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メディア・アート・イベント・エンターテイメント:音楽 (一般)

ひさしぶりに行った現代音楽コンサート -- ボンクリ・フェスティバル

ここ数年,藤倉 大 という作曲家に興味がある. 藤倉が監督してここ数年,「ボンクリ・フェスティバル (Born Creative Festival)」というコンサートが年 1 回ひらかれているということを昨年,知った. このコンサートに行って,藤倉や他の作曲家の生楽器の作品をきき,またひさしぶりに「生」の電子音楽をきいて,あれこれかんがえた.

ボンクリ・フェスティバルにもこれまで行ったことがなかったし,他のコンサートにもここ数年は行っていなかったが,いろいろ "GoTo" がおこなわれるようになった今,このコンサートに行ってみることにした.

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20 世紀以来の「現代音楽」の作曲家のなかには楽器や演奏家のことをよく知らず,演奏しにくい曲,演奏家がたのしめない曲を書くひともすくなくないようだ. しかし,藤倉は演奏家とのつきあいがひろくて,どうすれば演奏家が楽しんで演奏できるかがわかっているということらしい. このフェスティバルは藤倉の作品ばかりを演奏するわけではないが,そういう曲をあつめたコンサートなのだろう.

メインのコンサート (なぜか「スペシャル・コンサート」とよんでいる) は東京芸術劇場のコンサート・ホールで 14:00 開演だったが,この日この場所ではほかにもいろいろちいさなコンサートがひらかれていた. 有料のものはもう登録できないので,無料のものだけ,きいていった.

5 階にある「藝大 COI の部屋」(COI は Center of Innovation) にいくと,「「だれでもピアノ」体験ワークショップ」というのがひらかれていた. ひとがピアノでなにかひくと,それにちかい現代曲のフレーズがそれにつづいて自動演奏されるというしかけらしい. きいてみなかったが機械学習をつかっているのだろうか? 気合がはいるならためしてみるのがよいとおもったが,きょうはやめておいた.

地下には「大友良英の部屋」と,2 つの「電子音楽の部屋」がある. 座席の間隔があいていることもあって「電子音楽の部屋」は比較的,席がふさがっている. 最初に行った部屋にはすぐにはいれなかった. 今回のテーマはエリアーヌ・ラディーグという作曲家だということだ. それにくわえて,メイン・コンサートでもとりあげられている「蒲池 愛」という作曲家がここでもとりあげられていた. 最近,急逝したことがとりあげられたひとつの理由のようだ. 「電子音楽」というが,ひとが弾く楽器とコンピュータをくみあわせている. 現代においておもしろいことのひとつは,コンピュータによる「アルゴリズム」と意思・意欲・感情などをもつ人間の演奏者とのコラボレーションなのではないかとおもう.

メイン・コンサートでは 8 つの作品が演奏された. 藤倉の作品が 2 つ,ほかに八木美知依,ハイナー・ゲッペルス,牛島安希子,蒲池愛 & 永見竜生,大友良英,坂本龍一の作品がそれぞれひとつずつだ. 八木美知依は「水晶の夢」で歌いながら琴をひくが,事前に録音された音とあわせている. どこまでがリアルなのかよくわからなかったが,琴をひきながら心にしみる歌をうたっていた. 蒲池の「between water and ray」は「電子音楽の部屋」できいた曲と 同様にリアルなグラスハープの演奏と電子音とのコラボレーション.

大友の作品 (名無し?) では,20 人をこえる演奏者が舞台にひろがったが,指揮台がない. どうするのかとおもっていると,こども (ノマド・キッズ) がでてきてとびはねる. それが指揮になっているというわけだ. こどもはどんどん交代していき,そのたびに拍手がおこるが,演奏はつづいていく. こどもはリズムをとり,音楽の雰囲気をきめ,ゆびさして演奏者の入りや音のつよさを指示する. ゆるい指揮でよいのなら,たしかにこれでよいのだろう. ハプニングもあるだろうが,それはむしろ,おもしろい. 聴衆からも笑いがもれていた.

坂本の「パサージュ」は,まだ本来は日本で演奏できないはずの作品なのだが,特別にゆるされたとのこと. これはコロナ禍のベルリンを表現したもののようだ. しかし,藤倉がなぜ特別な許可をえてまでこの曲をとりあげたかったのかはよくわからない.

最後は藤倉の「Longing from afar」という曲だが,これは,こどもまでふくめた,きょうの演奏者全員による合奏だ. この作品はもともとコロナでうごけない演奏者をネットでつないで演奏したもののリアル版だという. 指揮はほかの曲でも登場するアンサンブル・ノマドの佐藤紀雄. 大友の作品よりはしっかりした指揮をしているが,基本的にはそれと同様にゆるい指揮で演奏できる曲ということだろう.

ネットによる「ゆるいつながり」の時代,かつコロナで密なつながりがつくりにくい時代らしい音楽を何曲かきき,また人間とコンビュータとのコラボレーションによる音楽をいくつかきき,それらについてすこしかんがえる機会になった.

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