニッポン学の現在@ [bk1] ニッポン学の現在@Amazon.co.jp

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2010-08-28

日本人にとってはあたりまえで意識にのぼることもないが,外国人にとってはふしぎな習慣やしぐさがたくさんあるようだ. 日本人だけでなく,日本にくらす外国人のあいだにも,ふしぎな習慣ができているらしい. 著者はそういったことたちを冷静にみつめている. この本を読めば,いままで気づいていなかったことに,いろいろと気づかされる.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: トーキョーの謎は今日も深まる@ [bk1] トーキョーの謎は今日も深まる@Amazon.co.jp

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政府は日本の自給率がひくいことを問題にしているが,その自給率の定義は日本固有のものだという. そこから出発して,民主党政権もふくむこれまでの農政を批判している. 論旨にはあやしい部分もあるが,ふんだんに統計をとりいれて,客観的に議論しようとしている. 重要なのは,これが農業をめざす専門誌編集者である著者が真剣にかんがえた結論だということだろう. 日本の農政についてかんがえるとき,ぜひ読むべき本のなかの 1 冊だろう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 日本は世界5位の農業大国@ [bk1] 日本は世界5位の農業大国@Amazon.co.jp

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2010-09-05

著者は日本の農業が無秩序化し崩壊しようとしているという. 明治以来の歴史をたどり,自民党や民主党のくるくるかわる農政を批判している. そして,最後の章では 「日本農業の理想像」 と題されている.

この本を読めば日本の農業の問題点はいろいろとみえてくるのはたしかだが,コメ以外の作物のことはあまりみえてこない. また,農業の理想像をえがくのに成功しているとはおもえない. 理想像がえがけないのであれば,基本的にはふるい体制が崩壊するなかから,あたらしいものがうまれそだっていくのを待つしかないのではないだろうか. この本は日本農業へのレクイエムだと著者はいうが,秩序の崩壊が破滅につながるというのは悲観的にすぎるようにおもえる.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: さよならニッポン農業@ [bk1] さよならニッポン農業@Amazon.co.jp

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2010-09-10

アマゾンに関する本は多々あるが,アマゾンの配送センタに潜入つまり勤務した経験を書いている本はほかにはないのだろう. ノルマのきびしさが強調されているが,これはアマゾンだけのことではないだろう. 潜入してはじめてわかることもいろいろ書かれているが,それほどおおきく目をひく内容でもない. なにか,もうすこし,するどい切り込みがほしかった.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: アマゾン・ドット・コムの光と影@ [bk1] アマゾン・ドット・コムの光と影@Amazon.co.jp

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カロリー自給率という指標が適切かどうかを吟味しないまま,危機感をあおる議論をすすめている. 自給率をたかめるための対策として著者がかねてから主張してきた 「高付加価値農業論」 をとりあげているが,これは 「水気耕栽培」 をひろめようというものであり,うけいれられていない独断的な主張だとかんがえられる. もうすこしバランスをとった記述が必要だろう.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 食料自給率100%を目ざさない国に未来はない@ [bk1] 食料自給率100%を目ざさない国に未来はない@Amazon.co.jp

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2010-09-11

著者の肩書は 「農水省食料安全保障課長」 ということであり,この本のなかで自給率,消費構造,穀物価格や需給などに関してはさまざまな統計量がつかわれている. しかし,「安全保障」 のためには 「有事」 の際になにがおこるかを定量的に検証するのが重要なはずだ. ところがこの本のなかでは,食料輸入がすべてストップしたが国内生産はいままでどおりだったらどうなるか,というような非現実的な条件でおこりうることが検証されているだけだ. もっと現実的な条件でおこりうることはなにか,それにそなえるには自給率やその他の数値がどのくらいであるべきかを検証しなければ,食料自給がどうあるべきかを議論するには不十分だろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 食料自給率のなぜ@ [bk1] 食料自給率のなぜ@Amazon.co.jp

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2010-09-13

「腐女子」 は男どうしの恋愛マンガやアニメを趣味としている以外はごく普通の女性だという. ふつうに異性を愛している自分とは関係ない世界を夢見るのだという. 「腐女子」 が話題の中心だが,それだけでなく,もっとひろくオタク化や普通の女性のファッションの話など,いろいろな話題がとりあげられている.

「腐女子」 という,好奇心をそそられるような名前でよばれているが,結局はすこしかわった趣味をもつふつうの女性なのだということで,どちらかといえば退屈な結論におちついている.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 腐女子化する世界@ [bk1] 腐女子化する世界@Amazon.co.jp

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2010-09-14

著者は,おちいりやすい,さまざまな思い込みを切って捨て,デフレの正体は生産年齢人口つまり現役世代の減少だといっている. ほかに原因がないのかということをべつにすれば,はたらかない高齢者がふえれば内需が不振になるというのは,すなおに納得できる. それに対する対策として,著者があげているのは,高齢富裕層から若者への所得移転,女性の就労と経営参加,外国人観光客・短期定住客の受入である. それらが対策となりうるのも理解できるが,それだけなのだろうか. 健康な高齢者がふえているなかで,高齢者にもはたらいてもらって,もっと消費をふやしてもらうという対策もありそうにおもうのだが,それについてはふれられていない.

評価: ★★★★☆

関連リンク: デフレの正体@ [bk1] デフレの正体@Amazon.co.jp

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2010-09-17

リーマン・ブラザーズが破綻し,人口が減少しつつあって,もはや経済成長がのぞめないなかでも経済成長によってさまざまな経済・社会の問題を解決しようとする政治から個人の意識までもが批判の対象になっている. 批判の重点は近所でたすけあうような共同体的なつながりがうしなわれてしまったひとびとのありかたに向かっているようにみえる. それは政治・経済というよりは個人の倫理の問題だろう. にもかかわらず 「経済成長」 を本のタイトルにしているところに違和感を感じる. 個人の意識から改革していかなければならない長期的なながれと,きょう,あるいはあすの雇用を確保するための経済成長とをいっしょに論じているところには,無理があるとおもわざるをえない.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 経済成長という病@ [bk1] 経済成長という病@Amazon.co.jp

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2010-09-22

著者は技術にかたよらないイノベーションの必要性をうったえている. さまざまなイノベーションについて書いている本というと,ドラッカーをおもいだす. だが,この本はイノベーションを分析するよりは,それに関連する日本や世界のさまざまな話題をならべて,読者にかんがえさせようとしている. 内容は 「イノベーション」 ということばでまとめられてはいるものの,いささか発散的であり,ちょっと印象にのこりにくい.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 変われる国・日本へ@ [bk1] 変われる国・日本へ@Amazon.co.jp

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制服やナンチャッテ制服についての本であり,最近 「コスプレ」 ということばからうける印象とこの本の内容はかなりちがっている. しかし,スチュワーデスとかナースとか,学校の面接をうける子供の母とかの役割を演じるための服装としての制服の話であるから,アニメの登場人物を演じるための服装とそれほど差はないともいえるだろう. そういう意味ではやはり 「コスプレ」 の本なのだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: コスプレ@ [bk1] コスプレ@Amazon.co.jp

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通常の出版社をとおさずにオンデマンド出版の本をアマゾンで売ってきた著者が売り上げをのばす方法について書いている. 本の表紙のつくりかたやそれをどういうかたちでアマゾンにのせるか,「なか見! 検索」 をするべきかどうかなど,非常にこまかい (とみえる) 点が多々とりあげられている.

