遺伝的アルゴリズム委員会 発表・聴講 報告書

報告者 : RWCP ニューラルシステム研究室 金田 泰
Created: 1/17/95, Modified: 12/26/95.

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O 講演までのいきさつと遺伝的アルゴリズム委員会について

筑波大の星野教授からの依頼により,日本工業技術振興協会 遺伝的アルゴリズム委員会において CCM (Chemical Casting Model) に関する講演をおこなった.この委員会は企業などから会員を募集して その会費によって運営されているが,不況のため現在は 15 社 30 名程度に減少しているという.今回の参加者は 10 人程度であり, しかも大学・公的研究期間からの参加者が大半であり, 企業からの参加者はわずかだった.

O 講演 1: 創発的計算による柔らかな問題解決法,報告者

まず CCM の基礎としてその構成要素,基本的な動作などとともに反応 (計算) の局所性制御としての触媒,局所最適点からの脱出法として フラストレーション蓄積法について説明した.また,柔らかな問題解決への 応用として,移動計算 (Mobile Computing) 的な問題とファジィな彩色とを とりあげたが,時間の関係でファジィな彩色についてはその内容を説明する にはいたらなかった.

[その講演資料 : スライド, ハンドアウト ]

質疑について : 聴講者には GA や人工生命の専門家がおおいため,つぎつぎとするどい質問を うけて,かならずしもうまくこたえられなかった.その一部をしめす.

Q: 分割統治 (divide-and-conquer) 的でない問題解決をめざすというが, CCM のように局所情報だけをつかうのでは,それとかわらないのではないか.

A: その場ではうまくこたえられなかったが,従来の問題分割のようにきちんと 問題を分割するのではなくて,あらかじめどこで分割するかをきめないこと や冗長性のある分割をすることによって柔軟な問題解決が可能になると かんがえられることなどをこたえればよかったとかんがえている.

Q: 局所情報による計算という点ではニューラルネットや SA (シミュレーテッド・ アニーリング (によって彩色問題をとくとしたらそれら) もそうであり, それが CCM の特徴とはいえないのではないか.

A: ニューラルネットは局所情報による計算モデルだといえるが,従来の理論たとえば Hopfield Net においては大域的なエネルギー関数をかんがえている.SA でも大域的な関数をつかう.CCM ではこのようなしかけをつかわない点に 特徴があるとかんがえている (かならずしもこのように理路整然と説明できなかったが,要約するとこうなる).

Q (つづき): しかし,CCM も局所秩序度をつなぎあわせて大域的な理論をつくれば,SA などとおなじことになるのではないか.

A: そうかもしれないが,そういう,とじた理論にしないことが重要だと かんがえている [星野先生から,CCM は従来の方法にくらべると「いいかげんさ」(きちんと 記述しなくてもよいところ) に特徴があるのではないか,との意見.]

Q: CCM の特徴は,従来のプログラミングによるのとはちがって,力学系 (dynamical system) 的に記述できるところではないか.[中略] そうだとすると,たとえば あらかじめ地図をもたずに動作するロボットのような応用にむいているのでは ないか.

A: そうかもしれないが,それはまだよくわからない. [会場から,そうはおもわないという声.]

Q: 最適化の問題もといたというが,それは CCM むきではないのではないか.

A: ためしにといてみたが,たしかにご指摘のとおりである.そもそも,「最適化」 の思想そのものに疑問をもっている.工学ではなんでも最適化問題にしてしまうが, そうするためにきりすててしまった部分もかんがえにいれると,最適解を もとめるのがほんとうに重要なことなのかどうか疑問だ (会場から,このかんがえへの反発もきかれた).

O 講演 2: Blind Hunger Dilemma: 共有資源をめぐる集団行動と行動パターンの進化的獲得, 沼岡 千里 (Sony CSL)

集団アリの食餌などに関するモデルとその (シミュレーションによる) ふるまいを紹介した.食餌という個々のエージェントがしなければならない (代替ができない) 行動によってどのように協調がおこるかをしらべることが目的である.

質疑の一部 :

Q: 単純なモデルであるわりには複雑なふるまいが生じている点に感心した. しかし,そのふるまいは単純なゲームである可能性もある.

A: そういう可能性もある.これからしらべる必要がある.


Y. Kanada (Send comments to kanada@trc.rwcp.or.jp)