Date: Sat, 14 Oct 1995 15:19:47 -0900
From: funaken@ccs94.cla.kobe-u.ac.jp (Takeo Funahashi)
Subject: [From-Kobe-d 647] [Kirokushitsu Tsuushin] No.12
...[中略]...

舟橋&川崎@震災・活動記録室 です。

今回で、今までの形での発信形態(さまざまなMLを利用させていただく方法)
は終わりにします。近いうちにアナウンスいたしますので、よろしくお願いし
ます。

前回は、2通同じものが届いた方もおられたようですが、今回もそうでしたら
申し訳ありませんが、ご連絡下さい。

でわ。
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                    記録室通信(Renewal)
                                13-Act-1995 第12号

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                       Quake Chronicle Project
                            震災・活動記録室


               −はじめに−

 皆様、いかがお過ごしでしょうか。「震災・活動記録室」です。「読書の秋」、
「食欲の秋」、「芸術の秋」、「スポーツの秋」などと言われるシーズンの到来
です。今年の秋は、記録室にとって「記録の秋」です。
 これから寒くなるにつれ、あの震災が脳裏によみがえってくるでしょうが、お
互いに頑張っていきましょう。それでは、第12号をお送り致します。今後は、
隔週で発信させていただきますので、よろしくお願いいたします。
                     (「記録室通信」担当:舟橋健雄)


              −記録室通信とは−

 記録室では震災後のボランティア活動の記録を残すことを目的として、アンケ
ート調査、インタビュー取材などを中心に活動してきました。同時に各団体から
活動の資料を提供していただき、目録を作成して将来公開するための準備を進め
ています。そして、活動の中で出会ってきた皆さんとの情報交換の場として、ま
た新たな出会いの場として、毎週「記録室通信」を発行しています。被災地での
最新情報、全国のボランティアの動き、支援活動でつかんだノウハウの紹介等の
発信を考えています。


            −ミニコミ特集予告編−
   【震災ミニコミの新たな役割をめざして/ミニコミ情報募集のお願い】

[地域で生き続けるミニコミ]
 被災直後、各地で、炊き出し、銭湯の営業時間、など、生活情報を掲載した
ミニコミが発行されました。それから半年、緊急事態的なミニコミの多くは、
役割を終えて終刊しましたが、装いを新たにして刊行され続けるミニコミも、
決して少なくありません。
 復興を目指す人々の情報交換、被災地での生活に役立つニュースの発信、仮
設住宅でのコミュニティ作り・・・その目的も、発行の頻度も、ページ数も、
実にさまざまですが、震災をきっかけに生まれたミニコミ、いわゆる震災ミニ
コミは、各地でたくましく生き続けています。以前この通信でもご紹介したよ
うに、「復活」したミニコミも少なくありません。ミニコミは、地元の人々や
ボランティアの間で、地域に密着した、身近で重要なメディアとして、着実に
その足場を固めつつあるようです。

[分断された「地域」−−仮設住宅からの声]
 しかし、当の地域社会そのもの−−住み慣れた町、顔馴染みの人々−−が震
災によって破壊され、その傷痕はいまだに癒されないまま放置されている、こ
のことも厳然たる事実です。神戸市北区の鹿の子台で仮設住宅の支援に当たる
西野さんから、こんな声をいただきましたのでご紹介します。

 「仮設の人が今とても気にしているのは、自分が前住んでいた家がどうなっ
ているのか、ということです。自分の土地に勝手に別の家を建てられてしまう
のではないか、という恐怖が、つきまとって離れないのです。
 そうでなくても、自分が住んでいた所が復興し、良くなっている、というニ
ュースは、誰だって知りたいですよね。見慣れたアーケードや市場が復活した、
あの看板は今どうなっている、という話があれば、みんなとても元気づけられ
るはずです。
 私たちはとても取材に行く余裕がありません。でも、各地でミニコミが発行
されていて、みんなの住み慣れた地元の様子が紹介されているのなら、その記
事を使わせてもらえたらいいですね。
 自分の家に帰ることが、仮設で暮らす人の究極の目標なんです。みんなにそ
の目標を見失ってほしくない。そのための、間接的なお役に立てればと思いま
す。」

