VCOM NEWSLETTER vol.1, no. 8, 1996.2.10 VCOM ニュースレター ネットワークバージョン このニュースレターでは、まずVCOMについての一般的な説明をし、その後でVCOMに関 して今回新たにお伝えしたいニュースを扱います。 *****VCOMの概要***** VCOMとは何か VCOMはインターVネットやインターネットを使った慶応大学の金子郁容研究室を中心 とした情報コミュニティ作りに関する実証研究プロジェクトである。情報コミュニテ ィというのは、社会や生活について目的や関心を同じくする多様な人たちが情報共有 することで作りだす「まとまり」のことだ。VCOMの目的は、多様な社会の実現に向け ての新しい社会システムのモデル作りで、VCOMを特徴づけるキーコンセプトは以下の 三つである。 ・ボランタリーなネットワーク ・社会性の高い情報の共有 ・市民の自発的参加による新社会システム インターVネット:情報共有空間の提供 インターVネットとは、インターネットのネットニュースを基盤にしていくつものパ ソコン通信ネットをつなぐ情報共有の仕組みで、現在、NIFTY-Serve、PC-VAN、Peopl e、アスキーネットなどと連動している。どのネットにも『インターVネット』という 名前の共通会議室グループが設置され、同じ情報が共有され、また、どれかひとつの ネットに入力した情報は他の全てのネットに発信される。つまり、インターVネット は、インターネットとパソコン通信をつなぐオープンな情報共有空間を提供するしく みである。 VCOMの主な活動 インターVネットのホストシステムの運用 インターVネットのアーカイブを保持したり、VCOMケースプロジェクト実施のために 、インターVネット共通会議室の設置、インターネットアドレスの提供、PPP接続のサ ポート、メーリングリストの提供、ニュースのフィード、MAIL TO NEWS および NEWS TO MAIL サービス、WWWサーバの提供、WAIS検索サービスなどのネットワークサービ スを実験的に提供する。 VCOMケースプロジェクト 具体的な情報コミュニティ作りのプロジェクトで、それぞれ独立の実施責任者と実施 母体を持つものである。現在、以下のようなものがVCOMケースプロジェクトとして認 可され実施されている。 A:震災支援ネットワーク A-1:阪神・淡路大震災被災者支援のための市民メディアの提供 A-2:阪神・淡路大震災時における電子ネットワークの役割についての「共同知」形 成のための本の出版 A-3:「パソコン通信ネット連絡会」による災害時対応の受け皿作りへの協力 B:NGO/NPOネットワーク B-1:WOM(Women's Online Media;女性学ホームページとネットワーク作り) B-2:草の根BBSとインターVネットの接続 B-3:NPOの法的環境整備フォーラム B-4:N3(NGO/NPO Network;NGO/NPO研究のネットワーク) B-5:ボランティアのためのパソコンと通信入門研修 C:市民参加の社会システム作り C-1:地球市民のための電子ガイドブック C-2:インターネットを利用した障害者の在宅雇用モデル作り C-3:JDネット(障害者に関心を持つ人のネットワーク) C-4:インターナショナルフォーラム(留学生や在日外国人に関心を持つ人のネット ワーク) C-5:地域ボランティア・データベース C-6:淡路島地域情報化パイロットプロジェクト VCOMの運営体制 VCOMは慶応大学SFC(湘南藤沢キャンパス)の研究プロジェクトで、その運営組織は 、アドバイザリーボード、運営委員会、システム運用チーム、VCOM事務局(編集工学 研究所に委託)などから構成されている。現在の運営委員:小澤太郎(SFC)、金子 郁容(SFC;運営委員長)、鏑木孝昭(末廣ハウス)、田村次郎(SFC)、花田光世( SFC)、村井純(SFC)、吉村順子(末廣ハウス)。 VCOM参加・協力団体 VCOMに参加するには、研究支援金を提供する、ケースプロジェクトの実施グループと なるなどいくつかオプショナルな形態がある。