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知的生産とリテラシー

2 つの他社での経験 ― ドキュメントに関するかんがえかたのちがい

私がつとめている会社ではひとが書いた文章をよまずにすませようとする習慣があるということを 「日本の会社では文章をよまない・かかない悪習がある」 という項目で書きました. この悪習は私がみたところでは,すくなくとも業種がちかい他社でもあるようにみうけられます. しかし,私はそれとは文化のことなる 2 つの会社とつきあうなかで,ドキュメントに関するかんがえかたにあきらかにちがいがあることを発見してきました. そのことについて,もうすこしくわしく,書いてみることにしましょう.

ひとつは,日立デジタル平凡社 (HDH) という会社でのことです. CD-ROM 版とインターネット版の百科事典などをつくっていた会社ですが,なくなってしまいました. 私はこの会社から研究費をもらっていたので,しばしば出入りしていました. 「日本の会社では文章をよまない・かかない悪習がある」 で書いたように私がつとめている会社では文章だけで書いたドキュメントはよまれないことがおおいのですが,平凡社から出向していたひとたちは,もっと文章を読み書きする訓練ができていました. ひとになにかをつたえたいときは,図や絵よりもまず文章を書いていたようにおもいます. これは私にとって,おおげさにいえばカルチャーショックでした.

もうひとつの経験は,Hewlett Packard (ヒューレット・パッカード, HP) 社と共同開発をしたときのことです. 私の論文にも書いているように,このときのテーマはポリシーサーバでした. 仕事をはじめるときに,HP 社のひとはその仕様を短期間で数 10 ページのドキュメントにまとめて,私におくってきました. そのなかには図もいくつかはあったとおもいますが,ほとんどは文章でうめつくされていました. アメリカの会社なので当然といえば当然なのですが,やはり自分がそこにおかれてみると,一種のカルチャーショックがありました. 私の会社ではほとんどありえないことですから…

とはいっても,文章の量のちがいや図の多少のちがいはあっても,「仕様書」 とよばれるものが文章主体で,したがって Microsoft (マイクロソフト) のツールをつかうのであれば Word (ワード) で,あるいはフリーのツールをつかうのであれば TeX (テフ, テック) などで書かれるのは当然とかんがえてきましたが,日本では (それとも私の会社では ?) かならずしもそうではないようです. 近年はパワーポイントで仕様書らしきものを記述するということが,ひろくおこなわれているようです. パワーポイントでという意味はつまり図を主体としてということなので,図がもつあいまいさを解消しないまま仕様書としてみとめてしまうということを意味しています. 私には理解しがたいことです.

脱線してしまいましたが,2 つの他社での経験は,私に,自分の会社の悪習にそまらないようにしようという決意をうんだといってよいでしょう. どこまでが悪習なのかもみきわめる必要がありますが,私にはすくなくともパワーポイントを多用するやりかたは不適切だとおもえます.

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