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斬新な議論だが,やや強引 ― 田中 久美子 著, 「記号と再帰 ― 記号論の形式・プログラムの必然」

コンピュータ言語やその理論,とくに再帰を記号論的な見方で分析している. 記号論と人工言語とをむすびつけるそのやりかたは斬新だ. これら両方の分野に精通した人は非常にわずかだとかんがえられるから,どちらの分野のひとにとっても,この内容は新鮮だろう.

しかし,一応は両方を知っている立場からすると,このむすびつけかたはいささか強引だとおもえる. 記号論の対象は人間の言語や記号であり,記号の概念も解釈も人間のものだ. ところが,著者がそれをコンピュータ言語にあてはめるとき,そこには基本的に人間はいない. 機械が解釈するものとしてのコンピュータ言語と人間の言語の記号論を対応させるのには違和感がある. また,いまさら記号論なのかという気がしないでもない.

コンピュータ言語も人間が書くものだから,記号論や言語学の手法をとりいれるのにもっとべつの視点もある. 著者もところどころアドホックに人間の視点をいれてはいる. しかし,それをもっとすすめた議論は実は存在している. 金田 泰 著 「プログラミング言語学をめざして」がそれなのだが,(Web にはアップされているが) 残念ながら手書きの修士論文でおわっているためほとんど知られていないし,議論は浅い.

いずれにしても,この本はいくつかの賞をとり,英語でも出版されている. 著者あるいはこれらの本を読んだだれかが (私もふくめて) これをきっかけとして,さらにすすんだ議論や周辺の話題をほりおこしてくれればよいとおもう.

評価: ★★★★☆

関連リンク: 記号と再帰@ [bk1]記号と再帰@Amazon.co.jp記号と再帰@GoogleBooks

注記: BK1書評Amazon.co.jp書評Google Books書評 に投稿しています.

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