研究資金を提供していただいている「 研究コンソーシアムメンバーは以下のとおり: 淡路島インターネット協会、ニフティ、日本サンマイクロシステムズ、日本電気、野 村総合研究所、富士通、編集工学研究所、和光会長服部禮次郎氏(個人寄付) 機器/ソフトを提供していただいている企業は以下のとおり: アップルコンピュータ、IIJ(インターネットイニシアティブ)、ソニー、東芝、日 本IBM、日本サンマイクロシステムズ、日本シリコングラフィックス、ネットマネー ジジャパン、三岩グループを通じて富士通 *****What's New about VCOM***** 以下では、VCOMを巡る最近の話題や研究活動の動きをお知らせする。次回のニュース レターでは、ケースプロジェクトの進捗状況を御報告する予定である。 電子ネットワーク協議会特別賞 受賞 VCOMは、パソコン通信ネット各社で構成される電子ネットワーク協議会より『1995年 度特別賞』を受賞し、1995年11月1日に名古屋で表彰された。受賞理由は「パソコン ネットとインターネットにおけるボランティア活動を結ぶという新しい試みにより震 災時におけるメディアとしての電子ネットワークの役割を広く世間一般に認識させた 」というものだ。有難うございます。 COMPAQ MEDIA SALON賞 受賞 VCOMはまた、「パーソナルコンピュータの文化・社会・経済との関わりおよび歴史的 役割を探求する研究・調査・取材活動を奨励するため、さらに、コンピュータを用い た芸術活動を奨励するため」に本年度新設された『COMPAQ MEDIA SALON 賞』を受賞 することになった。「神戸大震災時の支援活動をつうじてパソコン通信の有益性を広 く社会に認知させた」ことが受賞理由とのこと。表彰式は3月18日に東京六本木のコ ンパック・メディア・サロンにて行われる。こちらも、有難うございます。 「災害とネットワーク」会議室の成果を本に 阪神・淡路大震災のときには、インターネットやパソコン通信が活躍したとマスコミ などで盛んに報道された一方で、被災地ではパソコン通信など役に立たなかったとか 、インターVネットを含むパソコン通信の会議室は利用しにくかったなど批判的な声 もある。そこで、インターVネットでは「災害とネットワーク」という会議室を開設 し、電子ネットワークの役割について体験に基づく意見や今後の提案について意見交 換をすることを呼びかけた。この会議室はかなりの賑わいを見せ、これまでに350を 越える発言があった。この会議室の特徴は、VCOM編集チーム(代表:金子郁容)が発 言を取捨選択し編集したうえで、他の材料と併せて一冊の本として出版するというこ とをお断りしたうえで開設したということだ。この目的のための会議室を利用は1月 末をもって終了した。本はNHK出版から5月末には出版される予定である。 災害時の情報システムに向けての協同体制が発足 去年の震災時の教訓を生かして各BBSが災害時の情報提供や情報流通をスムースに実 施できるような共同歩調をとるために、郵政省の呼びかけによって「パソコン通信ネ ット連絡会」が発足した。情報共有の仕組みとしてインターVネットが採用されるこ とになった。VCOMも「連絡会」に協力して行く。 金子郁容は、「連絡会」の協同体制を具体的に決めるための「非常災害時検討部会」 の部会長として、パソコン通信事業者、郵政省、国土庁、東京都や横浜市の担当者な どによる検討結果を「災害対応要項」としてとりまとめた。その内容は2月2日に記者 発表された。概要は以下のとおり。詳細はVCOMホームページを参照のこと。 企業・行政・VCOM三者の協力体制が実現 阪神・淡路大震災からのひとつの教訓は、災害時の情報の提供や流通は行政だけとか 企業だけではできないということだ。ボランティアがだいぶ活躍したが、もちろん、 ボランティアだけでできるものではない。そこで各方面の協力が必要になるのだが、 「連絡会」は、パソコン事業者を中心にして、行政が災害情報システムの存在を地方 自治体やライフライン事業者に知らしめたり情報提供を要請するという形で協力し、 VCOMはインターVネットの提供ということで協力する。