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NGN

NGN のアーキテクチャ

NGN (次世代ネットワーク) のアーキテクチャの概要については ETSI [ETS 05] などに記述されている. ITU-T においてしめされた NGN のアーキテクチャを図 1 に図示する. この図にしたがって,以下このアーキテクチャを説明する.

NGNarchitecture.png
図 1 ITU-T における NGN のアーキテクチャ

1. アーキテクチャの構成要素

NGN のアーキテクチャの構成要素はつぎのとおりである .

エンドユーザー機能 (EUF)
カスタマのネットワークまたは端末 (User Equipment) である.
トランスポート・ストラタム (Transport Stratum)
ユーザのデータを転送する. トランスポート・ストラタムはつぎの各機能を提供する.
  • トランスポート機能: パケット転送機能をになう.
  • ネットワーク・アタッチメント制御機能 (NACF): 認証や IP アドレスはらいだしなど,端末をネットワークに接続する際の一連の処理をおこなう. ITU-T においては NACF とよばれているが,ETSI においては NASS (ネットワーク・アタッチメント・サブシステム) とよばれている.
  • 資源アドミッション制御機能 (RACF): QoS 保証をふくむ,資源を指定した通信のうけつけ制御をおこなう (??? 節参照). ITU-T においては RACF とよばれているが,ETSI においては RACS (資源アドミッション制御サブシステム) とよばれている.
  • ユーザプロファイル・サーバ機能 (UPSF): ユーザの識別,セキュリティ,位置,プロファイルなどを管理する.
サービス・ストラタム (Service Stratum)
トランスポート・ストラタムを制御する. サービス・ストラタムはつぎの各機能を提供する.
  • サービス制御機能 (SCF): コネクションの設定や帯域を管理する SIP サーバ群である.
  • アプリケーション・サーバ機能 (ASF): Web との連携やさまざまな付加価値サービスを実現する.
  • 管理機能 (Management Functions)
トランスポート・ストラタム,サービス・ストラタムおよびエンドユーザ機能を管理する. 電話網の管理においてつかわれてきた TeleManagement Networks (TMN) のわくぐみにしたがう.
サードパーティ・アプリケーション (3rd Party Applications)
サービス・ストラタム上で動作する,サードパーティから提供される各種のアプリケーションである.
他のネットワーク (Other Networks)
NGN 網は他の NGN 網や PSTN / ISDN 網,インターネットなどと接続される.

なお,NGN に関するドキュメントにおいては,これらの構成要素間のインタフェースも規定しているが,その説明はここでは省略する.

2. SIP による呼制御

NGN においては呼制御は SIP にもとづいておこなわれる. SIP が単純な呼制御にとどまらず,さまざまなやくわりを負っている. すなわち,サービス制御機能 (SCF) は SIP にもとづくプロトコル (IP Multimedia Call Control Protocol) を使用して端末の登録やセッション設定などをおこなう. SIP は IETF において標準化されたセッション制御用のプロトコルであるが,SCF は 3GPP において開発された IMS に準拠し,いくつかの点において IETF 標準とはちがいがある. すなわち,端末登録 (registration) の方法や,途中経過を示すメッセージでも PSTN との接続のため高信頼な転送が要求されること,解釈が義務づけられた拡張ヘッダが定義されていることなどが IETF 標準とはことなっている.

SCF はつぎのような SIP サーバ群によって構成される (図 2 参照). ここでは説明のためにホームネットワーク (home network) すなわち本来ユーザ (subscriber) が所属するネットワークと訪問ネットワーク (visited network) すなわち現在ユーザが直接アクセスしているネットワークという概念を使用する. 図 2 においてはユーザ A とユーザ B のホームネットワークと訪問ネットワークが記述されている. なお,ここでは SIP に関する基本的な知識を前提とする.

NGNServiceControl.jpg
図 2 サービス制御機能 [Dra 01]
S-CSCF (Serving-CSCF, Serving Call Session Control Function, サービス呼セッション制御機能)
セッション制御をおこない,レジストラとして動作する. すなわち,ホームネットワークのアプリケーション・サーバへのアクセスを制御し (セッション制御の一部),ユーザの識別やサービス特権の識別などをおこなう (レジストラとしての動作).
P-CSCF (Proxy-CSCF, Proxy Call Session Control Function, 代理呼セッション制御機能)
レジストラへの登録がおわったあと,訪問ネットワークにおける接触点 (terminals point of contact) としてはたらく. NGN においては SIP のメッセージはつねに P-CSCF を経由する. その理由は P-CSCF によって端末を管理したり,端末からの圧縮されたメッセージを伸長したりするためである.
I-CSCF (Interrogating-CSCF, Interrogating Call Session Control Function)
レジストラへの登録時に S-CSCF を発見するやくわりをはたす. S-CSCF の網構造を隠蔽するやくわりをはたすこともある. ホームネットワークにおける接点である.

NGN におけるセッション確立 (session initiation) においては,IETF 標準における単純なセッション確立のためのシーケンスとはちがって,図 3 のような 3 つのフェーズからなるシーケンスが使用される. このシーケンスは Camarillo ら [Cam 02] によっている (このシーケンス図には通信相手とそのホームネットワーク,訪問ネットワークは記述されていない (図 2 参照)). まずこのシーケンスの基本部分について説明し,あとでいくつか補足事項についてのべる.