内容は売り上げをどうのばすかという点にかたよっているという印象をうける. 編集者の手をへずに出版するのだから,それにかわる方法論がもっとあってしかるべきだが,原稿をひとにみせてコメントをもらうという程度のことしか書いてない. そこがちょっと期待はずれだ.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 私にはもう出版社はいらない@ [bk1] 私にはもう出版社はいらない@Amazon.co.jp

つづく…

2010-10-15

かつてセゾングループをひきいていた 辻井 喬 こと 堤 清二 が 上野 千鶴子 につっこまれつつ語っている. かつて 堤 清二 がしてきたことに対して,ときにはするどく自己批判的に語っているところが印象的だ. 経営者がちがっていればセゾンが破綻せずにすんだとはかんがえていないというが,グループがなぜうまくいかなくかったのかを,いろいろな面から分析している. 上野のツッコミにこたえるかたちだが,重要な点はみな辻井の口からでている. ふつうは語られないであろう,なまなましい経営の成功と失敗の分析として,価値がある.

評価: ★★★★☆

関連リンク: ポスト消費社会のゆくえ@ [bk1] ポスト消費社会のゆくえ@Amazon.co.jp

つづく…

2010-10-23

加賀屋をはじめとする 8 つの事例を解説している. 「おもてなし」 とくふうをこらしたコストカットの両面をあつかっている. とくに,「おもてなし」 をささえる裏方のしかけがおもしろい.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 「最強のサービス」の教科書@ [bk1] 「最強のサービス」の教科書@Amazon.co.jp

つづく…

2010-10-26

江戸時代から現代までのあいだに日本でうまれた大発明 5 個ほどについて解説し,そこから教訓をひきだそうとしている. 教訓の中には 「失敗で諦めるな」 と 「目標は機を見てあっさり変えろ」 というように矛盾しているとみえるものもあり,ひとすじなわではいかない.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 世界を驚かせた日本人の発明力@ [bk1] 世界を驚かせた日本人の発明力@Amazon.co.jp

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2010-11-02

フィードバックやら複雑系やら要素還元論の話がでてきて 「逆システム論」 などということばがでてくると,かなり精密な議論をしようとしているのかと誤解してしまう. しかし,著者がつかっている 「多重フィードバック」 をもつような複雑なシステムは,著者もそれらしいことを書いているように,帰納的にその構造を推定することはもちろん,システムのパラメタをきめることも困難だ. だから,「逆システム論」 ではあいまいな定性的な議論しかできない. 著者も書いているように定性的な議論は重要だが,すべてがあいまいなまま議論しても,有用な結果をだすことはむずかしいだろう.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 逆システム学@ [bk1] 逆システム学@Amazon.co.jp

つづく…

「10 の鉄則」 すべてがピンときたわけではないが,ベンチャー企業において重要な点がふくまれいることはまちがいないだろう. 持続的な研究開発体制の確立,論文や特許の奨励など,自分の経験からしても納得できる内容だ. 経験はないが,「技術負債 [事故など] を返済するときは,負債を持っているチームにやらせないことが重要」 という指摘ももっともだ. 「新人社員が研究所を希望しているのならば,まずは研究所に配属させてやるのが良い」 というのももっともだが,なかなかできないことだろう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 「夢の新製品」を生み出す10の鉄則@ [bk1] 「夢の新製品」を生み出す10の鉄則@Amazon.co.jp

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2010-11-09

著者は大学の研究者なのに 「現場からの告発」 というサブタイトルがついているのは,フィールドワークにもとづく著書だからだろう. しかし,それにしては,ナマの情報がすくない. 内容がこなれすぎていて,やはり 「現場からの告発」 にはなっていない.

もとは章ごとに独立の文章だったようだ. 章ごとに著者がちがっていて,対象事業・業務はモノづくりもあればソフトウェア開発もあるが,章タイトルは事業・業務とは独立につけられている. よりひろく適用できる議論をめざしているということだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 日本の技術経営に異議あり@ [bk1] 日本の技術経営に異議あり@Amazon.co.jp

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2010-11-18

フランス人と結婚してパリ郊外に住んでいるという著者だから,日本人にもフランス人にも書けない日本女性とフランス女性とのちがいを書くことができたのだろう. そのちがいがフランスと日本の出生率のちがいにつながっているのかどうかはかならずしもわからないが,納得させられる理由とともに書かれている.

最後に日本の少子化対策のためにフランスからまなべる点が分析されているが,結局は日本はフランスとはちがうので,まねしてもだめだという. すぐに少子化対策につながる内容ではないが,エッセイ風の文化比較として読めば,いろいろおもしろい.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: なぜフランスでは子どもが増えるのか@ [bk1] なぜフランスでは子どもが増えるのか@Amazon.co.jp

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2010-11-22

著者は 「コンクリートから人へ」 という民主党の政策のもとでは国がほろびるという. 民主党が公共事業をめがたきにしているかのように書き,それに反論している. たしかに,著者が指摘するように,最近は道路建設などの公共事業費がおさえられているにもかかわらず,過去をみてバッシングをつづけていると,必要な道路建設費などをけずってしまうことになるだろう. しかし,著者がとりあげているデータは都合のよいものだけをとりあげているようにみえるし,議論もあらけずりだ.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 公共事業が日本を救う@ [bk1] 公共事業が日本を救う@Amazon.co.jp

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2010-12-01

日本人のなかには台湾人を極端に親日的だとかんがえたり,逆にかんがえたりするひとがいる. 著者はそれに対して執拗に反論している. そういう,くどい部分に我慢してよみすすむと,現代日本のさまざまなものに 「萌日」 する台湾人のすがたがえがかれている. しかし,哈日族についての本などを読んだひとにとっては,それほど新鮮な内容ではないだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 「親日」台湾の幻想@ [bk1]「親日」台湾の幻想@Amazon.co.jp

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2010-12-16

タイトルをみると著者がビジネスに計画はいらないと主張しているようにもみえる. 実際,ビジネスにはゆるぎないゴールが存在したりせず,プロセスが重要だという主張をしている. しかし,目的や目標をたてることを否定しているわけではなく,それらは必要に応じて再設定するべきものだということだ.

