[ トップページ ]
政治・法律・憲法:災害と政治, 社会・経済:災害・地震, 政治・法律・憲法:菅直人内閣

復興に関する議論を混乱させる西岡議長はだまれ !

西岡武夫参院議長が菅内閣をたびたび強烈に批判している. 産経ニュースなどでそのいいぶんを読んでみると,はやく法律をつくってそれにもとづいて震災復興をすすめるべきだというかんがえのようだ. 菅内閣はむしろ立法に時間がかかることをかんがえると,あたらしい法律をつくらずに対処していく方針にみえる. 国会において法律が迅速に成立する状況であれば西岡氏のやりかたがよいだろうが,まさに参議院がその障害になることをかんがえれば,西岡氏の案は適切でないだろう. もともと民主党に所属していながら民主党政権を混乱させ,復興そのものも混乱させかねない西岡氏はだまるべきだ.

西岡氏の政府批判は震災発生以前からだが,発生後の発言を検討してみよう.

4 月 7 日の MSN 産経ニュース 「「許されざる、とんでもない失態」 西岡参院議長、政府の原発対応を厳しく批判」 においては,東京電力が軽度の放射能汚染水を海に放出したことに関して,事前に公表するべきだった (事前に各国に通知するべきだった ?) のにそうしなかったことを批判している. これはたしかに批判されてしかるべきだが,各国に通知がとどくまえに放出せざるをえなくなったという事情があったようだ. 西岡氏は菅内閣打倒をめざしているようだが,そのためにこの件を利用したのだとかんがえざるをえない.

4 月 7 日と 14 日の MSN 産経ニュースには,「西岡参院議長会見」 ((1), (2), (3), (4), (5)) が掲載されている. (1) においては,西岡氏が震災に対応するには激甚指定だけではたりず,第一次補正予算についても予算執行に関してきちんとした方針をきめる必要があるのに菅内閣がそうしていないことを批判している. また,被災地の漁船をすべて国が建造して保有する案,幼稚園の施設を国が全額もってリースする案をしめしている. 菅内閣の方針ではこのような案は復興構想会議において議論し,その結果にもとづいて政府が決定をくだすことになるのだろうが,西岡氏はそれではおそいから首相がいそいで決定をくだすべきだと主張している.

たしかに被災地では復旧をいそぐべきだが,その一方で被災地の制度や経済に関するパラダイムをかえるような重大な決定は慎重にしなければならないだろう. 復興構想会議で議論せずに政府が密室で決定するなどというやりかたはありえないだろう. 密室できめるのでなければ法律をつくってということになるが,復興構想会議の結論があってこそ,国会でもうまく議論がすすむのではないだろうか.

4 月 15 日の MSN 産経ニュース 「復興税で西岡参院議長が批判 「首相が言うべきこと、誠に不可思議」」 においては,西岡氏は復興構想会議の議長が復興税創設に言及したことに関して,それは首相がいうべきことであり,菅首相にリーダーシップがないからこうなったということを発言したという. しかし,復興構想会議には復興財源に関する案をだすことももとめられているのであり,復興税に言及するのも当然のことだろう. まったく,まとはずれな批判だといわざるをえない.

ついでにいえば,産經新聞は以前から菅内閣に批判的であり,ほとんどクソミソにいっているといっても過言ではない. この西岡氏の発言に関しても,産経はそれを誇張して自社の説を補強するために利用しているということができる. しかし,いまは菅内閣をつぶして国政だけでなく復興を混乱させることをさけるべきだろう. 読者が産經新聞にのせられないことをのぞみたい.

追記: 西岡氏は 19 日の読売新聞に論文を投稿しているという. しかし,オンラインで参照できないようなので,この項目はそれを参照しないまま書いている. そのために,もしも西岡氏のかんがえを誤解している点があるとすれば,おわびして訂正したい.

2011-5-24 追記: 西岡氏はなぜ読売新聞に投稿したのだろうか. この論文は,無断で転載されたらしいページをのぞけば,(無料の) Web でみることはできない. 読売新聞が発行部数のもっともおおい新聞だから投稿したのかもしれないが,新聞をよまないひとがおおいこの時代に,意見をひろくつたえるために特定の新聞に投稿するのがはたしてよい方法といえるだろうか. そのあたりからして,西岡氏の時代認識はずれているのではないだろうか.

キーワード:

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
https://www.kanadas.com/mt/mt-tb.cgi/5038

コメントを投稿

Google でブログを検索:

メインページアーカイブページも見てください.
Creative Commons License
このブログはつぎのライセンスで保護されています. クリエイティブ・コモンズ・ライセンス.
Powered by Movable Type