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研究紹介ビデオの制作

研究成果を展示会のような場で展示するとき,あるいは学会で発表するとき,PC でビデオをつくっておくと便利だ. そこで,ビデオ編集にはじめて挑戦した. Linux PC 上のシステムの動作をキャプチャして,Linux 上のツールをつかって字幕などをいれた. その方法などについて書いてみる.

発表用ビデオの必要性

システムを開発したときなどはナマのデモが一番だが,かぎられた時間のなかでそれをするのはむずかしい. そこでビデオを登場させることになる. しかし,単純にキャプチャしただけのビデオでは限界がある.

第 1 に,ナマのデモとちがって,ビデオでは再生時にできることがかぎられてしまう. 再生しながら口頭で説明すると,ずれやすい. ビデオをとめたり,はやまわししたりすればよいが,操作にてまどって説明が中断することにもなる. また,注目してほしい部分が指示しにくいこともある. PC で全画面再生をしていると,べつにポインタなどを用意して指示する必要がでてくるが,それがつかえないこともある.

第 2 に,ビデオをつくると,それをくりかえし再生しておいて,つきっきりで説明するのをサボりたくなる. しかし,研究展示では,キャプチャしたものをみせるだけでわかるようにすることはむずかしい.

そこで,キャプチャしたビデオを加工して,みどころや説明文をいれてみた.

画面の動画キャプチャ

Linux PC (Ubuntu 9.10) 上でのデモ画面のキャプチャ (動画生成) には, gtk-recordMyDesktop というツールをインストールして使用した. Ubuntu 9.10 では 「ソフトウェアセンター」 (パッケージ管理) を使用すればかんたんにインストールできる.

gtk-recordMyDesktop は容易に使用できる. メニューバーに表示された停止ボタンをおすと録画が停止する. ただし,生成されるファイルの形式は .ogv であり,そのままではかぎられたツールでしかあつかえないのがこまる (つぎに登場する OpenShot も .ogv があつかえなかったため,MPEG4 に変換して使用した).

説明文などの挿入

Superimpose1.jpg これまで動画編集をやったことがなかったので,どういうツールをつかったら よいかもわからず,環境をととのえるのに時間がかかった. 結局,OpenShot という動画編集ツールと Inkscape という グラフィック・ツールのくみあわせでつくった. わけがあって,動画編集はキャプチャとはべつの環境でおこなった. 最初はすでにインストールしていた Fedora 13 上に OpenShot を インストールしようとしたが,Fedora にはマルチメディア・ ライブラリがほとんどふくまれていないので断念して,Ubuntu 10.04 をインストールした. Ubuntu 10.04 には Open Movie Editor などとともに OpenShot が標準ライブラリとしてくみこ まれている (さらに,ほかにも動画編集ツールがくみこまれている).

Superimpose2.jpg OpenShot をはじめ,おおくの動画編集ツールでは複数のトラックをつくり,同期して再生することができる. そこで,ひとつのトラックにはもとのビデオをいれ,もうひとつのトラックに説明文などをいれる.

OpenShot の 「タイトル」 をつかって説明文を入力する. そして,それを Inkscape で編集して位置やフォントの種類,サイズなどをきめる. Linux で日本語の文字をいれるばあいには,選択肢はけっこうせまい. 文字に背景をつけるため,長方形を挿入する. また,あわせてビデオのみてほしい部分に矢印や円 (かこみ) などの図形をいれる. アニメーションをつかえばさらにわかりやすいが,手間をかんがえて,そこまではしない.

動画の時間がながすぎるときは,カットすればよい. これはカミソリ・ツールでかんたんにできる.

MediaPlayerClassic.jpg 逆に動画の時間がみじかすぎるときは,動画から静止画をきりだして,それでつないだ部分に説明をいれる. 静止画をきりだすには動画を再生してスナップショットをとる方法もあるが,もっと直接的な方法でやりたいので Media Palyer Classic というツールをつかった. このツールで動画のきりだしたい部分を表示して,メニューから 「ファイル > 画像を保存」 を選択して静止画を保存する.