著者がきらいなのは 「戦略」 という勝ち負けにかかわることばだ. 一方,著者はこの議論のなかにフェティシズムとか脱構築とかいうことばをもちこもうとしている. しかし,「戦略」 の否定をふくめて,十分に整理されているとはおもえない. 共感できる部分はあるが,読みおわってもモヤモヤしたものがのこる.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: ビジネスに「戦略」なんていらない@ [bk1]ビジネスに「戦略」なんていらない@Amazon.co.jp

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2010-12-21

工業製品が標準化された部品からくみたてられることは周知であり,その意味で 「製品アーキテクチャのモジュール化」 は目新しいことではない. しかし,この本ではそれだけでなく,「生産のモジュール化」,「企業間システムのモジュール化」がとりあげられ,また 「製品アーキテクチャのモジュール化」 においても日本の企業ではモジュール間のすりあわせをともなう,より柔軟なモジュール化がなされていることの指摘など,実際の生産の場の観察にもとづくさまざまな分析がなされている.

ただ,この本は章ごとにことなる著者が執筆しているため,それらの分析が十分に整理されたかたちでしめされていないところに弱点がある.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: モジュール化@ [bk1]モジュール化@Amazon.co.jp

つづく…

2011-01-15

「もっとも強力なマーケティング手法のひとつ」 つまり 「あるものをタダであげることで,別のものの需要をつくりだす」 のが 「フリー」 である. それは 19 世紀のおわりに誕生し,デジタル・メディアの登場でひろがった. Microsoft 対 Linux,Yahoo 対 Google など,この本ではさまざまな具体例をあげて,なぜタダにしてももうかるのかを説明している. この本のなかには 10 数個のかこみ記事があり,そこでさらにおおくの具体例をとりあげている. これらを読んでいくことで,読者も具体的な戦略をみつけることができるかもしれない.

評価: ★★★★☆

関連リンク: FREE@ [bk1]FREE@Amazon.co.jp

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2011-01-25

2007 年に出版されたネットの本をいまさら読んだ. 当時はブログが話題の中心だった. 現在は事情がかわってしまった部分がおおいが,いまでもブログをかきつづけている私にとっては参考になる点が多々あった. 最近は 「炎上」 の話もあまりきかないが,炎上を解決するにはブログを閉鎖したりするのでなく真摯な姿勢が重要だという指摘は納得がいく. また,炎上しているときはふだんより注目されているからチャンスだという指摘ももっともだ. ブログの歴史もこれまで読んだ本にはあまり書いてなかったようにおもう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: クチコミの技術@ [bk1]クチコミの技術@Amazon.co.jp

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2011-02-04

さまざまな企業からの依頼をうけて魅力的な製品をうみだしているデザイン会社 IDEO が話題の中心だ. GE, P & G, Apple などの会社にもふれている. そして,この本の中心は IDEO にみられる創造のプロセスの著者の体験にもとづく解説だ. そこでは,創造性は個人の才能ではなく方法でありマネジメントの問題だということ,プロトタイピングと,フィールドワーク,エスノグラフィーの重要性と手法などが記述されている. フランク・モスにひきいられる MIT メディアラボにおけるプロトタイピングの方法も記述されている.

こういうあたらしい方法はとくに日本の大企業にはうけいれられていないという. 会社がうけいれないなら,個人で経験する方法はないものかとおもう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: デザイン思考の道具箱@ [bk1]デザイン思考の道具箱@Amazon.co.jp

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2011-02-12

著者はこの本を書くにあたって何百の本,何百メガバイトのオンライン・メッセージを読んだという. それらからえられたことが 6 つの章にまとめられている. 各章のテーマは明確だが内容は章内でも種々であり,よみおわってみるとそこから著者の明確なメッセージをうけとることができない. 10 年前には集大成として価値があったかもしれないが,その後のおおきな変化をかんがえれば,もはや,やくわりを終えた本なのだとおもえる.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: ネットワーク社会の深層構造@ [bk1]ネットワーク社会の深層構造@Amazon.co.jp

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2011-02-19

JR 北海道では道路と線路の両方を走行することができる DMV (デュアル・モード・ビークル) の開発に成功した. DMV は過去にさまざまな国で開発がこころみられたが,短期間しかつかわれなかったという. JR 北海道で開発に悪戦苦闘したさまがえがかれているが,いくつかの好条件にめぐまれて,楽観はできないものの,成功へのみちをたどっているようだ. ベンチャーのひとつの例として,まなぶべき点がいろいろあるようだ.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 線路にバスを走らせろ@ [bk1]線路にバスを走らせろ@Amazon.co.jp

つづく…

ちかごろの President は,およそそのなまえとは相いれないことを特集していると感じてきた (以前はそうでなかったような気がするのだが…). 「年収 1500 万円の勉強法」 とか,「金持ち家族,貧乏家族」 とか,「いる社員,いらない社員」 とか,なんでこんなシミッたれたタイトルの特集を組むのか… そういう President がひさびさにそのタイトルに恥じない特集 「孫正義の白熱教室」 を組んだ. これならば,president (社長) から一般社員まで,いろいろまなぶことができる. 今後もこういう特集を期待したい.

評価: ★★★★☆

関連リンク: PRESIDENT@Amazon.co.jp

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2011-03-06

中国では日本ではかんがえられないようなことがいろいろおこっている. この本には中国でくらす著者が経験したことやききこんだ話が書いてある. 写真もところどころにあって,話の真実味を増している.

しかし,マスコミもあまり信用できない国だし,うわさ話にいたっては眉にツバをつけて読むしかない. 著者が積極的にウソを書いているようなことはもちろんないとおもうが,中国人がやっていることもあやしければ,著者が書いていることもあやしいというわけだ.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 上海発! 新・中国的流儀 70@ [bk1]上海発! 新・中国的流儀 70@Amazon.co.jp

つづく…

正編にも上海の日本人にページがさかれていたが,この続編ではさらに日本人のビジネスやシモネタにページをさいている. また,時代を反映して 「タオバオ」 など,中国のネット・ビジネスについても書いている. 正編に書いてないあたらしい話題がとりあげられているのはもちろんだが,それでも,だんだん飽きてきた.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 続 上海発! 中国的驚愕流儀@ [bk1]続 上海発! 中国的驚愕流儀70@Amazon.co.jp

つづく…

最近,TPP (Trans-Pacific Partnership) に関する本が続々と出版されつつある. 菅政権によって急にもちだされた TPP 問題だが,賛成するにせよ反対するにせよ,急いで対処しなければならないわけだから,当然のことだろう. ところが,すでに出版されたり,ちかく出版されようとしている本はほとんど反対派のものだ. 賛成派はどこにいったのだろう?

