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粘菌による迷路探索 ― 強化学習 (?)

5 月 25 日 (?) NHK の 「サイエンス ZERO: 不思議生物 粘菌の力をいかせ」 という番組の録画を,おととい,やっとみました. そのなかに 「粘菌が迷路をとく」 という話題がありました. 粘菌を迷路において,迷路の入口と出口にえさをおくということです. おもしろい話であることはまちがいないのですが,私にはその説明が,ふにおちませんでした.

北大でおこなわれた研究であり,複数の経路がある迷路の最短経路をコンピュータにもとめさせるととても時間がかかるのに,粘菌はそれをもっとかんたんにもとめているという説明でした. それはただしい説明だとおもいます. しかし,これは複数のエージェントによる強化学習の問題だと私にはおもえました. つまりは,アリに迷路をとかせるのとおなじだとおもうのですが,そのような説明はありませんでした. 粘菌は 1 個の細胞だけで解をもとめるのですが,細胞の各部分がつながりながらも独立のエージェントとしてうごくので,アリとおなじようなはたらきをしているようにみえます.

Nenkin-Meiro.jpg Web でしらべてみると,すでに 「理研ニュース 2000 年 12 月号」 に 「粘菌が迷路を最短ルートで解く能力があることを世界で初めて発見」 という記事があります. この記事にはこの内容が Nature の 2000 年 9 月 28 日号 (Vol. 407) に掲載されたと書かれています. 理研ニュースの記事にはだれの仕事であるのかは書いてありませんが,それにさきだつプレスリリースには 「この発見は,当研究所のフロンティア研究システム (FRS) 局所時空間機能研究チーム・中垣 俊之 フロンティア研究員と,北海道大学電子科学研究所の山田裕康講師 (FRS 制御系理論研究チーム・フロンティア研究員[非常勤]) らによって行われました.」 と書かれています. Nature の記事は 1 ページだけの記事であり,定量的に書かれてはいますが,詳細な分析はありません. 「生命誌ジャーナル 2002 年秋号」 には 「粘菌に知性はあるか?」 というタイトルで北海道大学電子科学研究所の 上田 哲男 が記事を書いていますが,そのなかに迷路のことも書いてあります (写真). いずれもみじかい記事なので,研究の詳細は書かれていません.

パズルを解くアメーバ —意外に賢い単細胞生物—」 (創成科学研究機構の 中垣 俊之 による) には迷路をとく粘菌のはたらきを偏微分方程式でモデル化したと書かれていて,そこが新規な部分なのだろうとおもいます. しかし,ここでも強化学習については言及されていません. Web 上をみれば,ほかにもいろいろなひとがこの件に関する研究をしていることがわかります. 迷路をとかせるだけで,そんなにいろいろネタがあるのでしょうか?

最初のテレビ番組では東大の 佐倉 統 がコメンテーターとして出演していました. 彼は人工生命研究会などにもかかわっていたので,強化学習との関係も気づいていたはずですが,その点についてはなにもコメントしていませんでした. というわけで,私の疑問はまだ解消されていません.

2008-6-5 追記:
迷路探索には関係ありませんが,Wikipedia でみると,南方熊楠の時代に 「粘菌」 とよばれていたものは現在ではもっとこまかく分類され,生物学的にかなりとおい関係のものもあるということです. Wikipedia の項目としては 「変形菌」 という項目と 「細胞性粘菌」 という項目があり,さらにこまかい分類がしめされています. 迷路探索でつかわれたのは変形菌の一種です.

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