阪神大震災 -- 情報ボランティアとコンピュータ・ネットワーク -- 情報ボランティア編

第 0 版 : 1995-5-2,第 1 版 : 1995-5-26, 第 2.63 版 (このページの最終改訂日) : 2003-10-19.

目次

  1. 動機と謝辞編
  2. WWW 編 [前ページ]
  3. 情報ボランティア編 [このページ]
  4. 政府・自治体編 [次ページ]
  5. 手記・ミニコミ編
  6. 資料編

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注意 : このページの内容はかぎられた情報源にもとづいているので,網羅的ではありません し,内容の正確さは保証しません. しかし,あやまった記述はなくすように努力していますので,お気づきの点がありましたら著者に電子メイルでしらせていただければさいわいです. このページや著者による下位のページへのリンクはどうぞご自由におはりください. また,原文の趣旨をまげないかぎりコピーや引用も自由です.

最近の情報


■ はじめに

著者がこれまでに知りえた情報は,この震災に関連してコンピュータ・ネット ワークがどうつかわれたかの全体像を知るのに十分なものとは到底いえません. しかし,著者が知っている範囲では,つぎのような目的でつかわれたとおもい ます.

このページでは被災地とボランティア・支援者をむすぶ通信について, みていくことにします.

阪神大震災において被害の拡大,物資の過小・過多などのさまざまな問題をひきお こした最大の原因は,情報がうまくながれなかったことにあるとかんがえられます. 政府や兵庫県もけっして手をこまぬいてみていたわけではありませんが,必要な 情報が入手できなかったこと (入手するために十分な手をうたなかったこと) や, そもそも何が必要な情報であるかが わからなかったことが初動をおくらせ,問題をおおきくしたといえるでしょう.

ボランティアに関しても,情報の不足のために,ボランティアをもとめている場所は あるのになかなかみつけられなかったり,どこでもっとも深刻な問題がおこっている のかがわからなかったりしました.そこで,ボランティア間,あるいは被災者とボラ ンティアや支援者をむすぶためのさまざまな方法がくふうされました.そのなかには もちろん電話や FAX などの従来的な方法もありますが,ニフティ・サーブを中心と するパソコン通信がおおきなやくわりをはたし,また一部でインターネットもつかわ れました.そして,情報流通のためのボランティアである「情報ボランティア」が 活動しました.

これらの「情報ボランティア」団体のなかで情報 VGポンポコ救援隊などは 2 月初頭に 体制をつくっていましたが,いくつかの「情報ボランティア」団体やネットワークを またがる組織が体制をととのえたのは 3 月にはいってからで,そのときすでに震災 ボランティア活動のピークはすぎていました.これらの組織のいくつかは,4 月に はすでに活動の中心をきたるべき災害や日常のボランティア活動の支援にうつしつつ あります.

阪神大震災における情報ボランティア一般に関する資料として,つぎのものを あげておきたいとおもいます.これらは,著者とはちがって被災地での情報 ボランティアにたずさわったひとによる各ボランティア団体やネットワークと その関係についての記述です.これらを通読することで,このページの不備を おぎなってください.(ボランティアにかかわった方でこれらの記述だけでは まだ十分でないとおかんがえの方は,ぜひ,あらたな文章をお書きください. ここにも掲載させていただきます.)

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■ パソコン通信とボランティア

このページにはニフティ・サーブ をはじめとするパソコン通信に関するデータはほとんどあり ませんし,著者はニフティの幽霊会員なのでそこでおこっていたことをよく把握して いません.しかし,ここではおもにインターネットからかいまみた彼らの活動に ついてふれることにします.

震災後 2 月はじめまでは,ボランティアたちはおもにニフティの掲示板などで連絡 をとっていたようですが,私はその時期のことはまったく知りません.彼らをつなぐ 組織やネットワークとして下記のようなものがしだいにできて,ニフティを中心に 活動していました.ただ し,この震災では非常に多数のボランティア団体や個人が活動していて,ここに列挙 したのはそのなかのほんの一部にすぎないことは,いうまでもありません.また, 下記の各組織やネットワークはまったく独立のものというわけではなくて, おおくのひとが複数の組織やネットワー クにまたがって活動していたことにも注意する必要があるかとおもいます.