つづく…

2011-03-07

理科系人材をとりまくさまざまな悪条件をあきらかにしている. バブル期前後までは世界をリードしていた日本の科学技術が,「理科系冷遇」 によって危機に瀕しているという.

だが,著者も気がついているように,それは現在の日本がかかえる問題のなかのほんの一部だ. これがすべてなら,いくらでも手があるだろうが,予算がかぎられたなかでどうすればよいのか? 著者があたえているひとつの解決策は,アジア各国が連帯して欧米に対抗することだ. しかし,それで解決される問題はかぎられている. もうすこしつっこんだ議論をしないと,解決にはつながらないだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 理科系冷遇社会@ [bk1]理科系冷遇社会@Amazon.co.jp

つづく…

2011-03-12

3 月 11 日午後に発生した大地震のとき,戸塚にいた. 仕事はストップしたが,帰路についたのは午後 6 時まえだ. 結局,戸塚から西馬込まであるくことになった. 西馬込で地下鉄にのって最寄の中野新橋駅までくることができた. 家についたのは 12 日 2:00 ごろだった.

つづく…

2011-03-17

この本には,仕事を成功させるためのいろいろなちょっとしたアイデアや,かたい頭をほぐしてくれるようなことが書いてある. それがそのまま読者にやくだつことはむしろすくないだろうが,この本を読んで頭をやわらかくすれば,もっとうまくいくようになるのかもしれない.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 小さなチーム、大きな仕事@ [bk1]小さなチーム、大きな仕事@Amazon.co.jp

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2011-03-27

TPP 賛成派にもっとも系統的に反論している. 賛成派は思考停止しているのではないかということまで書いている. たしかに,いま入手できる情報から客観的に判断するかぎりは,TPP に賛成するべき明確な理由はないように感じられる.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: TPP亡国論@ [bk1]TPP亡国論@Amazon.co.jp

つづく…

2011-04-05

著者は,社会学などの研究者やマスコミなどがよくおこなう 「社会調査」 のおおくはゴミだという. つまり,きちんと計画された調査でなければ,あやまった結論をみちびいてしまう, それなのにおおくの 「社会調査」 はいいかげんにおこなわれている. 著者は 「社会調査」 がおちいりやすいあやまりをつぎつぎに指摘していく. それらの指摘は調査する側にも調査結果を読む側にも有益だろう.

しかし,著者は最後には調査とはいえない新聞の随筆風の記事まで攻撃する. これはいただけない. もうすこしフォーカスをしぼるべきだったのではないかとおもう. また,新聞などの調査に対して,莫大な時間やコストをかけなけばならないような精密な調査を要求している. これも無理難題だろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 「社会調査」のウソ@ [bk1]「社会調査」のウソ@Amazon.co.jp

つづく…

ぎりぎりのところまで追いつめられつつ修士論文を 2 回もすっかり書きなおした著者の経験からはじまって,フィールドワークと恋愛,肉眼と録音・録画とでまったくちがう出来事を経験したことなど,フィールドワークのなかでの著者の経験がかたられる. 基本的にはフィールドワークの技法やむずかしさがかたられた本ということになるが,そこにはフィールドワークの魅力もあふれているといえるだろう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 体験と経験のフィールドワーク@ [bk1]体験と経験のフィールドワーク@Amazon.co.jp

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2011-04-07

最初の 5 つ (または 6 つ) の章はフィールドワークの技法を説明しているが,後半の 7 つの章はそれをまなんだ学生によるマイクロ・エスノグラフィー,つまりフィールドワークの結果をまとめたものだ.

学生が書いたものなので,かならずしも洗練されているとはいえないが,フィールドワークのなかでの経験がにじみでている. おもしろいのは,最後の論文だ. そこでは M 教授のゼミそのものがフィールドワークの題材になっている.

ここに書かれた技法がいつもうまくつかえるわけではないだろうが,出発点としてはよいだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: フィールドワークの技法と実際@ [bk1]フィールドワークの技法と実際@Amazon.co.jp

つづく…

2011-04-08

著者は TPP に反対する立場だが,この本は反対派にも賛成派にも重要な情報を提供してくれる. タイトルのように,TPP を菅首相がいう 「第 3 の開国」 ではなくて 「第 3 の構造改革」 だと書いている. つまり,第 2 の構造改革である小泉改革と同様に貧困化と格差拡大をもたらすという.

しかし,貧困化などの現代日本の問題点は,小泉改革によってもたらされたというよりは,さけがたいグローバル化によってもたらされたといえるだろう. もしグローバル化に抵抗することができるなら,「第 3 の改革」 を阻止して貧困と格差のない日本をめざしていけばよいだろう. しかし,はたしてそれは可能なことなのだろうか?

評価: ★★★★☆

関連リンク: TPP@ [bk1]TPP@Amazon.co.jp

つづく…

2011-04-15

中国は経済的にはゆたかになったが,政治的には独裁がつづき,言論の自由も制限されている. しかし,この本でとりあげられているアンケートなどには中国人の本音もみえる. 著者は 2022 年までには,ゴルバチョフのような人物がでなくても,民主的な政治改革がなされるとかんがえている. 十分な説得力があるとはいえないが,それがほんとうだと信じたい.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 中国@ [bk1]中国@Amazon.co.jp

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現代の 10 代,20 代の若者たちはどこがちがうのか,それをまざまな統計などをつかって,しめそうとしている. 変化は 1980 年代からおこっているが,とくに最近の 5 年間くらいの変化がはげしいという. それはソーシャルメディアの登場による.

だが,後半になると話題の焦点は日本の若者からははずれてくる. そのために,この本の印象もすこし散漫になっているようだ.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: ソーシャルネイティブの時代@ [bk1]ソーシャルネイティブの時代@Amazon.co.jp

つづく…

マスコミや有線放送,CATV などによる災害情報をさまざまな面からあつかっている. 章ごとにことなる著者が執筆しているので,一部重複もあるが,それはたいした問題ではない. 過去の災害情報の分析としてはよいだろう.