[ミニコミの新たな可能性−−心を支えるために]
 以前住んでいた地域のことを知らせる−−これは、地域社会の復興、という
大問題と比べると、いかにも小さなことのように見えます。しかし、たったそ
れだけのことでも、人の心の有り様は大きく変わるのではないでしょうか。住
み慣れた地域との結び付きを守り、育てる、それこそが、最も重要な心のケア
ではないかと筆者は考えます。
 西野さんの受け売りですが、ミニコミは、このような役割も果たすことがで
きるのではないでしょうか。特に変わったことをする必要はありません。既に、
地域に密着したミニコミが、各地で多数発行されています。「どこで、誰がミ
ニコミを発行しているのか」という情報が集約されること。そして、仮設の人
々や被災地を離れた人々が、その情報を利用でき、直接それらのミニコミを入
手できるようにすること。まずはそれが出発点でしょう。
 記録室通信では、次回からの特集で、現在被災各地で刊行されているミニコ
ミについての情報を一覧化し発表することを考えています。仮設の方々、被災
地の状況を知りたいという遠方の方々など、多くの方々に有効に活用していた
だけるような記事になれば、と願っています。

[ミニコミ情報をお寄せください]
 上記の目的のため、震災・活動記録室では、現在、各地で発行されているい
わゆる「震災ミニコミ」の情報を集約する作業を進めています。
 また、次回の特集のみにとどまらず、ミニコミの収集は、記録室の重点課題
として、継続して行って行く予定です。震災の実像、ボランティアや住民の姿
を生き生きと伝える素材として、また、放っておけば散逸してしまいかねない
貴重な資料として、ミニコミ(バックナンバーも含む)の実物の収集、並びに、
ミニコミにまつわる情報の集積は急務とも言えます。

・ミニコミの断片を既に収集している団体につきましては、バックナンバーの
 所在、継続/終刊、などについて、記録室スタッフが問い合わせ、訪問調査
 を行っています。お手数ですがご協力ください。
・「自分たちはこういうミニコミを発行している」「私はこういうミニコミを
 読んだことがある」など、ミニコミにまつわる情報をお持ちの方は、記録室
 までご一報ください。
・また、記録室と同様にミニコミの収集を展開している団体とは、情報交換、
 提携などの形で協力していきたいと考えています。こちらも情報などあれば
 お気軽にご連絡ください。               (八ツ塚 一郎)    
                     


           −仮設住宅での孤独死の報道、その後−

 以前、この記録室通信の第10号で、9月14日(木)に神戸新聞が報道した仮
設住宅での孤独死について取り上げ、仮設住宅支援連絡会代表である村井雅清
さんへのインタビューなども行いました。そして、記録室では神戸新聞側にも
記事の真意を問うため、何度か問い合わせをしたところ、新聞社からファクス
にて以下のような内容の返答がきました。
 まず、記事の内容についてはあくまでも状況を伝えるに徹したもので、ボラ
ンティアの責任を問うといった意図はなかったこと。さらに、その後、仮設住
宅での孤独死については何度か角度をかえて取り上げている。というものでし
た。
 事実を正面から伝えているつもりでも、ことばひとつや、受け取り方ひとつ
で誤解が生じたり、波紋をなげかけてしまうということ。今回の一連の経験は、
記録を伝えるという活動に携わっているわれわれにとっても、いろいろと考え
させられるものがあった出来事でした。
 今後も記録室では、仮設住宅での孤独死という問題を様々な角度から掘り下
げて考えていきたいと思っております。今後とも、皆様のご意見・ご投稿をお
待ちしております。


          −クイズ! カルトQろくしつ−
    ☆☆☆ これができればあなたも鉄人?
                 記録室『略号』クイズ  ☆☆☆  

 読者の皆様、記録室通信史上初の試み、<記録室『略号』クイズ>です。
 現在、記録室は数多くの団体および組織(個人含む)と連絡を取っています。
「自分たちの他に、どのような団体が存在するのだろう?」「どのような組織
と、この情報を共有し合っているのだろう?」... 全体を把握できる機会はなか
なかありません。
 そこで、読者間の相互親睦をはかるためにも(?)、幾つかの略号を取り上
げ、“自分はどのくらい多くの組織の正式名称を知っているか”を各自で確認
していただき、今まで知らなかったところについては、この際名称を覚えてい
ただきましょう... ということになりました。是非、挑戦してみてください。
 それでは、問題です。

