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書評, 生活

ウィットのきいた,飼い猫と小説・劇などのなかの猫の話 ― 青木 るえか 著, 「猫の品格」

「猫の品格」 なんていうタイトルは冗談としかおもえなかったが,どうやらかなりマジなようだ. 「猫には品格がある」 というのはわかる気がするが,「品格についてあれこれ論じるということが,品格に欠ける行為である」 とか,「常に人目を気にしているとう,自分で考えてもかっこわるいことこの上ない,真に品格のないというこの [著者の] 性格」 という記述にはいささか病的なものを感じる.

こういうマジな部分はあまりおもしろくないが,もっと軽い部分を読むと,この著者はタダモノではないと感じる. 猫ベッタリの文章ではあるが,そのなかに夏目漱石の 「我輩は猫である」 が猫好きを落胆させる話とか,四季の 「キャッツ」 はブロードウェイとちがって変という話とか,レズビアンの猫の話とか,いろいろおもしろいエピソードがでてくる.

文体も 「うちの猫 [中略] 静かに抱かれたりなんかしやがらねえ」 というように,変化をつけていて,あきさせない. 猫のフンをとる話もあるが,「風呂上がりで湯気ほかほかの全裸で,やりたての [...]」 とくると,一瞬,なにをやりたてなんだろうとおもってしまう. こういう秒単位で変化のある文章を書けるひとは,そういないだろう.

しかし,飼っていた猫が情事におよぶまえにひきはなして,(病気をうつされないようにするためとはいえ) 「やはり,猫は室内飼いをしなければだめだ」 と書いているのを読むと,猫好きとは勝手なものだとおもってしまう. 「旅行好きの猫」 にあこがれるという話もあるが,ひとりで旅行する猫のことかとおもってしまうと,実は海外旅行につれていける猫の話をしている. これも買主の身勝手だろう. それとは別の話だが,最近発売されたばかりなのに品切れになって,アマゾンでは 1600 円以上の値段がついている. これも猫好きのすごさなのだろう.

犬より猫が好きではあるが,猫を飼っていない私にはほとんどなんの役にもたたない話なので,さっと読んでおわりにした. しかし,最近読んだなかでもっともウィットのきいた文章だ.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 猫の品格@ [bk1]猫の品格@Amazon.co.jp

注記: BK1書評Amazon.co.jp書評 に投稿しています.

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