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論文査読の方法

研究を仕事としていると,ときどき論文の査読をたのまれることになる. なれないうちは査読結果をどう書いたらよいかなど,なやむことがおおかった. しかし,最近は比較的短時間で,それほどくるしむことなく査読できるようになった. ここでは私の査読のやりかたについて書くことにする.

査読論文はいろいろな方法でやってくる. 会社づとめをしているが,研究所なので,会社経由で依頼されることもしばしばである. また,自分が過去に書いた論文にちかい分野のものを論文誌などの査読委員から直接,依頼されることもある. 論文を投稿すると,かわりに他の論文の査読を依頼されることもある. 第 2 の方法で英語の論文の査読を依頼されたことはなかったようにおもうが,それ以外は日本語,英語をとわず,やってくる.

依頼されると,まずそれが自分にとって査読可能かどうかを判断して,可能でなければことわることになる. 依頼される論文はかならずしも自分の得意分野ではない. なかなか査読のひきうけ手がないために,まわってくることもしばしばある. たらいまわしされたために投稿されてからすでに時間がたってしまったそういう論文は,なるべく査読をひきうけるようにしている. どうしても自分では査読できないとしても,適切とおもわれるひとをしっていれば,自分から依頼することによって,さらに時間がかかるのをさけるのがよいとおもう.

ひきうけた論文は,まずは仕事上で必要になった論文を読むときのように,普通に (ざっと) 読む. これも通常どおりだが,その論文を読むだけではわからない部分は,その論文で参考文献としてあげられた論文や,関連する論文を自分でさがして,みることになる. こういうとき,「論文の検索と入手」 という項目で書いたように,Web で検索すると,たいていは必要なものが手にはいる. この項目で書いた専用の検索エンジンよりも,最近は Google で検索したほうがうまくいくことがおおい. 仕事で必要な論文は追加のコストをかけて入手することもあるが,査読のばあいには無料で入手できるものや,ACM, IEEE といった,会社や自分自身でデジタル・ライブラリの使用料をすでにはらっているものだけですませている.

会議論文のばあいはこの読みかたで十分だが,ジャーナル論文のばあいはさらに精密に読む必要がある. 論旨にまちがいや不十分な点がないか,誤植がないか,などにも注意をはらう必要がある.

そうしてから,査読結果の記述をはじめることになる. 最近は査読結果はたいていメイルか Web で記述することになる. 記述の形式はだいたいきまっているのでそれにしたがえばよいが,自由形式で記述する部分はだいたい,つぎのようにしている.

第 1 に,論文の内容を非常におおざっばに,1 ~ 2 文でまとめるようにする. これは査読者が論文をどういう内容のものとして理解したかを書くのであり,著者の立場でのまとめ (つまり,論文の要旨) と一致しないこともある. 著者のまとめと一致しているなら,書かなくてもよいだろう.

第 2 に,論文の長所を記述する. 査読結果の記述形式もだいたい,まず,よい点を記述するようになっている. わるい点をさきに書くのは著者の自信をなくさせる,よくない書きかたである. あまりできのよくない論文でも,できるだけ,よい点をみつける必要がある.

第 3 に,論文の短所を記述する. 短所は攻撃的にならないように,淡々と指摘する. どうなおせばよいかがわかるように書くのがよい.

論文を受理するかどうかを査読者が判断するときには,査読の手引きにしたがって判断する. ここでは受理するかどうかの判断のしかたについては省略する. それとともに,ジャーナル論文のばあいは,短所のある論文をそのままとおすか再度査読するかが問題になる. 比較的おおきな修正が必要なときは再査読が必要になるが,査読者によって判断がわかれるところである. 私のばあいは,価値がないと判断した論文以外はたいてい 2 回,査読するようにしている. 分野にもよるだろうが,すくなくとも情報工学・科学のジャーナル論文のばあいは,拙速よりも,きちんと内容をととのえることが重要だとおもうからである.

ここまでは論文全体をみての指摘であり,会議論文のばあいはそれだけでおわらせることもある. しかし,とくにジャーナル論文のばあいは文章の特定の部分の問題点も指摘する必要がある. つまり,ページと行を指定して個々の文の問題点を記述する. 会議論文についても,気づいていれば,なるべく指摘してあげるのがよいとおもう. この記述もできるだけ建設的に書くのがよい.

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