Q:以下の略号の『正式名称』を述べよ。
        1) JET 2) CYR 3) SCJ 4) TVC 5) FIWC
        6) RKK 7) AHO 8) IVN 9) JIFH        10) NVR

 さあ、いくつできましたか?(答えは最後に)


             −ひと<人>こと−

   「みんな、ホームランを打とうとする松井や落合に見えてくる。」
 【兵庫県社会福祉協議会・ボランティアセンター 桑原英文さん(31)】

 桑原さんは、高校生の時から、国内外をフィールドに様々なボランティア活
動を続けてこられた“プロのボランティア”です。その経験をふまえて、桑原
さんの目から見た神戸でのボランティアの働きや、ご自身の活動について語っ
ていただきました。
 1月17日、大阪の自宅で地震にあった桑原さんは、その後すぐに、代表をつ
とめるプライベート・ボランティアグループ“すまいる”の仲間を集め、救援
活動に入ります。あえて“とりあえずの救援”は行わず、1月19日までを被災
状況の情報収集にあてます。大阪の自宅を後方支援の拠点として、1月20日に
は、仲間である看護婦やケースワーカーと共に現地入りし(流動食、小児薬、
家庭薬持参)、御影高校避難所を活動の場とします。さらに、より多くの現地
の情報を把握するため、それとは別に、北区の仲間の家に現地本部を置きます。
そして、救援の医師団が現地に入り、ボランティアが増えていく、という状況
の中、“ルールなき援助”に巻き込まれぬようにという判断、及び、自らの資
金繰りへの判断から、1月23日の段階で初期救援を終えました。一旦現地を離
れ、救援活動基金の設立や、継続支援などの準備にとりかかったのです。
 この初動の判断やボランティア活動の体制づくりにも、自分たちが現地で何
をすべきなのか、何ができるのかを常に客観的にとらえ、行動する、経験を積
んだ方ならではの仕事を見ることができます。
 あくる24日には、キャンプを通じて以前から交流のあった“朝日ボランティ
ア基地”の石田さん(通信2号に登場していただきました)から協力の要請を
受け、コーディネーターとしての桑原さんの仕事が始まります。“朝日ボラン
ティア基地”の活動と“すまいる”の活動とを結び、中央区、灘区を中心に“
みんなであそび隊”“お年寄りと話し隊”などを設けて、子供や高齢者のケア
にあたります。また、朝日ボランティア基地では、無認可の小規模作業所の立
て直しへの支援や、ボランティア団体に対しての縛りのない助成金援助を行う
など、行政や他団体のできない救助の隙間を埋めていったのです。この頃のボ
ランティアの様子を、桑原さんはこう語ってくれました。「大阪の自宅から神
戸の現場に戻る電車に乗っていると、吊り革につかまって立っている人がみん
な、ホームランを打とうとする松井や落合に見えてくる。でも、ボランティア
は、走者を次の塁に進めるために、バントしたり、空振りしたりするのが自分
たちの役目であり、ホームランを打ちにいかなくてもいい。救援はあくまでも
行政の仕事で、その仕事が立ち直るまでの間を埋めるのがボランティアの仕事
だから・・・」ホームランバッターにつなぐ一、二番バッターの意味を、改め
て考えさせられます。
 6月末に“朝日ボランティア基地”の活動を終了すると、桑原さんは一週間、
高校のときから交流を続けているフィリピンに、“すまいる”の仲間と井戸掘
りに出かけます。帰国後も、神戸と少し距離をおき、日常を取り戻しつつ、半
年の活動の自己評価をする時間を設けます。桑原さんは、ボランティアをする
上で大切なのは、個人であれ団体であれ、活動した内容について、シビアな自
己評価を下してみる事だとおっしゃっています。桑原さんはある時、ヨーロッ
パから来たボランティアの仲間から、「日本はコンビニエンス型の援助しかで
きていない」と言われたそうです。何もかも揃え、満腹にさせ、援助漬けにし
て次に移るという“あやまち”・・・もしこれまで、桑原さんの言うシビアな
自己評価が各団体、各個人でなされていたら、繰り返さずに済んだことなのか
もしれません。
 そしてもうひとつは、活動を通じて自分が得たこと、感じたことを、“いい
経験だった”と自己完結させるのではなく、自分を取り巻く人々や社会にいか
にフィードバックさせるかを考えなくてはいけない、ということです。現地で
の活動を終えた後も、その経験をどのようにして伝え、生かし続けるのか、そ
れぞれがそう思い考えることがまた、何かを変えていくことにつながるのだと
思います。
 8月には、活動の場を兵庫県社会福祉協議会・ボランティアセンターに移さ
れ、主事をつとめておられますが、今後もこれまでの国内外の経験、視点、そ
してその行動力を生かして、新しい“うねり”を作り出されることを期待して
います。                       (取材:藤原直子)


