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実際のネットワークと被験者による評価をめざした,国プロでの QoS 保証法の開発

昨年度,私は 「次世代バックボーン」 という総務省の国家プロジェクトのなかで,ネットワーク QoS (Quality of Service,サービス品質) に関する研究を担当してきました. このプロジェクトをふりかえって,論文にはいれられなかった,いくつかの話題をとりあげてみたいとおもいます. (このブログのおもな目的は複数の研究テーマのあいだをつなぐことでしたが,ここではむしろ複数の論文のあいだをつなぐために書いています.)

概要

2006 年度の成果はすでに研究会論文などに書きましたが,それらについてはブログの 「デジタル音声再生は,ひとすじなわではいかない」 という項目にも書きました. 来年 1 月には ICOIN 2008 という,釜山でひらかれる国際学会でも発表することになっています. しかし,個々の論文に書いたことはこの 1 年間にやったことの一部でしかありません. 1 年間でいったい,なにをやろうとしたのかという,それらの論文にまたがることは,論文には書く場所がありません. それは国プロの報告書には書いてよいはずのことですが,3 月ぎりぎりまで実験をしていたので,ゆっくりふりかえって書く時間もなくて,書かずじまいになってしまいました. また,もし仮に国プロの報告書に書いてあったしていも,それにふれるひとはすくないので,もっとひとの目にふれるこの場所で書いてみようというわけです.

動機と背景

プロジェクトは 2005 年度からスタートしていますが,この年には私は担当していませんでした. したがって,私にとっては 2006 年度が初年度でした. このプロジェクトではポリシーにもとづく NGN 的な意味でのネットワーク QoS の制御 (資源とアドミッションの制御) がテーマになっていました.

QoS に関しては多数の論文が出版されていますが,そのなかには理論的な論文コンピュータ上でのシミュレーションにもとづく論文がおおく,実際にバックボーンでつかえるような機器をつかったネットワークに実際にトラフィックをながして測定・評価した論文はすくないのです. また,実際に測定をおこなっている場合でも,比較的小型のルータやスイッチを使用して,トラフィック量も 100 Mbps 以下のことがおおいのです.

目標 1: 実測にもとづく評価

精密なシミュレーションをおこなえば実際に測定しなくてもわかるということかもしれませんが,現実のネットワーク機器やサーバが理論どおりに動作するとはかぎりません. バグがあればもちろんですが,そうでなくても理論からずれてくる可能性はいろいろかんがえられます. したがって,この仕事をはじめるにあたって,私は実際の機器とプログラムとを使用して実測にもとづいて評価したいと,つよくおもいました.

目標 2: 主観評価

また,QoS というのは最終的には通信をおこなうユーザがその品質に満足するかどうかで評価するべきものなので (そういうときには QoS というよりは QoE (Quality of Experience) ということばがつかわれますが),上記のような客観的な評価だけでなく,被験者をつかっての主観的な評価までやりたいとおもいました. 会社の仕事ではなかなか主観評価にまで予算を用意することがむずかしいのですが,国家プロジェクトの利点はそこまで予算がかけられることです. その利点をぜひ,いかしたいとおもいました. 主観評価のためによくやる方法は社員をかきあつめてきて自分で実験するというやりかたですが,そうしなかったのは第 1 には私自身は経験がないのでそういうやりかたではうまくやれる自信がなかったし,ひとりで実験できるともおもえなかったからです. また第 2 には社員をあつめればみかけ上はコストがかからないのですが,実は時間給を計算すれば非常にたかくつくからです.

計画の実施

そういうわけで,今年 2 月までにプログラムを開発して実験用のネットワークを組み,3 月には客観評価と主観評価とをおこないました. 先端的なルータをまとまった期間借りるということはなかなかできなかったので,GS4000 というハイエンドの L3 スイッチを借りました. それも 1 台だけしか借りられなかったので,くふうして実験用ネットワークを組みました (そのために結果の透明性が低下して,国際学会への投稿でも評価がさげられる原因になってしまったのですが…).

また,バックボーンでつかえる技術をめざした開発なのでほんとうは 10 Gbps のリンク (10 ギガビットのイーサネット) をつかって実験したかったのですが,断念しました. というのは,のぞみの性質をもった 10 Gbps のトラフィックをうまく発生させられる自信がありませんでした. そのため,1 ギガビットのイーサネットを使用し,3 台の PC を使用して MMPP (Markov-Modulated Poisson Process) というモデルにしたがう 1 Gbps 程度のトラフィックを発生させて実験しました. この MMPP というモデルはシミュレーションにおいてはよくつかわれているのですが,それにもとづいて実トラフィックを発生させた例はすくないようです. それにどれだけの意味があるのかは検討が必要ですが,やってみる価値はあるとおもいます.

そうやって評価した結果の一部を研究会などで発表してきたわけです. 期間がかぎられていたので,かならずしも目標どおりにはいきませんでしたが,それでも一応,QoS 保証法の設計からプログラム開発,客観評価・主観評価という一連のプロセスを 1 年間でなんとか,まわしました. もちろん,それができたのは,おおくのひとの協力があったからにほかなりません (論文には謝辞にそれらのひとの名前が書いてありますが,ここでは省略させてもらいます). そして,客観評価と主観評価のそれぞれにおいて,ある程度の成果をえることができました. このうちとくに主観評価については書いておきたいエピソードもあるのですが,それについてはべつの項目,あるいは別の機会にゆずることにします.

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2007-12-01 00:13に投稿されたエントリーのページです。

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