しかし,今後の参考にしようとすると,インターネットなどに関する記述がほとんどないのが気になる. 東日本大震災でひろくつかわれた Twitter や Facebook についての記述がないのはしかたがないが,この本の出版前におこった新潟県中越地震などでのインターネットのやくわりに関しては,もうすこし書いてあってもよかったのではないだろうか. いずれにしても,今後,大改訂が必要なことはまちがいないだろう.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 災害情報論入門@ [bk1]災害情報論入門@Amazon.co.jp

つづく…

2011-04-23

「クール・ジャパン」 に関する海外での熱狂ぶりや政府の肩入れなどに違和感をいだくとともに,日本のアニメなどの惨状にこころをいためるとき,この本はそういう問題へのヒントをあたえてくれるとおもう. しかし,他の評者も書いているように,この本ではすっかり消化不良におちいってしまう. 私のようなアニメやマンガにちゃんとついていっていない読者,また (ネットをふくむ) 論壇についていっていない読者にはとてもフォローできない.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 日本的想像力の未来@ [bk1]日本的想像力の未来@Amazon.co.jp

つづく…

2011-04-24

20 人以上の著者が災害復興における 「コミュニティ」 について書いている. 読んでいて疑問におもうのは,これらの著者のあいだにどれだけ 「コミュニティ」 ということばに関する共通理解があるのだろうということだ.

最近の日本の災害に関しては,町や村のなかでのひとびとのつながりについての記述がある. しかし,それも抽象的だ. もっと過去のことや海外での事例に関しては,人間が登場せずに住宅のようなモノについての記述にとどまっているばあいもある.

スマトラ地震に関してはアンケートの結果をみて 「コミュニティ」 がたよりにならなかったと書かれているが,そもそも被験者は 「コミュニティ」 ということばを理解できたのだろうかという疑問がわいてくる. ことばがわからなかったから,ひくい評価しかあたえなかっただけではないのか?

最悪なのは,災害が発生する 「事前に耐震・耐火の建物に建て替えておこうというのでは,それは単なる震災という脅しで行う再開発事業に過ぎず (脅し・説得のコミュニケーション),本稿で検討するに値しない」 (1.1.1) という記述だ. まずは価値判断ぬきで記述して,価値判断はそのあとにあるべきだろう. 全体をとおして,いまだ 「復興コミュニティ論」 にはなっていないといってよいだろう.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 復興コミュニティ論入門@ [bk1]復興コミュニティ論入門@Amazon.co.jp

つづく…

2 章の最後にあるつぎのことばが,この本のもっとも重要なテーマをあらわしている. 「実際のボランティア活動の現場で気づかされることは,その活動がどのような役割をはたしているかということよりはむしろ,援助者として被災者とどう向き合い,関係を取り結んでいくのかという側面である.」 これは,これまで災害ボランティアがむきあってきたのはほとんど被災者だったということからきている. 東日本大震災ではいまボランティアはもっとガレキやヘドロのようなモノとむきあわされている. この震災でもやがてはもっとヒトとむきあうことになるのだろうか.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 災害ボランティア論入門@ [bk1]災害ボランティア論入門@Amazon.co.jp

つづく…

著者はさまざまな災害現場において,みずからボランティアとしてはたらきながら,そこでフィールドワークをおこない,エスノグラフィーとしてまとめている. 著者はこのフィールドワークはグループ・ダイナミクスのわくぐみにもとづいているという.

フィールドワークにおいては本来は観察者はそこでおこっていることにかかわらないようにするが,著者はむしろそこに積極的にかかわっていく. それが結果にどのように影響しているのかはわからないままだ. また,(グループ) ダイナミクスがどのようにはたらいているのかもわからない. ただ,ボランティアが被災者によりそい,そのかたわらにいることが強調される.

著者のボランティアとしての経験は貴重だし,それをグループ・ダイナミクスの理論とむすびつけようとしているのもわかるが,説得力には欠ける.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: ボランティアの知@ [bk1]ボランティアの知@Amazon.co.jp

つづく…

災害ボランティアとしてどういう活動が可能で,どうふるまうべきなのかを,おしえてくれる本である. ただし,ボランティアの内容としてはこどものめんどうをみること,こどもとあそぶことに重点がおかれている. これからボランティアしたいひとが参考にするには,自分がするべきボランティアの内容が この本とあっているかどうかを確認したほうがよいだろう. 水害からの復興もとりあげられてはいるが,わずかな記述にとどまっている.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 自然災害ボランティア ABC@ [bk1]自然災害ボランティア ABC@Amazon.co.jp

つづく…

2011-05-07

最近発行された写真集に共通することだが,この震災では被害のほとんどが津波に起因するものだったにもかかわらず,震災直後にテレビなどでさんざんみせられた津波がまちをおそう場面の写真はすくない. 名取市の防砂林をこえる津波の写真くらいだ. 津波被害の記録としては,もうすこし津波そのものの写真が必要だろう.

物より人をうつした写真がおおいことも各社共通している. 被災者を記録するのはもちろん重要なことだし,被災者や日本人みんなを勇気づけるのはよいことだ. しかし,ひとに焦点をあてたためか,近視眼的な写真がおおくなっている. 児童と教師のおおくがうしなわれた石巻市立大川小学校がとりあげられているが,どういう場所でなにがおこったのか,校庭のようすがわかる写真もなければ十分な説明もない.

ほかの本にはみられない菅総理の 1 ヶ月間の全行動が 4 ページにわたって書かれているが,最後にあるのは 「首相執務室は開かずの間」 と題された菅たたきの文章だ. いかにも産経らしいが,それがいいたくて全行動をのせたのだとしたら,紙のむだだろう.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 闘う日本@ [bk1]闘う日本@Amazon.co.jp

つづく…

名取市の防砂林をこえる津波の写真,家,船,くるまをおそう津波など,津波そのものの写真もひととおりはある. 震災直後にテレビなどでさんざんみせられた光景の大半はここにはない.もうすこし津波やそれが火をはこんでくる写真などがほしい.

産経の写真集などとくらべると,1 枚の写真が全面を占めているページがおおい. そのため,ひとびとの表情までもをその周囲の光景のなかでうまくとらえた写真がおおい. また,物と人とのバランスもとれ,文字による記録もあわせて掲載されていて,全体像を把握しやすい.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 報道写真全記録@ [bk1]報道写真全記録@Amazon.co.jp

つづく…

最近発行された全国紙の写真集のなかでは写真にあてたページがもっともおおい. それだけに,もっとも詳細な記録になっている. 他社がとりあげていないさまざまな津波の写真や津波後の火災の写真なども収録されている.