● ニフティ・サーブ「活動相互連絡室」 (``Inter Volunteer'')

ボランティアたちのはたらきかけによって, ニフティ・サーブは無料で利 用できる震災ボランティア・フォーラムを開設しました.そのなかで,ボランティアの 相互連絡のためにつくられたのがこの会議室です.その後あちらこちらでつかわ れるようになる「インターボランティア」ということばも,この会議室の SysOp である 小畑 雅秀 氏 によって最初につかわれたようです.この会議室が下記の IVN をささえるインフラだったといえるでしょう (したがって,その資料もあわ せて参照してください).活動相互連絡室の 関連資料はいまのところ,インターネット上にはほとんどありません.WWW など でアクセスできるように整備するとよいと私はおもいますが,そのためには 著作権などの問題をクリアする必要があります. 活動相互連絡室への発言は 6 月まではニフティ・サーブにログインすれば読む ことができましたが,その後震災関係のメニューがとじられて,活動相互連絡室 の記録もみることができなくなってしまいました.

● インターボランティア・ネットワーク (略称 : IVN)

IVN は,さまざまなボランティア団体やボランティアをしている個人のあいだの 情報共有のためにつくられた連絡網で,70 をこえる団体や個人が登録していま す.神戸電子専門学校に 2 月はじめから 4 月 28 日まで (物理的な) 連絡所が おかれ,コンピュータ・ネットワーク上ではニフティ・サーブの震災ボランティ ア・フォーラムなどを中心に活動していたようです.IVN によく似たなまえを もつ「ネットワーク」としてインター V ネットがあ りますが,インター V ネットはボランティアをつなぐという共通の目的をもって いるものの,IVN よりあとでつくられた別の存在です.IVN の関連資料としては つぎのようなものがあります.

● 情報ボランティア・グループ (略称 : 情報 VG)

情報 VG は,パスワードが公開されたニフティ・サーブの パティオ (小会議室) を中心として,各避難所等の情報収集・支援団体等への情報 配布・連絡などをおこなってきました.「情報ボランティア」という,いまでは 普通名詞となってしまったことばも情報 VG 代表の岡本氏がつかいはじめた ようです.情報 VG が収集した情報は そのホーム ページ http://www.riken.go.jp/news/infov/ (その ミラー http://www.iij.ad.jp/earthquake/infov/index.html) や FTP を通じて アクセスできます.ただし,利用範囲は被災者を支援するためという条件が ついています.関連資料をあげます.

● 補足

なお,震災を契機としたボランティア団体の発生形態については 清水氏による補足 を参照してください.また,清水氏はNews!IVN 川村班などもわすれてはならな いということに言及しています ("News! については,とりあえず「ニュース ! について」 という記事だけをあげておきます). 上記のものをふくめて,ニフティ・サーブにもうけ られていた連絡場所が池田氏によってまとめられています. 情報ボランティアにつかわれたパソコン通信がニフティだけではないのは もちろんです.PC-VAN,朝日ネット, People などの大手はもちろん,草の根 BBS でも重要な情報がやりとりされたときいています.しかし,残念ながら著者はそれ らの活動についてはほとんど知りません.

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■ インターネットとボランティア

コンピュータ・ネットワークを連絡用につかったボランティアの大半はニフティ・ サーブをはじめとする BBS をつかいましたが,インターネットをつかったグループ もありました.ここでは,インターネットをつかっていたグループとして, World NGO Network (WNN),ボランティア支援グループ (VAG),神戸大情報流通 ボランティア・メーリングリスト (Quake-VG) などについて書きます.

● World NGO Network (略称 : WNN)

WNN (ホームページ http://www.center.osaka-u.ac.jp/people/wnn/) は NGO による震災復興ボラン ティア活動における情報活動を側面から 支援するために阪神大震災後につくられた組織で,大阪 YMCA を拠点として活動 しました.震災ボランティアの前線でインターネットを連絡網としてつかってい たほとんど唯一の組織だとおもわれます.関連資料としてつぎのようなものが あります.

