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知的生産とリテラシー:箇条書き, 論文:論文のかきかた

箇条書きに関する 牧島 一夫 の議論

日本人のなかには箇条書きや図式をこのむひとがおおいのですが,このブログのなかではこれまで,それらに対する疑問箇条書きに関するなやみを書いてきました. 疑問をもっているひとはわたしだけではありません. ネットでみつけた箇条書きに関する記述について書きます.

東大の物理の 牧島 一夫 が書いた文章 「M2 の皆さんへ: Version 2002」 のなかに 「箇条書き」 という節があります. そこには,つぎのように書かれています.

2.4.1 箇条書きは是か否か?

意外に難しいのが、箇条書きの扱い方です。 かなり多くの人が、箇条書きにすると論理構造がハッキリするので好ましい、と考えているようですが、私はこの考えに疑問をもっています。 その証拠に、Nature, ApJ, PASJ などの掲載論文を眺めて見てください。 箇条書きは、決して多くないはずです。 慣れた論文の書き手は、このことを無意識にせよ知っているのです。 ジャーナリスティックな記事になると、箇条書きは稀にしか登場しません。

Nature などの論文で箇条書きがつかわれていないから箇条書きをさけたほうがよいとは私はおもいません. 私は論文でも “first”, “second” などと書くかわりに箇条書きをつかうようにしています. 欧米でそれをつかわないのは単に習慣の問題だとおもいます. 先日,英文の論文を投稿するまえに添削 (proofread) をうけましたが,添削者は私の箇条書きを “first”, “second”, … でかきかえました. 段落もひとつにしてしまったので,私は (箇条書きにもどしてもよかったのですが,そうはせずに) 各項目のはじめで段落をわけるようにしました.

しかし,箇条書きに関して疑問をもっているという記述をみて,私はすこしよろこびました. 私も箇条書きが偏重されていることへの疑問 (「箇条書きや表・図式は複雑な論理を隠蔽してわかりやすくする」) をもっているからです. 牧島 一夫 はさらにつぎのような箇条書きのつかいかたをすすめています.

2.4.2 箇条書きはどう使う?

では具体的に、箇条書きをどう使えばよいでしょうか? 私はその基準として、次の 5 点を挙げたいと思います。 ちなみにこの文章でも何個所かで箇条書きが登場しますが、いずれもこれらの基準に従っています。

(1) 箇条書きは、やたらに使うな。

(2) 箇条書きは長くても全体で半ペ-ジ程度とし、個々のアイテムは数行以内にとどめよ。 長くなる場合は箇条書きをやめ、各アイテムを別々の段落や項に振り分けよ。

(3) 論文全体を通して箇条書きのスタイルを1種類に統一し、インデントを工夫せよ。

(4) 1組の箇条書きの全体は、1個の段落にスッポリと収まるようにせよ。 具体的に言うと、箇条書きの始めおよび途中のいかなる場所でも、段落を変えてはならない。 箇条書きの終わった直後も、そこで必ずしも段落を切る必要はない。

(5) 絶対に箇条書きの中に階層構造を作るな。

このうち (3) を補足すると、最も悪い例は、ある場所で (1) (2) .. という箇条書き行ない、次には a, b, c, ... を、また別のところでは ア、イ、ウ、... を、というような統一性の無い使い方をすることです。 また (4) の実例として、ここでの箇条書きそのものを見て下さい。(5) の後も段落は切れずに続いていますから、2.3.2 項は1個の段落だけを持ち、その中に箇条書きがスッポリと収まっているわけです。 また次の 2.4 では3つのやや長めのアドバイスが出てきますが、上の (2) に従い、それらは箇条書きにしてありません。

私はこの基準にはかならずしも賛成できませんが,すじのとおったひとつの方針だとはおもいます.

(1) に関しては同意です.

(2) にもほぼ同意しますが,私のばあい,もうすこし長い箇条書きもつかっています. さらにながくなるときは項 (subsection) にわけるのはこの著者とおなじです.

(3) に関しては,私は箇条書きのスタイルとして基本的につぎの 4 種類を使用しています.

  • ...
  • ...
  ...

  1. ...
  2. ...
  ...

・ ... [タイトル]
... [本文]
・ ... [タイトル]
... [本文]
 ...

1. ... [タイトル]
... [本文]
2. ... [タイトル]
... [本文]
 ...

ただし,HTML によって書くときは,あとの 2 種類はおなじタグを使用するので,明確なくべつはありません.

(4) に関しても,タイトルつきの箇条書きのときには,1 項目のなかに 2 つの段落がふくまれるときがあります. ただし,これは例外だとかんがえています. また,逆に箇条書きの開始時は段落をわけるのが基本だとかんがえています. 箇条書きに (MS Word でいう) ひとつのスタイルをあてはめるには,段落をきる必要があります.

(5) に関しては,入れ子になった箇条書きをつくることがあります. あまり複雑な入れ子はつくるべきでないとおもいますが,階層はあってよいとおもいます. たとえばつぎのような構造です.

1. ...
  • ...
  • ...
  ...
 ...
2. ...
  • ...
  • ...
  ...
 ...

こういうわけで,具体的な方針に関してはほとんど一致していませんが,箇条書きをもっと意識してつかうべきだということに関しては,共通しているのではないかとおもいます.

キーワード: 箇条書き, 個条書き

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