Subject: [Kiroku: (88)] Tsuushin No.14
Date: Sun, 26 Nov 95 20:34:30 +0900
From: funaken@ccs94.cla.kobe-u.ac.jp (Takeo Funahashi)
...[中略]...

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                    記録室通信(Renewal)
                           25-Nov-1995 第14号

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                                             Quake Chronicle Project
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              −はじめに−

 皆様、いかがお過ごしでしょうか?「震災・活動記録室」です。秋の紅葉も
終盤ですね。赤や黄色に染まった山を見て、和んだ気持ちになることもあった
ことでしょう。もう少し経てば、いよいよ寒い冬の到来です。被災地にやって
くる冬はいつもより寒く感じますが、この寒さに負けない、心をほっと暖める
ような記事も紹介できるよう、努力していきたいと思っております。それでは
第14号をお送りいたします。   (「記録室通信」副担当:伊藤信太郎)


             −記録室通信とは−

 記録室では震災後のボランティア活動の記録を残すことを目的として、アン
ケート調査、インタビュー取材などを中心に活動してきました。同時に各団体
から活動の資料を提供していただき、目録を作成して将来公開するための準備
を進めています。そして、活動の中で出会ってきた皆さんとの情報交換の場と
して、また新たな出会いの場として、隔週で「記録室通信」を発行しています。
被災地での最新情報、全国のボランティアの動き、支援活動でつかんだノウハ
ウの紹介等の発信を考えています。


            −事務所移転のお知らせ−

 前号でお伝えした通り、「震災・活動記録室」は新しい事務所に移転しまし
た。9月の独立以来、記録室の主旨に賛同される方々のご協力をいただき、徐
々にではありますがメンバーも増えてきて活動のスペースが手狭になってきた
ため、11月7日より、活動事務所を長田へ移して活動しています。移転の際に
は機材も補充して、作業の一層の効率化を図ることになりました。また、幸い
近所に活発な活動をしているボランティア団体がいくつもあり、記録室にとっ
ていい刺激になります。

 記録室は現在、日常の作業のかたわら、おもに、

  1.収集した資料のうち、特にすぐには公開できないもの
    (個人のプライバシーを侵す恐れのあるもの)をどう処
    理し、社会の役に立つ形にするか
  2.今後どのような方向で記録を集め、資料をまとめるか

について、外部の方にもご協力をいただきながら議論を深めています。今号で
は詳しくお伝えできませんでしたが、かなりの進展はあり、次号以降お伝えで
きると思います。
 今後ともよろしくお願いいたします。また、新しい事務所にもぜひお立ち寄
り下さい。                        (実吉 威)

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        「震災・活動記録室」新住所
                〒653 兵庫県神戸市長田区東尻池町1-11-4
                                Tel.078-682-7230 Fax.078-682-7231
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       −特集 「社協(社会福祉協議会)って何?」−

■はじめに
 特集にあたって、まず初めに正直に告白しておきたいと思います。私は、震
災で初めてボランティアというものを体験したボランティア初心者です。また、
社会福祉協議会なる存在も、震災まではまったく知りませんでした(ごめんな
さい!)
 この文章は、そんなボランティア音痴、社協音痴が震災を一つのきっかけに
これらに関わり、また、記録室の一員として取材を重ねた成果とお考え下さい。
見当違いの誤解もあるかと思います。その点は、ご叱正下さい。
 ただし、「ボランティア元年」と言われた今年、私のように生まれて初めて
ボランティアに従事した人も少なくなかったはずです。そのような人たちの眼
に社協がどう映ったか、社協とボランティアの関わりについて何を感じたかを
書き留めておくことは、今後、真の「ボランティア社会」を作り上げていくた
めに、決して無意味な作業ではないと感じています。本号と次号、2回にわた
る特集は、こんな気持ちから企画したものです。どうぞよろしくお願いします。
 なお、今回の取材にあたっては、兵庫県社会福祉協議会ボランティアセンタ
ーの馬場正一さん、桑原英文さん、同社会福祉情報センターの金山竜也さんの
ご協力を得ました。したがって、記事内容も主として県社協の活動を題材とし
ています。この点、ご了解下さい。皆さん、お忙しい中、素人のトンチンカン
な質問にもとても親切に応答して下さいました。記してお礼申し上げます。た
だし、本特集記事に関していっさいの責任は筆者にあることを申し添えておき
たいと思います。

■社協って何?
 社会福祉協議会は、全国の都道府県、市町村に設置され、東京に全国社会福
祉協議会があります。その規模は1人から100人を越す大所帯までさまざま
です。また、その設立は、何と厚生省に対するGHQの提案にまで遡ることが
できます。当時、社協などというものを聞いたこともない日本人のために作ら
れた、「森の福祉協議会」という人形劇(!)の台本が、県社協に保管されてい
ました。「森の福祉協議会」は、クマさんが町長をつとめる町に住むふつうの
市民ウサギさんが、お年寄りの介護など、町役場だけでは対応しきれない町民
サービスを受けもつ組織の必要性に気づいていくという、今から思えば微笑ま
しいお話です。ただ、私を含め、社協に対する理解度は、今でもウサギさんと
同じようなものという方も多いかもしれません。  