● ボラン ティア支援グループ (Volunteer Assist Group, 略称 : VAG)

VAG はボランティア活動をしている団体や個人に対する人的資源の 提供をめざしてつくられたグループです. 中心的な活動は,ネットワークにあがってくる情報を各ボ ランティア団体が使用しやすい形態に編集して,インター V ネットのニューズ グループ (tnn.interv.survivors.life-info) などに再投稿することでした.会員間の連絡にはインターネットでむすばれた 数個のメイルリストをつかって いましたが,会員の多数はニフティ・サーブを通じてメイルにアクセスしていま したし,ニフティの情報 VG パティオや活動連絡室で VAG に関する発言が しばしばおこなわれていましたから,「インターネットとボランティア」の項目 に分類するのは適切でないかもしれません.WWW のページとしては 比較的あたらしいページ http://www1.meshnet.or.jp/~vag/index.html と以前からのページ http://www.osaka-med.ac.jp/vag/vag.htmlとがあり,ほかに Gopher, FTP などの手段ももって いますが,これらはいまのところ内容豊富とはいえません.関連資料と してはつぎのようなものがあります.

● 神戸大 情報流通ボランティア・メーリングリスト (略称 : Quake-VG)

神戸大学や周辺地域の復興をめざした神戸大学内および周辺の協力者とのコミュ ニケーションのためにつくられたボランティア・グループのメイルリストです. ホームページ http://opensun.kobe-u.ac.jp/kobequake/quake-vg/quake-vg-index.html がよくできているので,つけくわえることはあまりありません. このページのもとには,つぎのような情報があります.

● 補足

インターネット上では,震災に関するニュースは当初はおもに fj.misc にながされましたが, 震災直後に fj.misc.earthquakefj.misc.earthquake.people という 2 つのニューズグループがつくられました.これらは緊急性を要するため, インターネットにおけるニューズグループ開設のための通常の手続きをへずに つくられましたが,その後投票によって存続がみとめられました. また,その後 IIJ によって tnn.disasters.earthquake というニューズグループがつくられました.これらのニューズグループはインター V ネットのニューズグループがつくられるまで,震災に関する主要なニューズグルー プとしてつかわれてきました.

インターネットとボランティアのかかわりに関するその他の資料として,つぎの ようなものがあります.

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■ ネットワークをまたがる情報のながれ

よりおおくの支援者と連絡をとるためには,ひとつのネットワークにアップロードさ れた情報をほかのネットワークにも転送する必要がありました. ニフティ・サーブを はじめとする BBS とインターネットとのあいだ,および BBS 間には,すでにメイル を自動転送する機構は実現されていました.それがまだ実現されていなければ, ネットワークをまたがる震災関連の情報流通ははるかに困難だったでしょう.しか し,ニュース記事 / 会議室の発言を自動的に転送することは,まだ実現されていま せんでした.そのため,震災後,おおくの情報ボランティアが手動による転送を おこなっていました.このようにしてとくに重要な情報はネットワークをこえて ながれるようになっていましたが,より密なネットワーク間の 連絡のためには,これを自動化する必要がありました.

このようなネットワークどうしの透明な結合を実現したのが インター V ネット です.インター V ネットは慶応大の 金子 郁容 氏らによっ てつくられ,ネットワークの透明な結合のほかに,ニフティ・サーブ,PC-VAN など のパソコン通信における震災情報 (インター V ネットが提供するもの) の 無償提供を実現しました. インター V ネットは,被災者のためのニューズグループ (生活情報メッセージ情報や物資の情報), ボランティアのためのニューズグループ (地震関係の募集一般の募集応募), 各種のおしらせ (VCOM から行政機関・業界団体からNGO/NPO から企業から), 復興にむけての情報交換と提言ユーザー会議室インター V ネットに関する種々の議論インター Vネットと BBSとの接続のための 技術情報英語によるインター Vネットの 情報 という 10 をこえるネットワークをこえたニューズグループ/ 会議室を IIJ のもとに つくりました (これらのニューズグループについては 資料編に,よりくわしい情報があり ます.また,もちろんインター V ネットの WWW にも リスト があります).これらのニューズグループは,インターネットからだけでなく, 各パソコン 通信の会議室としてもアクセスすることができます

インター V ネットの WWW サービスは '95 年 5 月に一応たちあがりました.8 月ごろには,まだ正式な アナウンスはされていなかったものの, インター V ネットのこれまでの展開のように,ある程度有用な情報が提供されるようになっ ていました.その後 '97 年 12 月までは運用されていたようですが,現在では アクセスできなくなってしまいました. インター V ネットの広報資料としては,つぎのものが あります (これらのおおくはインター V ネットの WWW サーバにとりこまれていま した).