ひとびとをうつした写真は産経の写真集と同様に人物だけをとらえたものがおおく,ページのひろさが十分にいかされているとはいえない. しかし,それだけ表情はよくよみとれる.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 東日本大震災@ [bk1]東日本大震災@Amazon.co.jp

つづく…

5 月 6 日に,全国紙 3 紙による東日本大震災写真集がとどいた. それぞれの印象を書いてみた.

私としては産経のはおすすめできないが,あとの 2 つのどちらがよいかはむずかしい. しかし,広大な地域をさまざまなかたちでおそった震災の幅をかんがえるなら,写真の数が重要なファクターになり,読売新聞に軍配をあげることになるだろう.

2011-05-08

柄谷 行人 は東日本大震災や阪神大震災の話から,ついには 「世界資本主義は 2,30 年のうちに存続することができなくなるだろう」 と書いている. しかし,その根拠は十分,明確にされていない.

酒井 直樹 は 「「無責任の体系」 3 たび」 という文章を書いている. そんなこと,いまさら,あらためて言うことか ?!

早尾 貴紀 は東京ももはや放射線において安全ではないので,「仙台にも東京にも子どもを置いておくことはできない」 と書いている. 矢部 史郎 も 「東京を離れて」 という文章を書いている. 気持ちはわからなくはないが,みんながそうやって京都や愛知などに移動し始めたら,どういうことになるのだろう.

著者のなかにはもっとまともなことを書いているひとはもちろんいるが,このひとたち,この雑誌,くるっているのではないだろうか?

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 現代思想2011年5月号@ [bk1] 現代思想2011年5月号@Amazon.co.jp

つづく…

2011-05-10

災害予知情報をつたえるべきかどうか,どうつたえたらいいかといった話題もとりあげられているが,印象にのこったのは流言の発生やひろがりかたについての話題だ. 最近話題のツイッターによる流言はこの本ではまだ登場しないが,マスコミからはじまって,Web やメイリングリストはとりあげられている.

それとともに,ひとびとの不安をなくすには断定的な表現が必要とされたという話もとりあげられている. 地震発生のデマをうちけすには,正確さを重視するならいえないはずの 「絶対起きない」 と断言するようにしたという気象庁地震課長の話である. 福島第一原発事故で枝野官房長官が正確な表現につとめていたために不安が解消できなかったことをおもいださせる.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 災害情報とメディア@ [bk1] 災害情報とメディア@Amazon.co.jp

つづく…

臨界事故がどんな悲惨な患者をつくりだすかをえがいている. 中性子線被曝というきわめてまれな症例の記録として価値ある本であると同時に,事故をまねいた JCO の責任をするどく追求している本だといえるだろう.

末尾の解説ではチェルノブイリ原発事故もとりあげられている. 原発のこわさという点はどちらの事故も共通しているが,さまざまなちがいがあることも認識するべきだろう. それをあいまいにしたままの議論には疑問を感じる. 治療にあたった前川医師を中心とする原子力安全委員会がまとめた報告書のなかで,被曝治療の体制づくりが重要だと指摘しているという. しかし,ほとんど発生したことがない中性子線被曝のためにおおきなコストをかけるのは,はたして妥当なことだろうか? それはいま福島で発生の可能性がある放射性物質の崩壊による被曝とはまったくちがっている.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 朽ちていった命@ [bk1] 朽ちていった命@Amazon.co.jp

つづく…

災害が発生したときにマニュアル風につかうことをかんがえて,ほとんどの情報が箇条書きで書かれているのだろう. いそいでいるときに必要な情報をえるには,このような記述形式がよいのかもしれない. しかし,そういうときでも,「なぜそうするべきなのか」 はかんがえなければならないだろう. この本はそこがよわいようにおもえる.

マニュアルならば,入門的な知識から,それぞれのアクションをとる理由,効果など,必要な知識をつかいやすいようにまとめるべきだろう. この本をつかおうとすると,消化不良でいろいろ問題がおこってくるのがこわいようにおもえる.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 防災・減災・復旧ノウハウ@ [bk1] 防災・減災・復旧ノウハウ@Amazon.co.jp

つづく…

2011-05-13

東日本大震災における被災者の秩序だった行動は世界に感銘をあたえた. しかし,この本は災害時にはおおくの場所で,たがいにたすけあい,自分がもつものすべてを他人にあたえ,金銭が機能しなくなるユートピアのような状態が生じると主張している. 例としてとりあげられているのはハリケーン・カトリーナやサンフランシスコ地震や 9.11 などだ.

それとともに,被災者への不信感をもつマスコミやエリートたちがそういう世界を破壊する行為をすることを主張している. 軍隊や警察が窃盗をはたらいていないひとを射殺したり,こわれていない家を破壊したり,避難やボランティアをさまたげたりするという. アメリカで被害にあうのはおもにアフリカ系アメリカ人であり,ふだんはおさえられている偏見や差別が顕著なかたちであらわれる.

日本と海外の市民にちがいがあるからではなくて,日本ではそういう対立関係がないことが,略奪や殺人のデマの発生をおさえ,カトリーナやサンフランシスコ地震などとのちがいにつながっているのではないだろうか. 400 ページをこえるこの本は,そういったことをじっくりかんがえる時間をあたえてくれる.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 災害ユートピア@ [bk1] 災害ユートピア@Amazon.co.jp

つづく…

2011-05-14

ここ 20 年間,低迷してきた日本が,東日本大震災によってさらに没落することが心配されている一方で,これをきっかけに東北だけでなく日本全体が復活するという意見もある. レベッカ・ソルニットの 「災害ユートピア」 という本には,災害をきっかけとしておおきな変化をおこした例がとりあげられている. 現在の日本とはまったく状況がちがっているが,勇気づけるためのひとつの材料にはなるだろう.

つづく…

レベッカ・ソルニットの 「災害ユートピア」 という本には,災害時にはおおくの場所で,たがいにたすけあい,自分がもつものすべてを他人にあたえ,金銭が機能しなくなるユートピアのような状態が生じると主張している. 例としてとりあげられているのはハリケーン・カトリーナやサンフランシスコ地震や 9.11 などだ. 東日本大震災直後の日本もそれにちかい状態だったといえるだろう. そういう空想的社会主義的な世界がうまれていたのだとしたら,空想的社会主義はけっして空想ではなかったということができるのではないだろうか.

つづく…

レベッカ・ソルニットの 「災害ユートピア」 という本には,不意の災害のときに,常識的な他人の指示にしたがって,いのちをおとしたひとの話がいくつか登場する. 常識が通用しない東日本大震災のような災害の際に,だれのいうことを信じるべきだろうか? 結局は自分を信じるしかないということではないだろうか?

