この本は,ゴルバチョフからエリツィンに主役が交代する時期に,ロシアがかかえる,ひとことではいえないさまざまな問題をあつかっている. とくに,のちにプーチンをも苦しめることになる生産・流通の問題点などを分析している. とくに印象にのこったのは 「資本主義との対決に一喜一憂する中で,我々は何世紀にもわたって人類が創り上げてきた多くのものの意義を明らかに過小評価したのである」 というゴルバチョフのことば (p. 74) である. このことばは,「資本主義」 や 「人類」 を日本をとりまく局所的な文脈でよみかえることによって (たとえば 「人類」 を 「日本人」 とよみかえることで) 破壊的なマルクス主義の影響からぬけだしていない現在の日本にも警鐘となるであろう.
評価: ★★★☆☆
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3 つの章のうち 2 つはソビエト崩壊の予測に関係している. しかし,3 章では突然,日本の非武装中立論を批判している. 1990 年前後の小室直樹の本は饒舌で脱線が多いが,それにしても…
評価: ★★★☆☆
関連リンク: ソビエト帝国の崩壊@Amazon.co.jp. (品切れになっているので,古書があるときだけ買えます.)
最初の何章かは従軍慰安婦問題,東京裁判の問題など,すでにほかの論者によってさんざん書かれている内容である. そのなかには 「選挙コンプレックスがニクソンの生命取りになった」 (p. 113) というような,おもしろい話がちりばめてあったりはするものの,あまり新鮮さは感じられなかった. 3 章からは日本資本主義の分析など,小室らしい話題が登場するが,私にとってもっともインパクトがあったのは第 4 章 「なぜ,天皇は 「神」 となったのか」 である. 最近は教育勅語が現在でも有効な常識的な内容だとする意見が多くなっているが,小室によれば教育勅語はキリストのような現人神である天皇が儒教にはないまったく新しい規範を説いたものであるという. これぞ小室天皇教の真髄であり,逆にいえば教育勅語の “復活” に注意が必要だということでもある.
評価: ★★★★☆
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著者は戦国時代から明治時代にいたるまでのさまざまな武士道を比較しつつ論じている. 「明治武士道」 というと新渡戸や内村などのキリスト教徒の思想が有名だが,この本では当時むしろ優勢だったが 「敗戦とともに忘れ去られた」 井上哲次郎らの国家主義者による明治武士道についても論じている. この本でもくわしく論じられてはいないが,いま,敗戦とともにうしなわれたものをほりおこすことが必要であり,このような明治武士道もほりおこすべきもののひとつなのではないだろうか.
評価: ★★★★☆
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宮台真司の本には粗雑なものが多い. この本に関しても他のレビューで誤字脱字の多さや注釈がないことが指摘されている (注釈がある本でも場違いなことが多い). たくさんのひきだしのなかみをチラチラとひけらかしてくれて,つまりカタログ的にいろいろなことが書いてあるので,それをヒントにかんがえたり,ほかの本を読んだりすることはできるが,この本だけ読んでも宮台のように知識がない私には,それらの断片を理解することができない. もっと,だれでもわかるように,ていねいに書いてほしいものである.
評価: ★★★☆☆
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「大論争」 というと,国民の権利のありかたや,憲法における天皇や国政組織のかたちなどについて論争がくりひろげられるさまを想像してしまう. ところが,この本のおもな内容はそれとはまったくちがっていた. 日本国憲法はマッカーサーがきめたのか国会がきめたのか,国際法上有効なのかどうか,などなど,憲法の制定過程などに関する議論がほとんどである. 民主主義にとって手続きが重要であることはもちろんだが,もっと内容に関する議論が必要なのではないだろうか.
この本の解説のなかにも 「この 50 年間,憲法改正 (中略) の論議が深まったということはなかったのである」 とかかれているが,それはいまだに議論のおおくが具体的な憲法の内容にふみこまずに,手続きなどに関する不毛な論争をくりかえしているだけだからではないだろうか. もっと条文の内容にたちいって議論しないかぎりは,いつまでたっても議論はふかまらず,日本の民主主義もふかまらない. そして,気がついたら,むりやり国民投票にかけられているということになりかねない.
こういう “からっぽの議論” が 50 年前にはじまっていたことを確認する意味で,この記録は貴重なものだといえるだろう.
評価: ★★★☆☆
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8 月 12 日に NHK で 「鬼太郎が見た玉砕」 を見た.
これは水木しげるの 「総員玉砕せよ!」 (集英社板,講談社文庫版
) にもとづいていて,水木によれば,ラバウルでの体験を 「90 パーセント事実に基づいて」 書いているが,一部,脚色された部分がある.
水木の作品にはより経験に忠実に書いた 「水木しげるのラバウル戦記
」 もある (Web 上の 「水木しげる伝」 にも同様の内容が書かれている).
すでに Web 上にいろいろな番組評,書評が書かれているが,そのおおくは戦争の悲惨さ,二等兵の悲哀などについて書かれている. しかし,私がもっともつよく印象づけられたのは,名誉のため玉砕を志向する大隊長とそれを避けて兵士たちをすくおうとする中隊長のはげしい対立,そして一時的にはすくわれた兵士たちが結局はメンツを重視する参謀によってふたたび玉砕をしいられるところだった. とくに,前者には 「武士道」 とのつながりを感じてしまう. この部分に注目している評がないことがむしろ,ふしぎである.
日華事変以来,日中の関係はよかったとはいいがたいのですが,小泉政権下で最悪になり,現在も十分回復したとはいえません. その原因としては中国の日本への (あるいは中国人の日本人への) 誤解もあるでしょう. しかし,日本人に欠けているもののひとつは,ながい歴史と文化をもつ中国への敬意ではないかとおもいます.
この本は、最近多数出版されている自虐史観のみなおしに関するものである. 米軍の占領政策のなかで日本人が洗脳されたという指摘はすでにさんざん読まされているが,この本では日本が戦前あやまった方向にふみだすにあたっても,また戦後の占領政策も最近の 「ジェンダーフリー」 運動も 「社会主義」 に影響されたと主張している. なにもかも 「社会主義」 のレッテルをはりつけてしまうことで真実をかくしているようにおもえる.
とはいえ,大陸における戦争の一因をもともと日本の弱腰外交,英米と協調した出兵をしなかったことなどをもとめている点などは,きくに値するようにおもえる. 弱腰ではかえって戦争をまねいてしまうということはドイツに対する各国の対応でもいえることであり,現代日本にもあてはまるとおもう.
評価: ★★★☆☆
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ちかごろの本はただ平易でよみやすくするばかりで,味わいのない文章がおおい. それに対してこの本の著者は 「本を大量に読み,文章を膨大に書きなぐるという過程を子供の頃から無意識で繰り返しては来たのだが,文章に味わいや品格というものがどうにもこうにも涌いてこない」 と書いてはいるものの,この本はひと味ちがっている. また,通説にとらわれず,2 ちゃんねらーについても小林秀雄や藤原正彦も独自に理解しようとしている. 疑問の点も多々あるが,得るところもある本である.
評価: ★★★★☆
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NHK の大河ドラマにおける篤姫は,当時の日本においては自分ですすむ道をきりひらくことはできず男にしたがうしかないということをみとめつつも,できる範囲で自発的にかつ積極的にふるまっています. いわば,社長にはしたがわざるをえないが自分の権限の範囲ではおおなたをふるえる “副社長” として,最大限の努力をしているようにみえます. それはあたかも現代の企業における経営者 (副社長) のようにえがかれているように私にはみえます.