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書評:政治・法律・憲法, 政治・法律・憲法

「デタラメ」 と書くなら,もっときちんとした議論が必要 ― 市川 眞一 著, 「政策論争のデタラメ」

タイトルに 「デタラメ」 というつよいことばをつかうならば,これまでの議論のどこがデタラメなのか,きちんと論じるべきだろう. 著者がこれまでのおおくのジャーナリストなどと意見をことにしていることはこの本を読めばわかる. しかし,従来の議論はデタラメで著者の意見はそうでないと主張するなら,どこがデタラメだったのか,なぜ著者の議論はデタラメでないといえるのかを,もっときちんと論じるべきだろう. たとえば,著者は 「後期高齢者医療制度そのものは悪い制度ではない」 と書いているが,その理由はまったく書かれていない. これでは,おそまつというほかはない.

評価: ★★☆☆☆

関連リンク: 政策論争のデタラメ@ [bk1]政策論争のデタラメ@Amazon.co.jp

注記: BK1書評Amazon.co.jp書評 に投稿しています.

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コメント (4)

書評読者:

大変恐縮ですが、この本、読んでおられますか?後期高齢者医療制度の部分を批評しておられますが、同書を読むと、そこには以下のように書かれてあります。
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 しかしながら、どのような制度にも必然的に経済上の制約がある。日本の場合、高齢化と国の債務は、目を逸らすことのできない「制約条件」だろう。公的医療保険制度が原則として現役時代七割、高齢者の九割を負担する仕組みの下で、医療費の膨張を許せば、近い将来、現役世代の負担を大幅に増加させるか、もしくは国民皆保険を諦めるか、どちらかの選択を迫られることになりかねない。
 そこで、国による医療保険制度改革の一環として、〇八年四月から導入されたのが「後期高齢者医療制度」だった。趣旨は、増大する老人医療費に対応して、高齢者独自の医療保険制度を構築し、現役世代の負担を緩和することにあったはずだ。七五歳以上の高齢者は、それまで加入していた医療保険制度を抜けて、新たな制度の下で医療サービスを受ける制度を整備したのである。
 原則として高齢者全員が保険料を納めなければならないが、実は、医療費の負担は一割に過ぎない。残りの九割のうち、五割が公費から、四割が現役世代の加入する医療保険から、それぞれ拠出される仕組みである。
 この後期高齢者医療制度そのものは悪い制度ではない。むしろ必要とも言えるだろう。ところが世間の評判はきわめて悪い。メディアでも総攻撃を受けた感がある。
 その多くにおいて制度の根本に関する議論はほとんど聞かれず、高齢者が負担する保険料が年金から天引きになっていることへの批判や、ネーミングへの感情的反発がほとんどだ。
 もちろん、「消えた年金記録問題」などから、社会保障制度への不信感が強まっている上、政府による説明の不手際もあった。政府側に説明能力があれば、このような大問題にはならなかったであろう。ただし、制度設計の議論が感情論に置き換えられたことで、冷静な評価ができなくなっているとすれば、その方が大きな問題ではないだろうか。
(P72~P73)
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ここまで書かれているにも関わらず、 「理由ははまったく書かれていない。これでは,おそまつというほかはない。」という批評は、それこそお粗末なのではないでしょうか。マスコミで批判された後期高齢者医療制度の真の意味が、簡潔に説明されていると思いますが。徴収方法やネーミングに関する感情論での批判が「デタラメ」であり、財政状況が逼迫するなか、高齢化社会に対応した医療保険制度の必要性を論じていると読めないでしょうか。

そもそも、本書のこの章においては、医師不足問題を論じるなかで、後期高齢者医療制度に付加的に触れたものと言えます。その部分を敢えて取り上げて批評されるのは、何か意図がおありなのでしょうか。

書評をネットにアップロードされるのなら、もっとしっかりその文章をお読みになって、責任ある内容を書いていただきたいと考えます。

書評読者さん,
コメントどうもありがとうございます.たしかに「理由はまったく書かれていない」という書き方は適切でなかったとおもいます.しかし,「現役世代の負担を緩和」するための方法はいろいろあったはずです.高齢者だけを分離して別の制度をつくるべき理由がこの本のなかで説明されているとはやはりおもえません.

