[ トップページ ]
メディア・アート・イベント・エンターテイメント

読むに値するひろい知識と独自のかんがえ ― 西岡 文彦 著 「ピカソは本当に偉いのか?」

6 章はほんとうに 「ピカソは本当に偉いのか」 というテーマを追求している. しかし,それだけにとどまらず,この本では現代美術と画商や美術館との関係をえがき,ピカソの人物像や恋愛・結婚をえがき,「アヴィニョンの娘たち」 に代表されるピカソの絵画を 「今後の絵画はいかにあるべきかという課題に対するピカソ理論の発表のようなもの」 であり学会論文のようなものだと書いている. そしてさらに,そういう絵画の歴史をセザンヌ,エル・グレコからティッツィアーノにまでさかのぼっている. ここには,絵画の歴史をおおう著者のひろい知識と独自のかんがえがある. これは読むに値するものだとおもう.

ピカソが周囲のひとを 「心理的葛藤に巻き込むことで相手の感情を攪乱し,冷静な判断をする心の余裕を奪うことによって,彼の心理的な支配を受け入れざるを得なくしてしまう」 と書いている. 角田美代子のように ?!

一方で,著者はピカソ晩年の自画像を 「間近に迫った死を恐れるものと解釈されても不思議のない深い絶望感をたたえて」 いると書いている. ここは慎重な表現になっているのだが,円熟や悟りのない凄惨な晩年というイメージをえがいている. 常識的なおちついた晩年からははずれていたのだろうが,最後まであたらしいものをもとめつづけたピカソに 「凄惨」 というようなことばはあたらないのではないだろうか.

評価: ★★★★☆

関連リンク: ピカソは本当に偉いのか?@Amazon.co.jp

注記: Amazon.co.jp書評 に投稿しています.

キーワード:

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
https://www.kanadas.com/mt/mt-tb.cgi/5958

コメントを投稿

dasyn_bulbbchang001.jpeg

螺旋 3D 印刷技術を使用してつくったこのような「3D デザインランプ」を 3d-dl.com で売っています.

Google でブログを検索:

メインページアーカイブページも見てください.
Creative Commons License
このブログはつぎのライセンスで保護されています. クリエイティブ・コモンズ・ライセンス.
Powered by Movable Type