セッション確立開始 (or 仮確立)
まず,エンドユーザ端末 (UE) から SIP の INVITE 要求が訪問ネットワークの P-CSCF とホームネットワークの (I-CSCF) と S-CSCF とを経由しておくられる (図 3 の 1., 3., 6.). このメッセージには SDP (Session Description Protocol) によるセッション記述をふくんでいるが,そのなかに QoS に関する要求もふくまれている. すなわち,通信に使用するプロトコル,コーデックなどとともに QoS に関してもこの SDP メッセージ中に選択肢を記述することによって通信相手の UE との交渉を開始する. この交渉は Offer/Answer Model にしたがう.相手 UE はこれに対して ("200 OK" ではなく) "183 Session Progress" というメッセージによって応答する (8., 9., 11.). この応答メッセージのなかに QoS もふくむセッション要求に関する SDP による返答がふくまれている. すなわち,オファーされた選択肢のなかでうけいれ可能なものだけをのこして,おうむがえしする. うけいれ可能なものがなければ相手 UE はそれを拒否し,要求元 UE があらためてべつの選択肢をしめす. これらの SDP メッセージの内容については,QoS 要求を中心として ???において説明する. 要求元 UE はこの応答がオファーを受諾するものであればそれに対して (ACK 要求ではなく) "PRACK" 要求をかえす (12., 14., 15.). 相手 UE がこれをうけると,"200 OK" というメッセージで返答する (16.~18.).
資源予約
要求元 UE は 183 応答にふくまれる QoS パラメタにもとづいて,必要な資源を予約する (図 3 の 13.). 資源予約には RSVP (ReSource reserVation Protocol),LDP (Label Distribution Protocol),SIP などのプロトコルが使用される. RSVP が使用されるときは,要求元 (UE#1) が受信のために必要な資源を予約する. 双方向の通信の際にはそれぞれの送信元が片方向の資源予約をおこなうのが基本である. 資源予約に関しても ???において説明する.
セッション確立終了 (or 本確立)
資源が予約されると,要求元は SIP の UPDATE 要求を送信し (図 3 の 19.~21.),相手は "200 OK" によって応答する (22.~24.). このあとのシーケンスはばあいによってさまざまであるが,基本的には,双方の資源予約に問題がなく,最初の INVITE 要求に対する "200 OK" 応答が相手からかえされる (34.) と,それに対する ACK メッセージが要求元から送信されて,セッションは確立される.

セッション確立開始時の SDP メッセージのやりとりは基本的には端点間の交渉であるが,TS 24.229 [3GP 06b] はこの SDP メッセージを P-CSCF が参照し,かきかえることを許容している. 図 3 においては 10. がそのステップを表現している. これにより P-CSCF は,SDP メッセージにおいてオファーされた選択肢のなかで網内で使用不可能な選択肢を消去することができる. すなわち,この交渉によって実現不可能な資源の使用が合意されないようにして交渉を効率化することができる. なお,P-CSCF が SDP メッセージを参照できるためには,IP Sec などによってそれが暗号化されていないことが必要である.

また,P-CSCF はこの SDP メッセージの情報を網内資源のわりあてのために利用することができる. 資源予約は基本的には上記の第 2 フェーズに実行されるが,SDP メッセージの内容をその準備や確定 (図 3 の 36.) のために使用することが可能である. なお,セッション終了時 (BYE メッセージが発行されるとき) には資源を解放する必要があるし,資源をセッションの途中で増減させる方法もきめられている. 減少させる方法は IETF においても最近きまっている (たとえば RSVP に関しては Polk ら [Pol 06]). しかし,それらについてはここでは記述を省略する.

NGNSessionInitiation.jpg
図 3 端末の登録とセッション確立のフロー (例) [3GP 06c] (Figure 7.2.2.1-1)

参考文献

  • [3GP 06b] 3rd Generation Partnership Project (3GPP), “Internet Protocol (IP) multimedia call control protocol based on Session Initiation Protocol (SIP) and Session Description Protocol (SDP); Stage 3 (Release 7)”, 3GPP TS 24.229 V7.3.0, March 2006.
  • [3GP 06c] 3rd Generation Partnership Project (3GPP), “Technical Specification Group Core Network and Terminals; Signalling Flows for the IP Multimedia Call Control Based on Session Initiation Protocol (SIP) and Session Description Protocol (SDP); Stage 3 (Release 5)”, 3GPP TS 24.228 V5.14.0, December 2005.
  • [Cam 02] Camarillo, G., Marshall, W., and Rosenberg, J., “Integration of Resource Management and Ses-sion Initiation Protocol (SIP)”, RFC 3312, IETF, October 2002.
  • [Dra 01] Drage, K., "SIP and the application of SIP as used in 3GPP”, pres-drage-3gpp-arch3-sipping-ietf51.ppt, 51th IETF, August 2001.
  • [ETS 05] ETSI, “Telecommunications and Internet Converged Services and Protocols for Advanced Networking (TISPAN); NGN Functional Architecture Release 1”, ETSI ES 282 001, V1.1.1, June 2005.
  • [ETS 06d] ETSI, “Telecommunications and Internet Converged Services and Protocols for Advanced Networking (TISPAN); IP Multimedia Call Control Protocol based on Session Initiation Protocol (SIP) and Session Description Protocol (SDP) Stage 3”, ETSI ES 283 003, V1.1.1, April 2006.
  • [Pol 06] Polk, J. and Dhesikan, S., “A Resource Reservation Protocol (RSVP) Extension for the Reduction of Bandwidth of a Reservation Flow”, RFC 4495, IETF, May 2006.
Keywords: リソース予約, 資源要求, リソース要求, 資源割当て, 資源割り当て, リソース割当て, リソース割り当て, リソースわりあて, リソース・アドミッション制御機能

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