今回は日本語の説明をいれたが,テキストをいれかえれば英語版をつくるのは容易だ. ビデオ制作のエッセンスはここまでであり,以下,より詳細な点について書く.

動画編集ツールの比較

OpenShot を使用したのは,テキストとかんたんな図形を動画上にかさねるのが比較的容易だとおもわれたからである. ほかに検討したツールとしては Windows 上の Adobe Premiere Element 8, Linux 上の Open Movie Editor などがある.

Premiere Elements はニコニコ動画的な機能もそなえているのでつかえそうだったが, 体験版は 「体験版」 という文字が動画にやきつけられてしまうので,購入が必要で ある. 予算がないので断念した. Windows 上でつかえるツールとしては Windows Movie Maker もある. これなら無償でつかえるが,他の編集ツールとくらべると操作性に差があって,つかいにくいようにおもった.

Open Movie Editor は文字を文字としてあつかう機能がないようだったので,使用しなかった. これとくらべると OpenShot はタイトルをあつかう機能があるが,くみこみの機能はきわめて貧弱であり,グラフィック・ツールの Inkscape とくみあわせなければ自由な場所に文字をいれることはできないので,あまり差はなかったかもしれない.

ここまでは私自身のツールえらびについて書いてきたが,「学会発表のための動画編集マニュアル」 (金原出版) という本をみると,PowerDirector Expert 2 というツールが安価 (3490 円) で十分な機能をそなえていると書かれている. さっそく買ったので,これからためしてみたい.

OpenShot の使用感など

2 つのビデオ・トラックをつくって,一方はキャプチャしたビデオにあて,もう一方を スーパー・インポーズする文字などにあてる. 文字を入力するにはメニューから 「タイトル」 をえらんでテキストを入力する. かざりつきのタイトルを入力することもできるが,Inkscape で編集しなければ つかえないので,かざりのない文字だけを入力する.

説明文 (「タイトル」) を編集するには Inkscape を使用する. OpenShot には Inkscape と連携する機能もあるが,起動・終了に時間がかかるので,独立に Inkscape を起動して編集するほうがよい.

説明文を単純に挿入しただけではめだたないため,1 回ブリンクさせるようにした. つまり,説明文をまず 0.5 秒程度表示させてからいったん消し,再度,表示させる.

このように説明文のトラックをすきまだらけにしたところ,たぶん OpenShot のバグのために,動画を再生成するときにもとの動画と説明文との同期がとれなくなった. いろいろためして同期のとれた動画を生成することができたが,どうすれば同期がとれるのか,あるいははずれるのか,いまだによくわかっていない. (2010-7-15 追記: はじめからうまく生成できたことがない. 1 回失敗して,パラメタをかえて再度生成すると,うまくいくことがおおいようだ. それでも,パラメタのかえかたによってはうまくいかないようでもある.)

PC や VNode のウィンドウの位置をしめしたり表示された文字をかこったりするために,文字や円などを説明文とあわせて表示するようにしたが,その位置あわせはやりにくかった. 動画が表示されていない状態で位置をきめなければならないからである. また,Inkscape で編集するときは英字が等幅になるのに,OpenShot で表示するとプロポーショナルになるので,同時に表示する図形とずれるという問題が あった.

動画を再生成する際にはそのフォーマットを指定するが,ここで .ogg 以外のフォーマット (たとえば MPEG4) を指定すると,エラーメッセージが出力されて,動画生成のステップにはいることができなかった. また,最初はフル HiVision (1080p/1080i) で生成させようとしたが,そうすると動画生成完了時にダウンして動画がつくれないので,720p で妥協した.

2010-9-19 追記:
GEC 8 という会議のサイトにアップロードされた IPEC のビデオのコピー (3.9 MB)をここにおいておくことにする. ただし,上記の日本語のものは公開されていないので,これは英語版です.

関連項目 (2010-9-19 追記):

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