つづく…

2011-05-16

震災後はやい時期における著者の提言などをまとめたものだ. 福島第一原発事故に関しては,原子力の専門家だった著者の知識がいかされている. 著者は計画停電に関しては (当然) 批判的だが,やってみたから深刻さといかにバカげたものであるかが国民にわかったという点ではやってよかったのではないだろうか.

日本復興には成長戦略が重要であること,そのためには日本人のメンタリティをかえる必要があることなど,もっともだが,130 ページほどのみじかい本の議論では十分でない. すばやく本をだすことには価値があるが,みじかい期間でももうすこし計画を練ることはできたのではないだろうか.

評価: ★★★☆☆

関連リンク: 日本復興計画@ [bk1] 日本復興計画@Amazon.co.jp

つづく…

著者は震災後 4 月おわりまでのあいだに,この震災に関する 50 ちかい文章を書いている. おどろくべきことだ. 菅直人や東電への批判がつよいなかで,著者は菅をというよりは首相を支え,東電を応援することの重要性をといている.

多数の文章のなかには重複する内容が非常におおい. 明治天皇のおなじ短歌が 7 回以上引用され,おなじような論旨がつづいている. おなじことが 2 回,3 回くりかえされても耐えられるが,10 回ちかくもくりかえされると,もはや耐えられない. もとのままの文章をつたえたかったのだろうが,重複がすくなくなるように編集するべきではなかったのだろうか?

著者は原発事故の収束のためには近代主義的な生命至上主義,個人主義を超克し,「命を捨ててくれ」というような命令が必要になると論じている. しかし,福島ではこのような命令をしなくても原発にむかっていく大勢のひとがいて,我々もそれに勇気づけられるのだ. そのような命令が必要になることこそ末期的だとおもえる.

評価: ★★☆☆☆

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つづく…

2011-05-21

「精神の空白」 や日本国憲法,戦後の教育を中心として,太平洋戦争後の日本がかかえたままの問題をしめそうとしている. 問題をうみだした元凶はアメリカによる占領時の上からの民主化や国防政策の転換,産業化の成功などだ. 憲法に関しては,非武装中立論に重点をおいて検討している. また,教育に関しては 「公民」 ということばの検討に重点がおかれている.

わかりのよい本ではないし,論旨にも弱点がある. しかし,わかりのよい本で思考停止におちいるよりは,こういう本を読んで読者みずからかんがえるのも,わるくないのではないだろうか.

評価: ★★★☆☆

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2011-06-04

東日本大震災のわずかまえに出版された本だ. ここには,津波のメカニズムから避難のしかたまで,さまざまな知識がもりこまれている. 震災からの復興が議論されているなかで注意をひくのは,「高地移転は無理である」 という記述だ. いったんは高地移転がすすんでも,やがて低地にも家がたつようになる. 今度もおなじことがくりかえされるだろうから,それをかんがえておく必要がある. だから,この本では避難に関して重点をおいていて,知っておくべきことが多い.

評価: ★★★★☆

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2011-06-06

おおくのひとが,東日本大震災をきっかけとして,日本全体がかわることを予感している. ところが,この本の著者たちは,かわるべきところもあるが,おおくの点でかわらなくてよい,いまのままでよいといっている.

原発は推進するべきであり,福島第一原発も廃炉にしなくてよいという. 欠陥だらけで痛みののひどい原発をどうやって再稼働させればよいというのだろうか (この本がもっとまえに出版されたのならわかるが,5 月に出版されているのだ).

これからインフレがおこることもないし,産業もこれまでどおりに復興させればよいという. 財政赤字もこれからさらに,つみあげていけばよいというのだろうか. 東日本大震災のショックはオイルショックのようなものだから,おなじようにのりこえていけるという. おこったことの質的なちがいも,日本の政治・経済などの状況のちがいも,おかまいなしだ.

評価: ★★☆☆☆

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堺屋 太一 と 5 人のひとのテレビ対談をまとめた本のようだ. 6 人それぞれ意見にちがいはあるが,全体としては堺屋のかんがえをつよく反映した内容になっている.

復興資金の調達には電力などのエネルギーに課税することを提言している. また,原発に関しては日本やロシアの 「基準主義」 つまり基準をまもっていさえすればよいというかんがえかたはダメで,「確率論」 つまりリスクをきちんと管理する必要があることがくりかえしのべられている.

最後には菅政権への批判や,国の進路や体制に関する議論がない復興構想会議が批判されている. 東北の復旧だけでなく,官僚主導から脱却して地域の特性をいかした日本全体の復興をめざすべきだということだ. さまざまな提言がふくまれているが,それらをどうやって実現すればよいのかはこれからの課題だろう.

評価: ★★★☆☆

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2011-06-12

いい街とはどういうまちなのか,さまざまな観点から分析されている. そのなかには,目地のこまかい街であること,低層で同業種の店が複数あり若い店員がいる商店街があること,自転車をいかせることなど,さまざまなことがあげられている. 住宅が低層だとなにがよいのかも,くわしく書かれている. 住むまちをえらべるひとにとって,また,まちづくりに参加するひとにとって,参考になる点が多々あるだろう.

評価: ★★★★☆

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菅政権はハーグ条約加盟の準備をすすめてきた. その問題についてかんがえるためにこの本を買ったつもりだった. しかし,この本に書いてあるのはハーグ条約の問題というよりは,日本の司法の問題をするどく指摘するものだった. 日本の司法関係者もある程度わかっているだろうが,外国人だから気がつく,書ける部分があるとおもえる.

「連れ去り問題」 は司法の問題だけでなく,日本の社会・伝統などからきているものでもあり,ハーグ条約に加盟したからといって解決にはほどとおいが,それが 1 歩になるのではないだろうか.

評価: ★★★★☆

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2011-06-14

被災地の地図をあつめて 1000 円という比較的やすい値段で提供している. それだけで意味のあることだろう.

しかし,浸水域がかきこまれている以外は,あらたにかきくわえられている情報はわずかだ. 福島第一原発がどこにあるのかも,よくみないとわからない. まだ出版されたばかりだが,電車の運休区間も現在とはちがっている. 石巻線は石巻まで運行しているが,この地図では前谷地までになっている. 結局,オンラインの地図でなければ電車の運休区間を書いてもあまり意味がないということだろう.

復旧はどんどんすすんでいる. どういう情報をかきこめばやくにたつのか,もうすこし検討が必要だったようにおもう.

評価: ★★☆☆☆

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2011-06-21

ゼロ年代の 17 人の論客について,かけあしで論じている. そこにはネットやオタクがたびたび登場してくるが,それらをのぞけば,ここでとりあげられいる問題も拡散的だ. もうすこししぼって,じっくり論じたほうが,ゼロ年代という時代をうまくとらえられたのではないだろうか.

