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DIY (日曜大工) とものづくり・実験:3 次元印刷 (3D printing)・CAD

螺旋 3D 印刷と generative design,デザイナ,そして自己デザイン

螺旋 3D 印刷作品をつくり,世にだすために,デザイナのちからを借りる必要があるとかんがえてきた. これまでの試行はうまくいかなかったので,最近,あらたな方針をたてた. しかし,あらたなデザイナをさがすまえに,デザイナにどう螺旋 3D 印刷とかかわってもらったらよいかをかんがえてみることにした. その結論はつぎのとおりだ. 螺旋 3D 印刷は少量生産にむいた技術であり,同時に generative design とつよくむすびつけられているから,それらをうまくむすびつけてデザインしてもらう必要がある. それは現在のプロダクト・デザイナの仕事とはかなりちがうものにならざるをえないので,まずは私自身がデザイナになって実践してみる必要があるようにおもう.

螺旋 3D 印刷が要請するデザイン・プロセスは,従来の方法を実践してきたデザイナにとってはやりにくい,あるいは制約がおおきいとかんがえられる. その理由はつぎのとおりだ. 従来の 3D 印刷技術では実際にはつくれないかたちもある. しかし,その方法論はどんなかたちでもつくれるようにすることをめざしている. それに対して螺旋 3D 印刷においては,つくれるかたちを制約し設計・印刷プロセスを制約することによって, すなわち generative なプロセスをつかうことによって,従来の 3D 印刷ではできないかたちがつくれることや低コストなどの特徴を実現している. したがってこの制約はこれらの特徴を維持するために必要な制約であり,デザイナにとっても制約にならざるをえないとかんがえられる.

また,少量生産に適した螺旋 3D 印刷で低コストを実現しようとすると,デザイン・コストもおさえなければならない. この点について説明する. 従来の 3D 印刷と同様に,螺旋 3D 印刷も大量生産には向いていない. プロダクト・デザイナがこれまでおもにやってきた仕事は大量生産品のデザインであり, そこでは,ひとつの静的なデザインがすべての生産品に適用される. ひとつのデザインにコストをかけても,大量生産するなら製品 1 個あたりのコストは比較的ちいさくてすむ. しかし,3D 印刷は少量生産にむいた技術だから,製品の種類ごとにコストをかけると,1 個の製品の コストがたかくなってしまう. デザイン・コストを複数の製品に分散させることが必要だとかんがえられる.

螺旋 3D 印刷は特定の設計プロセスすなわち特定の種類の generative design にむすびついていて,それが制約となっているが,実はこれがコストを分散させるためのカギになるのではないかとかんがえられる. デザイナが固定的・静的なデザインをするかわりに,製品ごとの変化に対応できる柔軟で動的なデザインをすることができれば,デザイン・コストを複数の製品に分散させることができる. この動的なデザインのための方法が generative design なのではないだろうか. たとえばデザイナがコンピュータ・プログラムをつくり,それによってデザインを生成するなら,製品ごとにパラメタをかえることによって,さまざまなデザインをつくりだすことができる. あるいは,デザイナがプログラマにならなくても,波のモデルのような汎用的なモデルのパラメタをあたえるようにしたり,プログラマがあいだにはいったりすれば,同様のことができる. しかし,これらの方法は現在のプロダクト・デザイナの仕事とはかなりちがうものだ. それをいきなりデザイナにおしつけるのは無理だろう.

上記のような考察から,とりあえずはデザイナをつかわずに自分で全部やってみることが必要なのではないかとおもえてきた. その理由はつぎのとおりだ. とりあえずきめたデザイナとのコラボレーションのための新方針は,コラボレーションを開始するにあたってのハードルをさげるものだ. このようにハードルをさげてコラボレーションしてみることもひとつの方法だとおもうが,もうひとつの方法として,上記のような方法をまず私自身がデザイナになってためしてみるという方法があるだろう. 私はすぐれたデザイナにはなれないとおもうが,すぐれたデザイナとのコラボレーションを成功させるためには,まず私がかんがえる方法を自分で実践してみる必要があるのではないかということだ. そうやって方法論がデザイナからみえるようにしてからコラボレートしてくれるデザイナをさがすほうがちかみちなのではないか.

全部を自分でやってみるということは,また,自分をためすチャンスでもある. 私の専門はソフトウェアであり,それをハードウェアや 3D 印刷にもひろげてきたが,それだけではなく,当然のことだが,就職する以前からさまざまなことをまなんできた. そのなかにはデザインやそれに関連する領域もはいっている. すくなくともおおくのデザイナなどよりは,はばひろい知識をえてきたつもりだ. そういう知識や思考は会社づとめ,とくに大会社ではつかえずにきた. しかし,会社をやめてすべてを螺旋 3D 印刷にかけられるようになったいま,それらをためすチャンスがきたようにもおもう.

関連項目:

追記 (2020-11-25): 「波のモデル」ということばは漠然としすぎているので,「波合成モデル」とよぶことにした.

キーワード: ジェネラティブ・デザイン, ジェネレーティブ

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