Return-Path: MGG01363@niftyserve.or.jp Date: Fri, 26 May 1995 20:51:00 +0900 From: 今井 真人 Subject: 私の情報ボランティア活動(総まとめ) To: yk@trc.rwcp.or.jp MIME-Version: 1.0 Content-Type: text/plain; charset=iso-2022-jp デジタル地図による情報公開について 【解決できたこと】  位置情報の収集(名称、住所、電話番号など)とデジタル地図化の仕事の分 散、連携。  デジタル地図化のノウハウ蓄積(100ヵ所程度なら、慣れれば2時間ぐら いで登録可能。)  デジタル地図の配布(ファックスで個人配布、電子メールで個人配布、デー タライブラリ登録による不特定多数配布方法の確立)  被災地域のデジタル地図配布の著作権問題解決(住友電工(株)役員の決断。 今回のような非常事態が発生したらこそ譲歩されたと思われる。阪神大震災が なかったら、実現しなかったことの1つかもしれない。)  地図の画像処理(圧縮)の確立(鈴木氏の試行錯誤によるもの。最終的にGIF 形式がデータ量が最も少なかった。)  位置情報の統合(ファイルマージ処理。たとえば、避難所と風呂の位置情報 を統合すると、一番近い風呂屋さんが特定できる。今後は各社ナビゲーション システムのデータ互換が必須。) 【解決できなかったこと】  位置精度の向上(±500m程度しか確保できなかった。また、出力するA4 用紙にいろいろ情報を詰め込み縮尺を大きくすると精度が下がる。住所などを 連記したが、不十分だと思う。デジタルマップそのものの道路、建物などの情 報精度が都市部で2倍程度必要。地震以前の段階で避難所の位置情報は詰めて おくべき。)  機材の操作性の向上(Macintoshとアトラスメイトの操作ができる方が、少 人数だった。またアトラスメイトが操作しにくかった。)  機材が高価(地図作成用に1システム30万程度かかる。今後、パソコンの 価格が下がることで解決可能。)  被災地域以外のデジタル地図の著作権問題未解決(阪神地区以外の情報を公 開できない。各都道府県単位の被災者用住宅情報を公開できなかった。住友電 工(株)より現在まで返答無し。)  パソコン通信されている方にしか、恩恵が得られない(現状では止むを得な い。)  個人の位置情報の公開によるプライバシー保護(個人に対する不特定多数の 問い合わせ電子メールの集中。)  地域の生活情報を大域に公開することの摩擦(避難所の位置を公開すること で、犯罪が発生しないだろうかと不安になる。) 【まとめ】  デジタル地図をネットワークで公開されると、その位置情報が、かなりの精 度で誰にでもわかってしまう。いろいろな可能性を秘めているが、社会状況が 変化しないと解決できないことも多い。プライバシー保護に走りすぎると、シ ステムは活用されなくなってしまう。人類全体でモラルの向上をはからなけれ ば、いろいろな不都合が表われる。コンピュータは便利な道具だが、それをど う生かすかは私たちにゆだねられている。 NIFTY:MGG01363 今井真人 --------- デジタル写真の公開用データライブラリについて 【解決できなかったこと、まとめ】  デジタル写真の公開用データライブラリがニフティサーブ(震災ボランティ アフォーラム)において作成されなかった。肖像権、内容検査のための労力が 無駄。写真そのものは新聞で印刷、テレビで放映されているので、不要である。 以上の考え方により提案は却下された。私の知っている範囲で反対者は3名程。 本当に必要無かったのか議論の余地がある。マスコミは惨状をそのまま脚色せ ず、放映、印刷することを忘れたようだ。テレビでどんなに凄まじい映像を見 ようが、私たちは無感動になっていないだろうか。テレビでは現実感が失われ るのだ。私たちは病んでいる。  ノルウェーのリレハンメルから長野まで1万6000キロを犬ぞりで駆け抜ける 国際環境使節団がある。この使節団とパソコン通信を使って直接対話を楽しめ たり、現地で撮影した画像データを引き出せる「IEE犬ぞりネットワーク」が 話題を呼んでいる。「IEE犬ぞりネットワーク」には隊員がQuickTakeで撮影し た現地の写真も含まれており、気軽にダウンロードできるようになっている (NiftyServe:go finuzori)。  地球の反対側で撮影されたようなデジタル写真も、今では技術の進歩で簡単 に見ることができる。それに比べ、地震初期の神戸の情報発信はマスコミだけ でよかったと言えるのだろうか?私は地震を体験した人々の視点が欠如してい たと思われてならない。 --------- 避難所でのパソコン端末の活用について 【解決できなかったこと、まとめ】  行政主導で、避難所においてパソコン端末の運用が開始された。パソコン通 信は双方向のメディアなのに、ダウンロードのみのお仕着せのシステムだった。 PC-VANにおいて電子メールが使えるようになっても避難所にどのようにIDが割 り当てされているのか公開されなかった。パソコン端末の利用の促進が、被災 者の立場にたったものだったのか、議論されるべきだ。電子メールを使う人は、 今世紀末までに2億人を超えると予想されている。今後、急増するネットワー カーによって改善される可能性を探りたい。 --------- 集まった地震情報の活用について 【解決できなかったこと、まとめ】  地震直後から、いろいろな人が提言をしている。しかし、この膨大な資料を 誰がまとめているのだろうか。読売新聞記者に聞いた。「日本全国に対し地震 情報を送ってはいるが、誰を対象に書いているのかわからない、しかし、必要 と思われるから書いているのです」と言っていた。ともかく、この数ヵ月間、 地震情報は溢れに溢れている。こんなに誰もが真剣に地震に対して提言をして いるときはない。この資料をまとめるべきだ。そして、誰もが、それらの資料 にアクセスできるべきだ。地震に関するデータベース構築を提言する。  地震観測に携わる公的機関は気象庁のほか科学技術庁防災科学技術研究所、 通産省地質調査所、建設省国土地理院、海上保安庁、文部省の国立天文台、各 大学などにわたっている。各機関で得られたデータは分散し、一元的な活用が されていない。田中真紀子科学技術庁長官は地震予知対策を取り上げた衆院科 学技術委員会で「もっと情報公開してデータを共有すべきだ」と語った。その 通りだ。  しかし、その実現には著作権に関わる問題が重要になってきていることをあ げておく。パソコン通信は、各種メディアを統合し、永久に経験として活用で きるだけの力を持ちながら、“著作権の壁”でそれが技術的に可能なのにでき ない。これを逃れる術として“部分引用”が、ある程度認められている。だが、 せっかくまとまっているデータを分割することにつながる。これは、一般にパ ソコン通信の情報がまとまりがないという批判にもつながっている。いろんな スキルの人間がいるにも関わらず、その話し合いの元となる情報が曖昧で共通 理解が得られない。これを何度も何度も繰り返すのは愚かしい。  すべての地震情報が公開され、だれでも使えるようになれば、予知技術の新 しい発想も生まれる。そして地震情報だけではなく、人類の知識がネットワー クですべて公開される世の中になれば、全く新しい理想社会が出現すると信じ る。 NIFTY:MGG01363 今井真人