ネットワークを相互接続するにあたっては,各ネットワークにおける文化のちがい などをのりこえる必要があります.ネットワークのあいだでタイトルのみえかた, つけかたや使用可能な文字セットのちがいなどがあるため,インター V ネットの ニューズグループに投稿する記事にどういうタイトルをつけるべきかということ だけでも,かなりの議論がありました.文化のちがいに関しては,タイトルを英語で つける習慣がある,半角カナ文字がつかえないなどの点でインターネットが日本の なかではむしろ特殊です.``文化のちがい'' に関する資料として,つぎのものが あります.

インター V ネットに関しては,IVN とまぎらわしいそのネーミング (参考資料 1, 2, 3 -- 無断転載 !) や,あいまいな 意思決定,なかなかととのわなかった体制などに対して,ニフティ・サーブの 活動連絡室などにおいて,おおくの批判がなされました. 批判の一部をまとめたもの (発言者に無断で転載 !) をよむことができます.しかし,批判される べき点が多々あるとしても,インター V ネットのようにネットワークどうしの自動 的な連係を実現したインフラストラクチャはインター V ネット以外にはありません)). 震災ボランティアがもとめられなくなったあとも,日常的なボランティア活動・ 市民活動のためや今後おこりうる災害へのそなえのために 発展させていくべき組織だと著者はかんがえます.インター V ネットは 4 月までは 少数のボランティアによって運営されてきましたが,上記のような批判をうけて 組織改編しVCOM という慶応 大学の研究プロジェクトによってささえられるようになりました. インター V ネットは当初 1 年をめどに活動することになっていましたが, このプロジェクトは 3 年間は継続する そうです.

その他のインター V ネットの関連資料として,つぎのものがあります.

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■ 情報ボランティア活動の役割と問題点

郵政省や兵庫県などのちからによって避難所にくばられた 200 台のパソコンが十分 役にたっていないという声があり,また情報ボランティアによる情報のアップロー ド・整理がやくにたっていないという声もありました.情報ボランティアはどれだけ どのようにやくにたったか,あるいはやくにたたなかったか,またどうすればより役 にたつような活動ができるのかをしらべることが,今後おこりうる災害にそなえる うえで重要だとかんがえられます.わずかですが,そのための参考資料をここに列挙 します.

● パソコン通信は役にたつか ?

資料だけをあげておきます.

● 情報の検索可能性 -- 情報フォーマットの統一と変換

情報ボランティアがいくら多数の有用な情報をニューズグループに投稿したと しても,それが避難所でうまく検索できなければ,つかうことはできません. 避難所でつかえる検索手段はかぎられているので,うまく検索できるようにする ためには,情報フォーマットをできるだけ統一する必要がありました.そのため に,情報 VG の清水氏は彼がひらいたニフティのパティオで, 現在「清水フォーマット」 (または 「ふぁなろんフォーマット」 -- ふぁなろんは清水氏のニフティでのハンドル (通称) です) とよばれているフォーマットを提案しました.彼がかかげた目標は 「玄人が苦労して情報登録・ 素人が楽して検索」というものでした.この目標がどれだけうまくいった のか,また今後はより柔軟な検索ツールがつかえるようにして,もっとフォー マットをゆるめるほうがよいか,などの点をかんがえるべきかとおもいます.

関連資料をあげておきます.

● 電子媒体によるコミュニケーションのいきちがい

電子メイルやニューズグループなどの電子媒体によるコミュニケーションに おいては,面談や電話にくらべて語数がすくなくなるうえ,非言語的な 情報がほとんどつたわらないため,いきちがいがおこりやすくなります.日常の 通信では,推敲など,それをおぎなう手段をとることができますが,情報ボラン ティア活動をしているときには時間的余裕がないなどの理由から,いきちがいが おこった例がすくなくないようです.問題の性質上,原文へのリンクをはるのは 困難なものもありますが,著者が知っている例を列挙しておきます.

● ネットワーク相互接続の問題点

文化のちがいがもたらす問題点については インター V ネットのところで書きました.

● Proposal for 811 Emergency Communications

M. Noam and Harumasa Sato による提言の草稿 があります.阪神大震災の経験からまなんで 緊急時のコミュニケーションを根本的にみなおして,インターネットのような ひらかれたシステムをつくろうという趣旨の文章.下記はそのなかからの いくつかの抜粋です.

これに関連するアンケートのコピーもあります.

● その他の資料

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著作 (C) 金田 泰 (ご意見・ご感想は yasusi @ kanadas.com におよせください)