評価: ★★★☆☆

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副題に TPP という文字がみえたので買ってしまったが,基本的には TPP に関する本ではない. JA グループのさまざまな組織の問題点や,対立点がふえている農家との関係などについて書いている. ときどき統計も登場するが,著者の意見をうらづけるには十分ではない. 農協やその支持者に対して戦闘的な態度をとっているが,もうすこし冷静に対処するほうが支持者をふやすことになるのではないだろうか.

評価: ★★★☆☆

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2011-06-23

海外のメディアや個人が東日本大震災時の日本人の行動をどうみたか,それをおもに日本人の著者が書いている. 震災時の日本人は冷静でたがいにたすけあい,他人に迷惑をかけず,整然と列をつくっていた. そういう評価はこれまでもきいてきたし,この本でとりあげているアメリカ,中国,台湾,韓国ほかの見方もそれと一致している. そして,この本で論じられていることではないが,それは日本人の特質というよりは災害時にアメリカなどでも出現した 「ユートピア」 なのだというかんがえもあった.

1 冊のなかで,おなじことを何回もよまされるだけではつまらない. もうすこし国によるちがいがうきぼりになるようなかきかたができれば,もっとよかっただろう.

評価: ★★★☆☆

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被災者や国内の有名人,海外などからの震災に関するさまざまなメッセージがあつめられている. いちはやく支援にのりだした企業も紹介されている. そのなかには例によってツイッターのメッセージもある. おおくのメッセージはもっと長いが,ツイッターのメッセージはより凝縮されている. そのなかには災害時でなければみのがしてしまうようなふつうのできごとが多く書かれているが,震災が日常生活をそして日本を見直すきっかけになっているようにおもえる.

評価: ★★★☆☆

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2011-06-26

東日本大震災をどう経験し,どうとらえ,どう復興すればよいとかんがえるかは,この 9 人の著者もひとそれぞれだ. 自分は被災しなかったにもかかわらず,これまでとはすっかりかんがえかたがかわってしまったひともいる. また,これまでとかわらない,つまりある意味で震災に対する準備がすでにできていたひともいるようだ.

読者 (としての私) からみれば,共感をおぼえる意見もあれば,嫌悪を感じる意見もあるだろう. 自分にちかい意見にちからづけられることもあれば,自分とはちがう意見からまなぶこともあるだろう. しかし,ひとびとはすくなくともこれだけの幅のあるかんがえをもっているということを知るべきだ. 東北をそして日本を復興させるためには,そういうかんがえをまとめていく必要があるということになるのだろう.

評価: ★★★☆☆

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2011-06-29

災害による観光業の被害や銀行の取り付け騒ぎなど,さまざまな風評被害が分析されている. そのなかには放射能に関するものもあるが,おもに東日本大震災よりまえの事件がとりあげられている. 最後の 2 章はこの震災における風評被害にあてられているが,のびのびになっていたこの本の出版が震災を機会に加速されたということだ. 立場によっておなじ 「事件」 が風評被害とみなされることもあり,そうでないこともあるというあやうさも,とりあげられている.

評価: ★★★☆☆

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つづく…

経済理論を現在の日本にあてはめるとどうなるか. 世間の常識にとらわれた結論とはまったくちがう結論がえられることをしめしている. そのポイントは震災で電力不足がおこり,ケインズ的経済がなりたたず古典派的経済がなりたつ世界になったということだ.

いま,復興財源として税金をつかうか国債をつかうかがおおきな争点になっている. これに対して著者は両方の選択肢が可能であることをしめしている. 国債を日銀にひきうけさせるのは可能だが,この方法ではインフレが生じて,低所得者にきびしい. 税のほうが公平になるという. だが,はたしてそうだろうか. もし声がおおきい者がよりすくなく税負担することになると,かならずしも税金のほうが公平とはいえないのではないか.

ほかにも,疑問の点がいろいろある. たとえば,電力不足に対処するのに輪番というような統制的な方法でなく電力価格値上げで対処するべきだという主張にはそれほどの説得力があるとはおもえない.

評価: ★★★★☆

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2011-07-02

幕末から明治維新までを第一の敗戦,太平洋戦争を第二の敗戦,そして構造不況から東日本大震災を第三の敗戦と呼んで,第一,第二の敗戦からまなんで第三の敗戦に対処する方法をかんがえている. 第一,第二の敗戦に 2/3 ちかいページ数がさかれているが,そのなかにも第三の敗戦からたちなおるためのヒントがちりばめられている. ただし,話題の中心になっているのは震災以前からある問題点だ.

震災後は理由も不明確なまま日本を賛辞する本がおおいなかで,この本は手きびしい. 日本はいまきびしい状況にあるのだから,元気はださなければならないが,解決するためには問題点をきちんとみすえなければならないということだろう.

評価: ★★★★☆

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2011-07-05

日本経済をよくするにはまず経済をきちんと理解して経済・財政のウソを見抜くこと,そして経済だけでなく原子力などでも専門知識にもとづいた議論が必要だと主張している. 著者が憂いていることのひとつはリーダーシップの不足だが,専門家をあつめて明確な目標をあたえ,たばねていくのが政治的なリーダーシップということだろう.

著者は,まずデフレを克服することが重要だが,いまだにそれができないのはまちがった政策のためであること,増税はデフレをながびかせることを主張している. 小泉政権時代の政策のただしさを主張するためにもかなりのページをさいているが,これは著者のこれまでの本にも書いていることであり,ちょっと鼻につく.

評価: ★★★★☆

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日銀や財務省がインチキ経済学にもとづくまちがった金融・財政政策をとっているから日本経済がよくならないという主張をしている. あまり他人の著書や発言を引用せず著者自身のかんがえを展開していくスタイルには,独断があるのではないかという不安を感じさせる. とくに,この本の主張からすると日銀や財務省は道理のわからないバカのあつまりだという印象をうける.

しかし,日銀が十分な金融緩和をしないからデフレから脱却できない,震災復興には国債をつかうべきであり増税するべきでないなど,おもな主張は竹中平蔵の 「日本経済こうすれば復興する」 などと共通だ. 東電に関しては負担額 4 兆円が限界という明確な数値をしめしている. ほかにもいろいろ具体的な提案があり,示唆的だ.

評価: ★★★★☆

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つづく…

2011-07-06

Part 1 がおもに復興 (構想) 会議について,Part 2 が原発と自然エネルギー,Part 3 が東北を中心に,さまざまな企業とくに製造業への震災の影響について書いている. 副題は 「どうなる,この地域,あの企業」