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NGN, QoS 保証

NGN における QoS クラスへの分類

NGN (次世代ネットワーク) に関係する通信フローのいくつかの QoS クラスへの分類法についてのべる. 3GPP における分類,ITU-T Y.1541 における分類,IETF TSVWG における分類をとりあげる.また,関連する研究についてものべる.

NGN においては,まず複数の QoS レベルを提供するという方針 [3GP 06d] がとられている. また,マルチメディア・アプリケーションにおいては,アプリケーションやサービス,トラフィックの種類によって,さまざまな QoS 保証が必要になる. そのため,QoS クラスを数個にわけて,それぞれについて端点間で保証するべき条件をさだめている. クラスの数や内容はネットワークの種類によって (標準化組織ごとに) ことなっている. ここでは例として,基準となるとかんがえられる 3GPP における分類と ITU-T における分類,IETF TSVWG の分類をしめし,関連するいくつかの論文をとりあげる.

1. 3GPP における分類

3GPP においては QoS クラスをつぎの 4 つにわけている [3GP 06d] [Jeo 05]

会話クラス (conversational class)
遅延がちいさく (たとえば < 80 ms),ジッターもちいさい,実時間のトラフィックのためのクラス.
ストリーミング・クラス (streaming class)
遅延は中くらいであり (たとえば < 400 ms),ジッターはちいさい,実時間のトラフィックのためのクラス.
インタラクティブ・クラス (interactive class)
遅延はちいさいが (たとえば < 80 ms),ジッターについては規定しない (保証要求しない),非実時間のトラフィックのためのクラス.
ベストエフォート・クラス (best effort class)
遅延については規定せずジッターについても規定しない (保証要求しない),非実時間のトラフィックのためのクラス.

ベストエフォート・クラスをのぞく QoS クラスについてはパケット廃棄率も保証するべきだが,各クラスについて固定の値がきめられているわけではないし,クラスによる差はとくにない.

2. ITU-T における分類

また,ITU-T では勧告案 Y.1541 [ITU 02] において QoS クラスを表 1 のような 6 クラスにわけている [Ash 06b].ここでは遅延に対して IPTD (IP Packet Transfer Delay) ということばがあたえられ,“ジッター” ということばのかわりに IP パケット遅延分散 (IP Packet De-lay Variation, IPDV) ということばが使用されている. また,パケット廃棄率 (IPLR) が Class 5 をのぞいて 10-3 とさだめられ,パケットあやまり率 (IPER) もさだめられている.

Class 0 が 3GPP における会話クラスに対応し,Class 1 がストリーミング・クラス,Class 2 がインタラクティブ・クラス,Class 5 がベストエフォート・クラスにほぼ対応しているとかんがえられる. Class 0 ~ 1 は DiffServ (Differentiated Services, 差別化サービス) の EF PHB に対応し,Class 2 ~ 4 は AF PHB,Class 5 は BE PHB に対応するという [Ash 06b].

NGN においてはさまざまな種類のアクセス網が使用されるであろう.そのなかには,たとえば Ethernet や ATM もあるだろう. これらのアクセス網はそれぞれ独自の QoS クラスをもっている. ATM であれば CBR, VBR, GFR などのクラスわけがあり,VLAN であれば優先度によるクラスわけがある. 端点間で QoS を保証するためには,このような多様な QoS クラスをうまくくみあわせて使用する必要がある. また,ばあいによっては動的にくみあわせをかえることも必要になるかもしれない.

表 1 ITU-T における QoS クラスの定義
QoSclasses.png

3. IETF TSVWG における分類

IETF の TSVWG [Bab 06] (Figure 2 ~ 3) においては,DiffServ のためのサービス・クラスを表 2 の 12 個にわけて,それぞれに対応させるべき DSCP をしめしている. この分類は 3GPP や ITU-T における分類より詳細であり,とくにネットワークの制御や管理のためのクラスがあげられていることが特徴的である. また,3GPP や ITU-T のドキュメントがまだ通信放送融合に関してほとんど言及していないのに対して,それも反映されている. 表 2 には記述していないが,さらに各クラスに対してコアルータがおこなうべき処理についても記述している. しかし,それがどのような根拠にもとづいているのかは記述されていない. すくなくとも現状では定量的な根拠はなく,理由づけは今後の課題としてのこされているものとかんがえられる. また,この分類をバックボーンに適用するのは困難であろう. なぜなら,バックボーン・ルータがもつキューの数はネットワーク・インタフェースあたり通常は 4 個程度であり,表 2 におけるほどこまかくトラフィック制御をおこなうことはできないからである.