書評読者:

ご返信ありがとうございます。ただし、ご説明は納得の行くものではありません。例えば、前回書きました点、つまり本書のこの章においては、医師不足問題を論じるなかで、付加的に触れていると考えられる後期高齢者医療制度の部分を敢えて取り上げて、この本全体の「書評」とされているのはいかがなものでしょうか。
大変申し訳ない表現ですが、あなたの書かれているのは、「感想」であって「書評」ではないと思います。「従来の議論はデタラメで著者の意見はそうでないと主張するなら、どこがデタラメだったのか、なぜ著者の議論はデタラメでないといえるのかを、もっときちんと論じるべきだろう」とお書きになられていますが、同書においては、例えば以下の点が、具体的な数字を挙げて論じられているのではないでしょうか。1)環境・エネルギー:省エネやクールビズに温室効果ガス抑止の十分な効果があるとの議論がデタラメ。エネルギー供給サイドの見直しなくして温室効果ガス抑止もエネルギー安全保障も達成不可能。2)医療:医師数の不足に関する議論はデタラメ。開業医の優遇策を続ける一方、基幹病院の統合や患者の管理をしてこなかったために、病院勤務医、特に産科や小児科、外科など特定診療科の医師が疲弊していることが問題の本質。3)教育:中教審を中心とする現在の教育カリキュラムの作成はデタラメ。学校の主な役割を教科学習と明確に規定し、数値によるパフォーマンス管理を明確にすべき。4)郵政民営化:郵政民営化が構造改革の本丸と言うのはデタラメ。民営化がユニバーサルサービスは両立しない。郵貯、簡保は縮小する一方、信書の配達は国営を維持すべき。5)公務員叩き:政策の失敗を役人に帰すのはデタラメ。政治が役人をコントロールできないことが問題。国会議員の数を減らす一方、議員スタッフを拡充し、国会議員の立法能力を高めなければならない。
従来の議論のどこがデタラメで、筆者はどのような意見を持っているのか、明確に書いてあるでしょう。ご自分の意見と見解を異にすることで、他人の著作を批判するのであれば、それは「感想」に過ぎません。批判は重要だと思います。しかし、「書評」とされる場合、それに値するあなたご自身の論理が必要と考えます。
ネット時代は、誰もが自分の主張をすることが可能です。それはそれで素晴らしいことかもしれませんが、誰もその内容をチェックできないことも事実でしょう。出版物は、どのようなものであっても、一応、著者、出版社が責任を負う仕組みが確立されています。そうした出版物への「書評」を書かれる以上、書かれる方も、しっかりその本を読み込んだ上で、理論的な批評をする義務があるのではないでしょうか。そうでなければ、あまりに無責任です。
 

書評読者さん,

ていねいなお返事,どうもありがとうございます.書かれていることはだいたい,もっともだとおもいます.私が書いていることが「書評」ではなくて「感想」だといわれれば,そのとおりだとおもいます.「書評」ということばをつかうのが適切でないのかもしれませんが,私としてはもともと,本全体の書評を書くつもりではありません.できるだけ全体の雰囲気をつたえたいとはかんがえていますが,時間をかぎって,1 冊の本に対して数行の「感想」を書くのにとどめています.したがって,本の一部しかとりあげられないのはあきらかです.

この「書評」は私のサイトでは 1 冊の本についてひとつしかありませんが,もともと Amazon.co.jp などへの投稿内容をコピーしたものです.Amazon にいけば,通常,ほかにもいくつかレビュー (書評) があるので,読者はいくつかのレビューをあわせて,みることができます.したがって,ひとつの「書評」はその本の一面だけをとりあげるだけでもよいと私はかんがえています.実際,Amazon のレビューはそうなっているとおもいます.

私の Web ページをおとずれたひとは,とりあえずは私の「書評」だけを目にすることになりますが,そこからリンクをたどって他の「書評」もみることができます.ですから,やはり,本全体の書評である必要はかならずしもないとかんがえています.著者や出版社とは責任のおもさがまったくちがいます.それをいっしょにしてほしくないとおもいます.

とはいえ,かぎられた時間,かぎられた行数のなかで,できるだけバランスをとっていこうとはおもっています.書評読者さんには,私にたりないところがあったために不快なおもいをさせてしまったようで,もうしわけありません.しかし,ぜひご理解いただきたいとおもっています.

最後にもうひとつ.私の Web サイトをおとずれてくださるひとはそれなりにいるのですが,コメントを書いてくださるひとは,おおくはありません.ブログが炎上するという話はよくききますが,私のサイトに関してはそれとはほどとおい状態です.炎上してしまうとどうしようもなくなりますが,書評読者さんのように真剣にコメントしてくださる方はたいへんありがたいとおもっています.どうもありがとうございました.

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