企業・行政・ボランタリーな 研究機関の三者がそれぞれの役目を果たす形で協力するという体制が実現した。 会議室グループ A とグループ B 「災害とネットワーク」会議室でもしばしば指摘されたことは、電子ネットワーク上 の情報のうち、マスコミの記事が再入力された二次、三次情報が少なくなくて、信憑 性や鮮度に関して問題があるというものだ。「災害対応要項」では、それらの意見を 踏まえて、会議室をふたつのグループに分けた。 グループAは、ライフライン情報、行政や現地対策本部からのお知らせ、それにマス コミ事業者からの情報という、いわば公式の情報を、情報の発信源に直接入力しても らうことを前提とする。これらの会議室は、読みだし専用として一般のユーザは書き 込めないようにした情報提供の場所である。一方、安否情報やもろもろの生活情報、 それにボランティア募集などについては、行政や特定の企業だけの情報では成立しな い。これらは読み書きできるグループB会議室として自由なやりとりを促進する情報 交換の場所とする。グループAについてもグループBについても、読みやすくするため にテーマ毎に別の会議室を設け、各会議室では発言やタイトルのフォーマットを「連 絡会」が提案し、検索や参照をしやすくする。また、安否情報についてはプライバシ ーに配慮した利用法を呼びかけることにしている。 「連絡会」は、また、インターVネット上に「災害情報アクセスガイド」を設け、地 方自治体や地域団体がそれぞれもっている防災体制や災害対応についての情報のあり かをリストアップしてもらう。さらに、「連絡会」の活動紹介をするホームページも 設置される。 技術的課題 「災害対応要項」の効果的な実施のためには、いくつかの技術的課題がある。まず、 これまでのインターVネットの経験で、ひとつのパソコン通信ネットから別のネット に情報が移動するのに、ときにはかなりのタイムラグがあることが分かっている。災 害時のメディアたらんとするなら、このタイムラグは可能なかぎり短くすることが望 ましい。さらに基本的には、各パソコン通信ネットやそれらを結ぶインターネットが 、現状では、東京一極集中しているという大きな問題がある。この一極集中体制を分 散させることは「連絡会」の範囲を超えることであるが、今後真剣に検討されるべき 課題である。 「連絡会」の活動の一部(「災害対応要項」より抜粋) ・連絡会は、協同して「連絡会ホームページ」による情報提供を平常時より行う。ま た会員事業者は「災害情報アクセスガイド」を平常時より開設する。 ・連絡会は、各会員事業者のネットワークとインターネットの接続、バックアップ体 制、ネットワーク利用者のユーザ・インタフェース等に関する技術的課題について継 続的な検討を行う。連絡会は、上記技術的課題の検討結果を実証するために各種実証 実験を実施する。 ・各会員事業者は、発災時には「災害情報アクセスガイド」の存在を自社のネットワ ーク利用者に周知し、「災害情報会議室」を見えやすい位置に掲載し、その存在を自 社のネットワーク利用者に周知する。 ・連絡会は、政府、地方公共団体、ライフライン事業者、報道機関、各会員事業者の ネットワーク利用者、インターネット利用者に対し、「災害情報アクセスガイド」及 び「災害情報会議室」の存在を周知し、関連情報の掲載について協力を要請する。こ の際、必要に応じて各会議室の基本的なフォーマットを定め、情報提供者に対し、フ ォーマットの利用を呼びかける。 VCOMの詳細についてはホームページを御覧いただくか、以下にお問い合わせください。 VCOMホームページ:http://www.suehiro.nakano.tokyo.jp 問い合わせメールアドレス:recpt@vcom.suehiro.nakano.tokyo.jp VCOM事務局:編集工学研究所(担当森川美鈴) morikawa@eel.suehiro.nakano.tokyo.jp 〒153 目黒区青葉台1-4-7-101  電話03-3780-0800、fax 03-3780-0900