表 2 TSVWG におけるサービス・クラスの分類と特徴

4. 分類とマッピングに関する研究

QoS クラスの分類とことなる分類間の QoS クラス・マッピングに関しては,つぎのような論文がある. El-Gendy ら [Gen 03] はソフト実時間アプリケーションを中心として,QoS を必要とするアプリケーションに関する 6 つの分類軸をしめしている. それらは,1) 会話的 vs. 非会話的,2) 弾力性がある vs. 弾力性がない,3) 耐久性がある vs. 耐久性がない,4) 適応的 vs. 非適応的,5) 実時間ビデオ / オーディオ vs. ストリーミング,6) マルチメディア vs. 大規模データ / 計算 である. これらの軸のうちのいくつかは,前節までの分類においてあつかわれていないため,課題があるとかんがえられる. また,El-Gendy らは QoS パラメタとしてスループット,遅延,ジッター,損失,信頼性の 5 つがあるとして,それらを解説している.

Karam ら [Kar 00] は,さまざまな型のトラフィックを低速ネットワークにおいてはことなるクラスによってあつかうのがよいが,高速ネットワークにおいてはそれを少数のクラスにまとめてもよいとしている. そして,各種のネットワークにおけるクラスのわりあてをしめしている. Ali ら [Ali 05] は UMTS と IP 間の QoS クラス・マッピングに関する実験の結果として会話的な音声と動画とにことなる QoS クラスをわりあてるべきだ (つまり,ことなるトラフィック制御をおこなうべきだ) という結論をえている. Mi ら [Mi 06] は Application Service Map (ASM) というデータを使用して NGN などにおける QoS クラス・マッピングの方法を記述している. ほかにも Mammeri ら [Mam 05],Jitae ら [Jit 01],Agh ら [Agh 02] などが QoS クラスの分類とマッピングをあつかっている.

参考文献

  • [3GP 06d] 3rd Generation Partnership Project (3GPP), “Technical Specification Group Services and System Aspects; Quality of Service (QoS) Concept and Architecture (Release 6)”, 3GPP TS 23.107 V6.4.0, March 2006.
  • [Agh 02] Agharebparast, F. and Leung, V. C. M., “QoS support in the UMTS/GPRS Backbone Network Using DiffServ”, IEEE Global Telecommunications Conference (GLOBECOM’02), Vol. 2, pp. 1440–1444, November 2002.
  • [Ali 05] Ali, R. B, Pierre, S., and Lemieux, Y., “UMTS-to-IP QoS mapping for voice and video telephony services”, IEEE Network, Vol. 19, No. 2, pp. 26–32, March-April 2005.
  • [Ash 06b] Ash, J., Dolly, M., Dvorak, C., Morton, A., Tarapore, P., and El Mghazli, Y., “Y.1541-QOSM -- Y.1541 QoS Model for Networks Using Y.1541 QoS Classes”, draft-ietf-nsis-y1541-qosm-02, Internet Draft, IETF, May 2006.
  • [Bab 06] Babiarz, J., Chan, K., and Baker, F., “Configuration Guidelines for DiffServ Service Classes”, draft-ietf-tsvwg-diffserv-service-classes-02, Internet Draft, IETF, February 2006.
  • [Gen 03] El-Gendy, M. A., Bose, A., and Shin, K. G., “Evolution of the Internet QoS and Support for Soft Real-Time Applications”, Proceedings of the IEEE, Vol. 91, No. 7, pp. 1086–1104, July 2003.
  • [ITU 02] ITU-T, “Network Performance Objectives for IP-Bases Services”, Y.1541 (Pre-published), May 2002.
  • [Jeo 05] Jeong, S., Lee, S., Karagiannis, G., and Lieshout, G., “3GPP QoS Model for Networks Using 3GPP QoS Classes”, draft-jeong-nsis-3gpp-qosm-02, Internet Draft, IETF, October 2005.
  • [Jit 01] Jitae Shin, Jong Won Kim, and Kuo, C.-C.J., “Quality-of-Service Mapping Mechanism for Packet Video in Differentiated Services Network”, IEEE Transactions on Multimedia, Vol. 3, No. 2, pp. 219–231, June 2001.
  • [Kar 00] Karam, M. J. and Tobagi, F. A., “On Traffic Types and Service Classes in the Internet”, Global Telecommunications Conference (GLOBECOM’00), pp. 548–554, November 2000.
  • [Mam 05] Mammeri, Z., “Approach for end-to-end QoS mapping and handling”, 2nd IFIP Int’l Conference on Wireless and Optical Communications Networks (WOCN’2005), pp. 265–269, March 2005.
  • [Mi 06] Mi Sun Ryu, Hong-Shik Park, and Sang-Chul Shin, “QoS Class Mapping over Heterogeneous Networks Using Application Service Map”, Int’l Conference on Systems and International Conference on Mobile Communications and Learning Technologies (ICN/ICONS/MCL 2006), pp. 13–13, April 2006.
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