            −笑うボランティア−
【資料こぼれ話】
 記録室では、様々な資料に目を通す際に、思わずプッっと吹き出してしまう
ようなエピソードを「笑うボランティア」というノートに書き出しているので
すが、皆様にもその中からピックアップしてご紹介致します。
 某ボランティアの活動報告書より
お茶はなるべくもらわない。お茶菓子がおいしいときだけもらいましょう。
                       [理由→トイレが近くなる]


【すたあと長田『Weekly Needs 特集号』 好評発売中!】
  写真を満載した、長田のすばらしい記録です。
    1部300円、郵送の場合は送料込みで390円(切手でも可)
  お問い合わせは、
    すたあと長田 TEL.078-521-7170   FAX. 078-577-0157 まで


           −Information 情報の広場−

  「愛知の高校生、被災地へ行進300km! 明日神戸にゴールイン」

 「自分たちにできることは何か」と考えた、愛知県桜丘高校1年7組の生徒
たち。被災地の現状を訴えて東京まで歩いた「そして東京行進団」のことを知
り、多くの人々と震災のことを考えるために、神戸までの行進を始めました。
7月15日の出発から毎週土曜日、30〜50kmを歩き、いよいよこの14
日土曜日、神戸に到着します。
 震災のことを忘れずに考え、多くの人々と被災地とを結ぶために行動してく
れた仲間たちに、記録室も心からの拍手を送ります。

<おしらせ>
 地元の協力団体が、14日土曜日、三宮で彼らを迎えるそうです。時間が急
ですが、歓迎の輪に加わってください。
<高校生たちの予定> 
  7:30   JR芦屋駅南口出発、国道2号線経由
   →正午  JR三宮駅南側噴水前に到着(予定)、歓迎交流会
<協力団体>
  このあと名谷仮設住宅訪問、帰校の予定
    高校生ボランティアセンター    030-861-8558
    アルティック須磨ボランティア   078-795-2885
    そして神戸            078-221-3035
    兵庫県社会福祉協議会       078-242-4633


         −「カルトQろくしつ」解答です!−

1) 日本緊急救援隊(Japan Emergency Team)
2) 幼い難民を考える会(Caring for Young Refugees)
3) セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(Save the Children Japan)
4) 東京ボランティアセンター(Tokyo Volunteer Center)
5) FIWC関西委員会(Friends International Work Camp)
6) 立正佼正会(NHK方式です)
7) AHO(「あほ」という意味でつけたようで、略称ではないです)
8) インター・ボランティア・ネットワーク(Inter Volunteer Network)
9) 日本国際飢餓対策機構(Japan Internetional Food for the Hungry)
10) 長田ボランティアルーム(Nagata Volunteer Room)
                          ... いかかでしたか?
「他にもこんな面白い略号があるよ」という方はぜひ記録室までご連絡下さい。


             −次号予告(予定)−

【記録室通信第13号 10月26日(木)】
  −特集−    ・震災ミニコミ特集
          ・舟橋の東京出張体験記
  −ひとこと−  ・河合敏雄さん(すたあと長田)  など、乞うご期待!

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 震災・活動記録室       〒650 神戸市中央区御幸通2-1-6
                                芙蓉三宮ビル5F
      Tel. 078-272-6676
      Fax. 078-221-3035(仮)
               Nifty-Serve:PXE03224
        *Internetに関しては現在、準備中です。
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