 さて、社協の業務・事業は、一言で言えば時代時代の福祉課題(社会問題)の
解決、ということになるでしょう。たとえば、設立当初は、公衆衛生、環境美
化など、最近では、社会の高齢化に対応して在宅福祉サービスなどがメインの
事業になりつつあるようです。また、社協は、昭和26年に制定された社会福
祉事業法に基づき社会福祉法人の認可を得ている、「住民主体」を原則とする
民間の団体です。ただし、次のような自己分析が存在するのも事実です。「今
回の震災では、社協の民間性の発揮は不十分だったという意見も多く聞かれた。
業務面でも、人事面でも日常的に行政の影響力が非常に大きいことがその理由
ではないかという意見が出される。実際に、事務局長が行政の対策本部に組み
込まれてしまい、意思決定が行えなかったこともあったという。」
    (兵庫県下社協職員協議会発行の「社協の仲間(1995年秋号)」より)

■阪神大震災と社協
 被災地である神戸市内の対応は、神戸市社協と兵庫県社協が対応の中心とな
りました。上でも述べましたように、震災に関わる社協の取りくみについては、
「全国組織であることの強みを活かした」と評価する声がある一方で、「活動
の立ち上がり、柔軟性に課題が残る」とする見解もあります。たしかに、震災
直後は、社協の職員、施設、さらに行政機関が被災したことから、社協の活動
は、いくつかのボランティア団体、NGO団体に比べて立ち遅れたかもしれま
せん。しかし一方で、兵庫県社協が確立した「ブロック支援体制」、仮設住宅
支援のための「ふれあいセンター」などには、社協の組織力、専門性がいかん
なく発揮されていると思われます。また、神戸市社協の傘下にある区社協には、
震災をきっかけとして「ボランティアセンター」が設置されました。

 「ブロック支援体制」とは、支援にあたる被災地外の社協をブロック割りに
し、それぞれの持ち味を活かして「コーディネーター(人)、モノ、サービス」
を、ペアリングした被災地の社協を通じて被災者に提供するという仕組みです。
つまり、芦屋市社協には、加古川市社協が窓口となって東播磨ブロック南部の
社協が支援にあたるといったシステムです。日常の活動で老人介護にあたって
いた社協は移動入浴車を被災地に投入し入浴サービスを実施しました。地域内
の給食サービスで培ったノウハウを炊き出しボランティアに活かした社協もあ
りました。

 「ふれあいセンター」は、地域により形態は若干異なりますが、基本的には
大規模な仮設住宅建設地域に作られた集会所です。自治会の拠点、行政相談の
窓口として、あるいは、入居者の憩いの場として機能しています。実は、筆者
自身、あるボランティア組織で仮設住宅ケアのための下調べ、プログラム作り
の活動をしました。その際、このような拠点の必要性を切に感じたものの、資
金面その他の事情から、必ずしもうまく対応できなかった体験があります。こ
の点で、行政組織との連携の下、「ふれあいセンター」をボランティア連絡体
などと協力して運営している社協は「縁の下の力持ち」と評されます。

 また、神戸市内の各区役所には、今回の震災をきっかけに、新たに「ボラン
ティアセンター」が設置されましたが、これには神戸市社協・各区社協が関わ
っています。これは、今回の震災直後にボランティア希望者が区役所に殺到し
たにも関わらず、希望者のコーディネートを十分に行うことができなかったと
いう反省を踏まえて設置されたものです。設置された時期も経緯も各区によっ
て異なるのですが、早いところでは3月中に設置され、遅いところでも6月半
ばに設置されています。このことについては、次号で詳しく取り上げたいと思
っていますが、この「ボランティアセンター」の存在意義については、まだま
だ一般に理解されていないように思います。窓口は市民に開かれているのです
から、ボランティアも住民の方々も、もっと有効に利用する方法を考えてみて
はいかがでしょうか?

■社協の活動
 震災に対する社協の取り組みは、さまざまで以上に尽きるものではありませ
ん。詳しくは次号で取り上げたいと思いますが、震災時の社協の活動に対して
批判的な意見もあるようです。ただし、そうした意見を踏まえて、震災後、社
協が大きく変わりつつあることも事実と思います。とくに、外部とのコンタク
ト、連携が目に見えて活発になっています。これまで必ずしも密な関係になか
った外部のNGO団体、ボランティア団体との連携が積極的に模索され、その
ための事業の一部はすでに実行に移されています。あるいは、県社協情報セン
ターでは、ボランティア情報などを交流させるコンピュータネットワークを作
る構想も持っています。さらに、「記録室通信(7号)」でも取り上げた「学生
ボランティアセンター」のように、広く一般のボランティアをコーディネイト
する窓口としての機能も重視されているようです。 また、組織体制も目に見
えて変わりつつあります。例えば、県社協のボランティアセンターは、職員数
が一挙に倍増し、かつ、これまでNGO畑で活躍してきた方も新たに加わって
います。区社協のボランティアセンターにも、各区の区ボラの中核メンバーが
そのまま残って活躍されています。いずれにせよ、これまでの社協を知る人も
知らない人も、「元気印」の社協、ボラセンを一度訪れてみてはいかがでしょ
うか。特に福祉ボランティアのニーズに関する情報を入手しに行くにもいいで
しょう。他のボランティア団体と思わぬ出会いがあるかもしれません。
<次号に続く>                   (担当:矢守克也)


        −笑うボランティア−   資料こぼれ話

 ○○市のボランティア受付窓口に出向いたところ、しつこく身元確認を要求
され、名刺を出したところ、会社に確認の電話をされた。空き巣が徘徊してい
ることが背景にあったようだ。

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